女性リーダーは更年期をどう乗り越えているのか
Illustration by Monika Jurczyk
サマリー:昇進期と重なる更年期の症状は、女性リーダーのキャリアの壁と見なされがちだ。しかし研究によれば、87%が仕事に支障はないとし、多くがこの時期を工夫して乗り越えている。更年期はキャリアの終わりではなく、成長の機会なのだ。本稿では、成功した女性リーダー64人の証言に基づき、更年期のスティグマを和らげ、この時期を「英雄の旅」として乗り切るための5つの指針を提示する。

仕事を続けながら更年期をうまく乗り切るための指針

 女性リーダーは、男性中心のリーダーシップが特徴的な世界において、トップに上り詰めるまでに、厳しい闘いを強いられることが多い。そして、中年期を迎えた女性は(男女ともに、シニア職やエグゼクティブ職など、より重いリーダーシップの役割が始まる時期でもある)、重要な会議で突然汗がふき出し、顔がほてって、言葉に詰まるなど仕事に支障を来たし、その坂がさらに険しく感じられる場合もある。

 ホットフラッシュ(ほてり)やブレインフォグ(頭がぼんやりとする)といった症状は、更年期に入ったという典型的なサインだ。これらの症状は自己効力感の低下や欠勤の増加と関連があり、女性は「リーダーらしくない」という認識を招きやすい。実際、更年期の症状の始まりは、女性リーダーのキャリアの終わりを告げるものと受け止められがちだろう。しかし、研究によれば中年期の女性の実に87%が、更年期は仕事に支障を来たさないと回答している。

 つまり、多くの女性が、仕事を続けながら更年期をうまく乗り切っているのだ。いったいどのように乗り越えたのだろうか。その答えを明らかにするために、筆者らは斬新なアプローチを取った。成功している中年期の女性リーダーにインタビューを行い、一連の変化をどのように乗り越えたのかを直接、聞いたのだ。そして、そこからトップを目指す女性たちの指針が見えてきた。女性リーダーが更年期をうまく乗り越えた事例を知ることは、症状に伴うスティグマや不確実性を和らげ、人生でこの段階を迎える女性たちに戦略や実践的な助言を提供できるだろう。

研究の概要

 今回の研究では、ドレクセル大学助教授のライザ・バーンズとペンシルバニア州立大学博士課程のヨハンナ・ストックデールとともに、米国・カナダ・英国でシニアリーダー職にある中年期(閉経周辺期または閉経後)の女性64人にインタビューを実施した。彼女たちは優秀なリーダーで、更年期の症状を抱えながら、CEO、非営利団体のエグゼクティブディレクター、バイスプレジデント、高位の軍幹部、教育長、市長などとして活躍した。

 インタビューでは、更年期とリーダーシップの役割が重なった時のことを振り返ってもらった。そして、長時間に及んだインタビューのデータを、厳密な質的アプローチを用いて分析し、分類し、議論しながら、浮かび上がってきたテーマを検討した。

 すると意外なことがわかった。話を聞いたリーダーたちは、ただ更年期を乗り越えただけでなく、更年期の最中で成功する方法を学んでいたのだ。

 一連の対話には典型的な「ヒーローズ・ジャーニー」(英雄の旅)の要素があった。多くの女性にとって、更年期の症状は「答えを求める旅」の始まりだった。より深い知識を得た彼女たちは、仲間やメンター、友人らとともに、自分の立場を活用して、更年期に関する無知やスティグマと闘った。症状に伴う困難を乗り越えながら、内面の強さと新たなスキルを手に入れたのだ。そして最終的に、彼女たちの経験は、変化を起こし、後に続く女性リーダーのためにシステムを改善するという意欲につながった。

 彼女たちの物語をもとに、更年期の症状が始まった後にリーダーが歩む5つのステップと、より楽観的な物語を示していこう。

成功するリーダーが更年期を乗り越えるステップ

1. 自己主張とセルフケアで症状と闘う

 筆者らの研究に参加した女性リーダーは、先行研究と同じように、当初は更年期の症状が仕事に支障を来すと考えていた。そして、自分の体の変化に不安を覚え、入手可能な情報に不満を募らせたという。また、医療界はいまだに更年期の女性を「理解していない」と指摘し、多くの女性がかかりつけ医から更年期や利用可能な治療法についてほとんど説明を受けていなかった。

 そこで、彼女たちはどうしたのか──リーダーシップのスキルを活用してみずから学び、自分のために主張したのだ。更年期の症状を新たな日常として受け入れるように言われても、彼女たちは引き下がらなかった。ネットで調べ、症状と闘いながらさまざまな医師を訪ね、紹介状や治療を粘り強く求めた。あるリーダーが言ったように、「自分のために闘わなければならない」のだ。

