スマート製品を購入する3タイプの消費者が抱く真のニーズ
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サマリー:スマート製品市場が成熟する中、単なる「スマートさ」の強調はもはや消費者に通用しなくなっている。成功のカギは、最新技術を押し出すことではなく、顧客が真に求める価値の理解にある。筆者らが行った調査の結果、消費者は「快適性」「パーパス」「効率性」を重視する3つのペルソナに分類されることが明らかになった。本稿では、それぞれのペルソナが抱く具体的なニーズを解明し、企業の開発・営業担当者がそれぞれの顧客層に合わせて戦略を最適化するための指針を紹介する。

スマート製品を求める3タイプの消費者

 10年ほど前に家電大手サムスンが発売したスマート冷蔵庫「ファミリーハブ」は、スマートホーム革命の象徴的な存在と見なされた。この商品は、「食材管理をもっとスマートに」という触れ込みで売り出されて、目覚ましい成功を収めた。

 しかし、今日、スマート製品の市場が成熟するとともに、「スマートさ」を前面に押し出すだけでは十分でなくなってきている。実際、スマートホーム市場は2030年までに5370億ドルに拡大すると予測されている一方で、一部の推計によると、この分野では、プロジェクトの4つに3つは期待通りの価値を生み出せていないという。

 筆者らの見解によれば、問題の一つは、大半のブランドのマーケット戦略が漠然とした売り文句に依存していることにある。「スマート」「インテリジェント」「自動化」といった言葉を強調すれば、消費者が最先端のテクノロジーに魅了されるものと思い込んでいるようだ。たとえば、カメラ大手のニコンは、自社の新しいカメラを、「ディープラーニングのテクノロジーを活用して開発された最先端のアルゴリズム」を搭載したものとして売り込んでいる。

 しかし、筆者らが『ジャーナル・オブ・カスタマー・リサーチ』誌に発表した論文で指摘したように、「スマートさ」を過度に強調した場合、その機能が消費者のニーズに合致していなければ、むしろ売上げの足を引っ張りかねない。消費者は、解決したいと考える課題によっては、AIよりも、さらにシンプルでわかりやすいアルゴリズムを好む可能性が高いのだ。たとえば、消費者によっては、施錠と開錠以外の操作を求められないシンプルなスマートロックを好む場合もあるだろう。

 それに対し、多様な課題に対処することが期待されるスマート音声アシスタントの場合はどうか。この種の商品では、極めて高い適応力を備えたアルゴリズムがセールスポイントになるだろう。要するに、消費者のタイプごとに、本当に重んじているアウトカムを意識したプロダクトを送り出すべきなのだ。

 とはいえ、それがいつも簡単に実現できるとは限らない。そこで、筆者らは、消費者がどのようなニーズをいだいてスマート製品を購入するのかを掘り下げるために、31種類のスマート製品の領域に関して1000人以上の消費者を対象とする調査を行った。

 この調査では、さまざまな人口統計上のデータと嗜好に関する幅広いデータを収集し、そのうえで、スマート製品が旧来のプロダクトより優れていると期待される8つの要素を示し、一人ひとりに8要素の優先順位をランクづけするよう求めた。さらに、クラスター分析という統計手法を用いて、スマート製品を購入する消費者を3つの主要なクラスターに分類した。要するに、スマート製品の顧客層を構成する3つの「ペルソナ」(典型的な顧客像)を明らかにしたのだ。

 3つのクラスターは、年齢、所得、テクノロジーへの精通度など、これまで重視されてきた属性によって分かれているわけではなかった。スマート製品にどのような価値を期待しているかの違いによって、クラスターが分かれていたのだ。

 1つ目のグループは、快適性を高めることを目的に、この種のプロダクトを用いていた。2つ目のグループは、パーパスを持った生き方を実践する助けにしたいと思い、この種のプロダクトを用いていた。そして3つ目のグループは、生活の効率性を高めるために、この種のプロダクトを用いていた。筆者らは、この3種類のペルソナを、それぞれ「快適性追求者」「パーパス追求者」「効率性追求者」と名づけた。

 以下では、それぞれのペルソナがスマート製品に何を求めているのか、そして企業がそれぞれのペルソナに対して有効に売り込むために何が必要なのかを見ていく。

ペルソナ1:快適性追求者

 筆者らの調査で全体の46%を占めていた快適性追求者は、熱烈なテクノロジー愛好家というわけではない。この人たちがスマート製品に求める要素は3つだ。快適性、娯楽性、時間の節約である。