自分の評価を下げずに、経営陣の支援を取りつける方法
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サマリー:組織変革を担うリーダーにとって、権限なしに結果を出すことは難題だ。経営層からの「援護」は強力な武器となるが、不適切な要請は依存的と見なされ、評価を下げるリスクもある。重要なのは、自身の動機と状況を客観的に見極め、戦略的に動くことである。本稿では、上層部の後ろ盾が本当に必要な状況の判断基準、適切な要請のタイミングと方法、そして支援が得られない場合の現実的な対処法について解説する。

行き詰まった時、いかに経営層から支援を受けるか

 リーダーは、新たな取り組みの立ち上げや、機能しなくなったプロセスの改善、組織文化の再構築といった変革を推進し、結果を出すことを求められながら、そのために必要な人々を動かす正式な権限を与えられていないことがある。

「リーダーシップとは影響力であり、それ以上でもそれ以下でもない」という有名な言葉があるが、そのような状況で成功するには、資質や能力だけでなく、上からの目に見える後ろ盾が必要になる場合もある。しかし援護は自動的には得られない。サポートがないまま変革の推進を命じられれば、いかに有能なリーダーでも足踏みしてしまう。経営陣の後ろ盾がなければ、十分な信用を得られず、抵抗が強まり、孤軍奮闘した結果バーンアウトに陥る可能性もある。

 援護が自発的に提供されない場合、はたして求めるべきなのか、いつ求めるべきなのかを知ることは難しい。しかも、弱気だと思われない方法で行いたい。反発が起こって初めて要請するのでは遅すぎるし、早すぎたり本当は必要がないのに要請したりして、意図せず依存心を印象づけてしまうのも避けたい。

 同じような変革の推進役を担わされながら、この力学が正反対に働いた二人の上級リーダーがいた。一人は、上手に立ち回った。当初は援護が必要だと考えていたが思い留まり、結果的に自分の影響力の及ぶ範囲を広げることができた。もう一人は、与えられた任務を力ずくでまっとうしようとして人間関係に亀裂が生じ、修復することができなかった。もっと早く援護を求めていたら、結果は違っていたかもしれない。

 そこで本稿では、上層部からの援護が本当に必要かどうかを判断し、要請のタイミングを測り、力不足と見なされずに支援を得る方法、そして上司が協力してくれない場合にどうすべきかを解説する。

自身の動機と恐れの検証

 正式な権限なしに結果責任を負わされたら、保証や後ろ盾がほしくなるのは当然だ。広く支持されていない方向に進もうとしているなら、なおさらだろう。だが、その後ろ盾がなければ本当に遂行できないか、よく考えてみよう。

 筆者がコーチングを担当した新任の幹部であるタンビは、このジレンマに陥っていた。彼女の成功は、他の事業部にわたって成果を出せるかにかかっていたが、彼女は越権行為によって関係を損なうことを危惧していた。そのため上司に自分の任務を公にしてもらい、自分にその権限があることを明確にしてもらいたいと考えていた。しかし胸に手を当ててよく考えたところ、タンビは、その危惧が思い込みや、権力を行使することへの不快感に根差していること、そして成功するために上司の助けは必要ないことに気づいた。

 援護を求める前に、立ち止まって自問しよう。

・後ろ盾を求める根本的な理由は何か
・それなしでは何が起こることを恐れているのか
・身を守ろうとしているのは実際のリスクからか、それとも不快感からか

 過剰に恐れているのかどうか判断がつかないのなら、テストしてみよう。信頼できる同僚やメンターがその状況や影響をどう捉えるか聞いてみる。明確な後ろ盾がない中でも小さな前進を試み、その後どうなるか観察する。反発の恐れがまったくの杞憂に終わることも多い。

 人間関係に気を遣い、慎重になるということは、影響力を左右する感情や空気にあなたが敏感になっている証拠だ。ただ過度の注意深さで自分にブレーキをかけないように気をつけよう。

状況とステークホルダーの評価

 あなた自身の動機を確認したら、外部の現実に目を向け、3つのファクターを考慮しよう。

 1つ目は危険度。上からの目に見える支援が得られなかった場合のリスクは何か。注目度が高い、あるいは政治的にセンシティブな取り組みだったり、迅速に結果を出さなければならなかったりする場合、上層部の後ろ盾を得る必要性は高い。援護なしで取り組んだ場合の影響を1から10の単純な尺度に当てはめてみよう。

 2つ目は人間関係。あなたが影響力を及ぼさなければならないステークホルダーをリストアップする。あなたは、彼らを動かせるだけの信用や信頼を得ているだろうか。彼らには、あなたの意図の善良さを信じる理由があるだろうか。あなたは彼らの懸念事項に対処しているだろうか。変革そのものにではなく、推進者に抵抗感を抱く人もいる。相手との関係が浅かったり、ギクシャクしている場合には、実行に移す前に友好関係を築くか、あるいはみずからの信用を得るために支援を求めるべきだろう。

