リスクの高い意思決定を行うための4つの指針
Illustration by Nathan St John
サマリー:現代のリーダーは、組織再編やDEI推進など、法的・評判・文化的リスクを伴う困難な決断に直面している。これらは従来の定量的なリスク管理では捉えきれず、曖昧さの中で原則に基づき行動するための新たな枠組みが不可欠だ。本稿では、トレードオフの可視化や計画のプレッシャーテストなど、リスクの高い意思決定において、組織の価値観を守りながら誠実に行動するための4つの指針を提示する。

リスクの高い意思決定を行うための4つの指針

 今日のリーダーは荒波を渡っているだけではない。不可能にも思える決断の洪水に直面しているのだ。いますぐ組織再編に踏み切るか、それとも待つべきか。対立を招かず、価値観を手放さずに、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)にどう取り組むか。人材戦略の設計に当たり、ポストを一つずつ入れ替えるのではなく、急激な変化にどう対応するか。必要な人員削減を、信頼を損なわずにどう行うか。人間性を損なわない職場をいかに築くか。

 これらは単なる戦略的選択ではない。重大な賭けであり、それぞれの決断が運営上や法的なリスク、評判に関するリスク、そして何より文化的なリスクを伴う。

 経営コンサルタントのダグラス・ハバードが指摘するように、従来のリスクマネジメントは主観的な評価に依存し、リスクの適切な定量化を軽視しがちなため、しばしば失敗に陥る。前例のない訴訟のように、理論上は起こりそうにないものとして扱えるリスクでも、リーダーがその潜在的な影響を想定すると、組織が過剰に反応することがある。

 評判や法的リスクに対する不安は、将来の危機を回避するための組織再編、方針の見直し、文化のリセットを促すことが多い。ただし、そうした変化はリスクを減らすことを目的としていながら、従業員の信頼を損なうという文化的なコストを伴いやすい。このコストは、従来のリスクマトリクスではほとんど捉えることができない。

 リーダーが自分は曖昧さにマヒしていると感じた時に、こうした課題を乗り越えるには、従来のリスクマネジメント以上のものが求められる。あらゆる選択肢が最適解に思えない状況でも、時代に即した課題が相互に関連していることを踏まえ、原則に基づいた断固たる行動を支える枠組みが必要なのだ。

 リーダーや組織がこうした難しいジレンマに苦労する姿を観察してきた筆者は、リスクの高い意思決定を行う際の4つの指針を導き出した。

1. トレードオフを可視化する

 リスク評価は、サイロ化されて行われることが多い。業務上の必要性は法的リスクと別に検討され、法的リスクは評判リスクと切り離して扱われる。

 こうしたアプローチは、システム全体に編み込まれた重要な相互依存関係を見落としやすい。ロバート S. キャプランとアネット・マイクスが『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)で指摘しているように、効果的な戦略的リスクマネジメントは、リスクと組織全体の戦略との相互作用を理解することが不可欠になる。孤立した脅威に目を奪われるのではなく、全体の文脈を把握するのだ。

 トレードオフを可視化することで、リーダーは隠れた力学を明らかにし、人々が避けがちな難しい課題を表に引き出すことができる。これにより、最も重要な課題に取り組めるようになる。