 さらに、彼女たちは優先順位を見直した。長年、自分を後回しにしてきたが、更年期の症状に直面して、ペースを落とし、自分の健康に注意を向けざるをえなくなった。その過程で、自然療法、食事の改善、運動を増やす、睡眠を優先するなど、症状緩和のために総合的なライフスタイルの改善を行った。あるマネジャーは、更年期が「決定的な一押し」となり、健康と仕事のバランスを見直す必要があることに気づかされた。

2. 社内外に支援ネットワークをつくる

 中年期の女性はほぼ全員が、遅かれ早かれ更年期を経験するにもかかわらず、多くの職場で更年期は存在しないかのように扱われ、正式な支援も提供されていない。今回、話を聞いた女性たちは、みずから支援のシステムを構築するために行動を起こした。

 驚いたことに、ほとんどのリーダーが職場で更年期の経験を共有しており、隠すものだという従来の常識を無視していた。自分に起きていることをチームと共有し、ユーモアで気まずさを和らげようとした。ホットフラッシュが起きたら、「個人用の暖炉」「内燃エンジン」などと冗談にする人もいた。こうした姿勢によって女性同士の連帯感が生まれ、新たな対処法や共感を得ることもできた。男性ばかりの軍隊のチームでさえ、同じような共感が生まれていた。

 リーダーたちは職場の外でも、友人や家族、あるいはオンラインを通じて支援を構築した。ある非営利団体のディレクターは、会議中のホットフラッシュ対策についてフェイスブックのグループで助言を求めた。「友人も家族もいないなら(中略)そうしたネットワークがなければ、何かしら支援のネットワークに参加しよう」

 更年期の経験を率直に共有することによって、情報や助言を得るための支援のネットワークを築くだけでなく、自分が理解されていると感じることができた。症状を隠し続ける必要がなくなり、健康状態の変化に寄り添ってくれる職場の味方を得たのだ。

 重要なのは、更年期がもたらしたつながりが、職業上の関係を強化したことだ。女性リーダーたちは、女性のシニアリーダーの前でも気楽に振る舞えるようになり、部下の女性と更年期の経験を共有して絆を深めた。そして、症状が落ち着いた後も更年期の支援グループとの関係を維持し、閉経後の職業上の助言や支援を受けていた。

3. 職場でインスピレーションを見出し、社会的圧力を手放す

 女性リーダーは更年期を理由に仕事から離れるのではなく、むしろ自分のリーダーシップの役割を積極的に受け入れるようになった。新型コロナウイルスのパンデミックの最中に学校を率い、イラクで兵士を指揮し、大手グローバル金融機関や医療クリニック、地方自治体の統括を担った。自分が頼られていると知っていたのだ。

 また、更年期をきっかけに、なぜいまの仕事をしているのかを見つめ直し、健康状態が仕事に与える影響を真剣に考えるようになった。職業上の役割から得る意義にあらためて目を向け、更年期の症状を乗り切るための意欲とインスピレーションを得て、働き続けるためには健康を優先しなければならないと理解した。

 女性リーダーは、リーダーシップの責任に加えて更年期の症状に対処する中で、他人からどう見られているかを気にする時間も気力もほとんどなかったと語っている。ある起業家は、更年期のおかげで「女性が直面するダブルバインド(二重拘束)や障壁」のすべてから解放されたと語る。「いい加減、うんざりしていたから(中略)ありのままの自分でいるしかない、そんな境地に達した」

 多くのリーダーが、こうした気づきが更年期の旅の転機になったと説明した。自分の健康とリーダーシップを優先して、他人の評価を気にすることをやめようと決めた。性差別的な二重基準や批判、さらにはインポスター症候群から解放されて、新たな自由を実感したという。多くの人がこの解放感を、率直すぎる言葉で表現した。ある女性が言うように、「くだらないことに腹を立てる」必要はもうないと思えるようになったのだ。

4. 新たに得た自信とスキルを認識してリーダーシップを変革する

 手放すという転換点を経て、女性リーダーの更年期の旅は新たな段階に入る。多くのリーダーは、更年期を迎えた当初は症状や身体の変化のために自信を失いかける時もあったが、症状を管理しながら効果的にリーダーシップを発揮できることを理解して、自信を取り戻していった。閉経に伴う困難を乗り越えて、自分のレジリエンスの高さを発見した。