 3つ目は障壁。手の施しようのない構造的な障壁や政治的な障害がないか探る。合理的な努力はしたが、乗り越えられない壁はないか。あるならば、それは遂行に援護が必要なサインである。

 中規模のテック企業で、組織文化の改革を推進するためにCEOに採用されたステファンを例に挙げよう。CEOは、ステファンの大胆で迅速なアプローチを気に入り、自分の支持は理解されていると思い込んでいた。ところが残念なことに、そうではなかった。ステファンの任務がCEOから明確に伝わっていなかったため、ステファンは同僚から迷惑で扱いにくい人だと見なされ、あっという間に関係が悪化した。CEOが正式に介入した時には、ダメージを修復するには手遅れだった。リスクが高い、周囲との関係が脆弱、障壁が自力では取り除けないのは、援護を求めるべき合図である。

援護を求めるタイミング

 援護が必要だと判断した場合でも、それをいつ求めるかが問題だ。タイミングが早すぎると、頼りないと思われる可能性があり、遅すぎると、簡単には修復できないダメージを負う可能性がある。

 上司にアプローチする前に、自力でできるところまでやってみる。課題点を解決し、進捗を見せ、主導権を示して、「すでにA、B、Cはやりましたが、いまぶつかっている壁は、あなたの明確なバックアップがなければクリアできません」と言えるようにする。こうすると積極性が伝わり、あなたがエビデンスと分別に基づいてリクエストをしていることが示せる。

 あなたの障害に上司が気づいているとは思わないほうがよい。人にはスポットライトバイアスというものがあり、実際以上に自分が注目されていると思い込む傾向がある。「上司は当然、この難しさをわかっているはずだ」とあなたは思うかもしれないが、上司は必ずしも全容を把握しているわけでも、現場での駆け引きを理解しているわけでもない。

 サポートの必要性を判断しかねたら、上司に今後の要請に備えてもらうよう依頼しよう。そうすると上司に状況が伝わると同時に、さりげなく介入の意思を確かめることができる。たとえば、「ちなみに、プロダクトチームから反発が出ています。この後もあらゆる手を尽くしてみますが、優先事項徹底のために、お力をお借りしなければならないかもしれません。随時ご報告します」などと伝える。このような予告によってあなたの先見性が伝わり、上司は状況を把握し、要請せずとも支援を申し出る可能性さえある。

援護要請の戦略的フレーミング

 援護の要請は、取り組みを成功させるには何が必要で、それによって組織の成功や上司の目標にどう近づくのかを軸に判断し実行する。この取り組みのつまずきによって上司にどのようなリスクがあるのか、上司にとっての最重要事項は何かなど、上司の立場に立って考えよう。

 そして望ましい結果と要請内容とを結びつける言葉を選ぶ。たとえば、もしスピードが成功に不可欠な要素だとしたら、支援によって「進行を早められる」ことを伝える。もし明確化が重要であるなら、支援によって「混乱を解消し、連携を強化できる」ことを示そう。

 最後に、上司が支援しやすいようにする。つまり、他のリーダーに対するトレードオフの明確化や、任務の公の支持など、具体的で簡単な支援方法を提案する。たとえば、「円滑な進行のために、この取り組みが依然として最優先事項であることをチーム全体に念押ししていただけると大変助かるのですが、次回のチーム会議でお願いできませんか」などと打診する。

 このような要請の持っていき方なら、取り組みの確実な成功のために一役買いませんか、と誘っているようにも取れるだろう。

援護が得られない時

 適切なタイミングで明確に要請しても、望み通りの支援が得られない場合もある。落胆はするが、それによって遂行を妨げられるわけではない。目に見える援護が得られない場合、ステークホルダーの信用を獲得することがますます不可欠になる。ステークホルダーとの関係を強化し、早めに意見を求め、つど成果を共有するよう努めよう。そうすればタンビのように、上からの援護なしでも、横からの信頼と支援を得て前進できる可能性がある。

 進捗状況を共有して、自身で弾みをつけよう。たとえわずかでも目に見える成果があれば信用につながり、周囲を引き込むことができる。当初から欠けていた支援を得るきっかけになることも多い。

 最後に、スコープ、ペース、アプローチを見直そう。求められている結果は決まっていても、何から着手し、どの範囲まで広げるか、動き出すスピードなどに関して、あなたが思っている以上に自由度がある可能性がある。その一方で、上層部の力添えなしで何ができるかは、現実的に考える必要がある。ステファンはこれを怠り、無理に突き進もうとした。残念ながら、周囲との関係がこじれて、変革を起こすことができず、最終的に会社を追われた。無理に推し進めようとせず、上司に相談して状況が好転するまで、期待値を調整するほうが賢明だろう。

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 上司の援護は、成功と失敗の分かれ目にもなる。有能なリーダーは、支援を求めるべき時を見分け、使命を果たすために援護を求め、援護が得られなくても地道に取り組み続ける。その過程で、一時的な支持よりも価値のある信頼と永続的な信用を手にするのだ。


"How to Ask for Executive Support - Without Undermining Yourself," HBR.org, October 27, 2025.