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スティーブ・ジョブズの追悼式で参列者に配られたもの
スティーブ・ジョブズの私的な追悼式で、参列者に謎めいた箱が配られた。アップル創業者がごく親しい人々のためにみずから選んだ最後の贈り物だ。
箱の中身は何だったのか。大切なアップルの記念品、驚くような最新技術の発明品、それとも賢者の遺言か。
答えは、そのいずれでもない。箱の中に入れられていたのは、『あるヨギの自叙伝』という一冊の本。若者がみずからの精神の旅を一人称で語った物語で、ジョブズが生まれるずっと前に出版されたものだ。
世界有数の株主価値を創出したジョブズが、「自分を記憶してもらうための最後の品」として、古いヨガの本を選んだのはなぜか。正確なことはわからない。だが、ジョブズの人生とキャリアが、この本と、そこに記された原理に深く影響されてきたことは確かだ。
おそらく彼は何らかのメッセージを託したのだろう。ヨガは古来から伝わるものだが、とりわけビジネスの世界では最近、かつてないほどその意義が高まっている。多くの人にとって、現代の職場環境はノンストップの環境──常に忙しく、ストレスだらけで、スピードが速く、混沌としている──に感じられる。さらに、進化し続けるAIの台頭も、人間の未来そのものに関わる実存的な問いを突きつけてくる。
ヨガがビジネスにどう役立つのかを理解するためには、身体の姿勢(アーサナ)だけではない教え全体を理解する必要がある。ヨガの教えには、瞑想、呼吸法(プラーナーヤーマ)、心を集中させる言葉(マントラ)など、互いに連動するさまざまな実践が含まれ、それらを統合することで、身体と呼吸と脳を制御する一連のツールが手に入る。
この制御が、競争の激しい場でパフォーマンスのレベルを高め、人間固有の「スーパーパワー」を引き出す助けとなる。『スター・ウォーズ』の言葉を借りれば、銀河全体のどのようなドロイドも太刀打ちできない「ジェダイ・マスター」になるようなものだ。
筆者の祖父は、インドでラジオを通じてヨガを教えていた。そのため、筆者も幼い頃から、厳格なヒマラヤの修道僧からクールなブルックリンのヒップスターまで、多くの優れたヨギと交流する機会に恵まれてきた。
実際、ヨガは筆者自身が仕事で活用する「道具箱」に欠かせない要素の一つだ。そして、そのおかげで、筆者はスティーブ・ジョブズのようなビジネスの成功者がヨガの原理を仕事にどう応用しているかを理解できる。本稿では、そうした原理の中核を成す4つの側面──エネルギー、直感、シンプルさ、理解──について説明しよう。