 驚くことに、この段階に進んだ女性たちは、更年期の経験が自分のリーダーシップのスキルを実際に向上させたと語っている。

 新たに自信を得て、より積極的な自己主張をするようになった。ある女性は、会議で発言が増えたことは「自信に関係しているだろう」と語った。

 また、更年期の経験は共感力を高める。ある軍の幹部は「人間として成長したと実感している。人の話をよく聞くようになって、共感力や思いやり、配慮が深まった。人に尋ねる内容も変わった」。別の女性は、外からはわからない健康問題を抱える人への共感が深まり、よりよいリーダーになれたという。

 更年期の旅を歩いている女性たちは、更年期を終わりと捉えるのではなく、新たな機会に胸を躍らせていた。「更年期を『第2の春』と呼ぶ文化もある。私はその表現が非常に気に入っている(中略)いまこそ私の時間で、再び花を咲かそうとしているのだから」。こうした仕事への新しい意欲が、旅の最後の段階へとつながる。

5. 経験と立場を活かして他者のために変化を生み出す

 今回、話を聞いた女性たちは、リーダーの立場にあることが更年期を乗り越える助けになったと考えていた。この気づきは、それぞれ自分の健康の旅を歩いている人たちを、特にリーダーの地位やリソースを持たない人たちを支援するという新しい目的意識を生んだ。この傾向は軍や医療現場など、さまざまなリーダーの文脈で見られた。

 リーダーたちは職場で意識して更年期について語り、タブーを打ち破った。そうできたのは、自分が苦しい日々を乗り切るためだけでなく、リーダーシップの役割に自分が守られていると知っていたからだ。ある市長はこのように言った。「私が(更年期について)とてもオープンに語るのは、この地位にいるからこそだ」

 女性リーダーたちは職場で新たなプログラムを立ち上げ、支援グループに参加した。若い女性の同僚に自分が学んだことを伝え、男性の同僚を教育し、小型扇風機を配って、更年期の女性を支援するためにオフィス環境や業務フローを調整した。思い切ってキャリアを変えた人や、更年期向けのコーチングや関連商品を手掛ける新しい事業を始めた人もいる。

 ある女性は、更年期を「普通のこと」にすることが、「よりインクルーシブな職場をつくるために私の個人的な使命になった」と語る。

一連の研究の知見と注意すべきこと

 更年期を迎えたリーダーに、特効薬のような解決策があるわけではない。これは数年がかりの「英雄の旅」であり、自分の更年期についてより深く学ぼうという探求から、知識とスキルと地位を活用して他者を支援する行動へと発展する。

 ただし、すべての女性がこの旅を完走できたわけではない。今回、話を聞いた女性の中でも、症状をほとんど経験していない人もいれば、症状が極めて重かったが医療的なサポートが十分ではなく、旅の最初の段階でつまずいた人もいて、彼女たちは大半の人とは異なる物語を経験していた。インタビューをした女性の大半は仕事を続けていたが、更年期の問題が業務に支障を来たして解雇された人もいた。

 こうした点は先行研究と矛盾しない。つまり、重度の更年期症状が適切に管理されない場合、仕事を持つ女性にとって大きな問題になりうるのだ。しかし、今回のデータが示すように、医療知識と社会的支援にアクセスできる女性リーダーは、自分の症状を管理できるだけでなく、職業上の恩恵を得やすいと考えられる。

 もちろん、筆者らのデータは、更年期の経験を共有することに前向きで、高い地位にある女性リーダーをもとにしている。彼女たちの物語は、地位や社会資本が乏しい従業員より肯定的な経験を反映している可能性が高い。

 それでも、更年期がこのように前向きの影響を持ちうるという事実は強調したい。更年期はキャリアの終着点ではないのだ。女性がみずから学び、声を上げ、支援ネットワークを築き、スティグマを乗り越えた時、更年期の最中でも仕事で成功することができる。

 さらに、理想を言えば、組織を変える責任を女性がみずから負う必要はない。更年期に対する企業の支援が増えれば、リーダーの地位を問わずすべての女性が、キャリアへの影響を減らして(理想ではゼロにして)更年期を乗り越えることができるだろう。特に、柔軟な勤務時間や、更年期に関する教育や症状の対処法を提供する職場介入は、症状の負担やスティグマを軽減し、職場における女性の更年期経験を全体的に改善できる。

 とはいえ、すべての女性がこうした組織的な支援を受けられるようになるまでは、更年期は女性リーダーの「英雄の旅」であり続けるだろう。しかし、筆者らの研究が示しているように、更年期がリーダーのキャリアの障害になる必要はない。ブレーキを踏むタイミングにもなりうるが、ここで説明した5つのステップをもとに、更年期を暗澹たる終焉ではなく、前進するために加速する機会にできる。


"New Research on How Women in Leadership Navigated Menopause," HBR.org, November 03, 2025.