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長所や楽観だけを強調していては資金調達はうまくいかない
資金調達を目指す人にとっての常識は明快だ。「ポジティブであれ」というものである。投資家に対してピッチを行う際には、良い面を強調し、悪い面は控えめにするのが最も安全だと考えられている。失敗や誤り、不安について語る人を支援したい投資家がいるだろうか、というわけだ。
しかし、ピアツーピア(P2P)レンディング(個人間融資)プラットフォーム大手のプロスパーにおける起業家による融資依頼3万件超を分析した結果、直観に反する事実が明らかになった。ネガティブな情報を含むピッチは、中立的またはポジティブなものよりも早く資金を調達し、金利も低く、デフォルト(債務不履行)率も低かったのだ。端的にいえば、誤りや負債、挫折を認めた人のほうが、長所や楽観だけを強調した人よりも、迅速に資金を集め、確実に返済していた。慎重に練られたネガティブな情報の開示は、資金獲得の強力な戦略となるのだ。
ネガティブな情報が効果的な理由
筆者らは当初、この結果に戸惑った。困難や過去の誤りを認めることで、なぜ見知らぬ人が資金を提供したくなるのか。貸し手は借り手のトラブルについて知った後になぜより低い金利を提示するのか。研究により、次の3つの理由が明らかになった。
期待値設定
投資家は、特に伝統的な金融機関から排除されがちな人々が集まるプラットフォームにおいては困難を予想しており、完璧すぎるストーリーはかえって疑わしく聞こえる。一方、課題を率直に説明することは、ごまかすことなく現実を示していると受け取られ、融資の依頼に信憑性を与える。ある貸し手は、「失敗を何度か経験したり、不運に見舞われたり、まだ信用を積み上げる機会がなかったりした人たちに投資することに興味がある」と述べた。
誠実さのサイン
失敗を認めることは心理的に負担が大きく、評判リスクも伴う。だからこそ、誠実さを示す強力なシグナルとして機能する。投資家は、何が問題だったのか、そしてそれをどう修正するのかをみずから認める責任ある自己開示を評価する。なぜなら、それは借り手が問題を隠すのではなく、返済に対する責任を果たすことを示唆するからだ。ある貸し手はこう述べた。「私は、返済に全力を尽くし、期限通りに全額返済する意思のある、信頼できて誠実な借り手に融資する。あらゆる信用履歴を持つ借り手への融資を検討している」
社会的支援
ネガティブな情報の開示は共感を呼んだ。投資家はリターンを追求するだけでなく、支援をしたいという思いがあるのだ。ある貸し手は、「企業よりもコミュニティを強く信じており、プロスパーは人々が支援の手を差し伸べたいという衝動を行動に移す素晴らしい手段を提供している」と語った。総じて、ネガティブな情報の開示は投資家を遠ざけるのではなく、引き寄せていた。
直観に反するデータ
3万件を超えるビジネスへの融資依頼において、特に顕著だったのが次の3つの定量的傾向だ。
・ネガティブな情報を含むピッチは、中立的またはポジティブなものよりも約1日早く資金調達に成功した。成功例の多くが3日以内に資金調達を完了することを踏まえると、この差は大きい。
・ネガティブなトーンが強まるほど、金利は低下し、使用した指標では1単位当たり約0.1パーセントポイント低下した。





