好業績企業でトップ交代が加速する本当の理由
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サマリー:2025年は、好業績企業におけるCEO交代が加速した。それに対して、更迭は減少しており、取締役会は危機対応ではなく、不確実な環境に備える戦略的手段として交代を活用し始めている。AI改革や地政学リスクが「ニューノーマル」となる中、社外人材の起用や継続的な後継者計画の重要性が高まっている。本稿では、最新データに基づきCEO交代が戦略的再生へと変貌を遂げている現状と、取締役会が取るべき具体的な措置について紹介する。

CEOの交代は戦略である

 2025年はCEOの交代が加速した。その最大の理由は、業績の低迷ではない。

 米調査会社コンファレンスボードと、米経営人材コンサルティング会社エゴンゼンダー、米コンサルティング会社セムラー・ブロッシーの共同調査によると、最近では好業績の組織も、業績が振るわない組織とほぼ同じペースでCEOが交代している。2025年には、S&P500の業績上位75%(株主総利回りに基づく)に入る企業のCEO交代率は12%で、業績下位25%のCEO交代率14%とほぼ同水準だった。前年は好業績企業が7%で、低迷企業は18%という明確な差があった。

 同時に、CEOの退任そのものが増えている。2025年の承継率は12.5%[筆者注]で、史上最低の水準となった、2023年の12.2%、2024年の9.8%と比べて大きく上昇した。つまり、これは過去の標準値への回帰と見ることもできるが、長引くマクロ経済の変動や、リーダーシップに求められるスキルの変化、そして社外から起用されるCEOの増加も影響している。

 特筆すべきは、CEOが更迭されるケースが、2024年の16.3%から15.2%に低下したことだ(2020年以降で初めての減少)。これは、ほとんどのCEO交代が危機や業績不振によるものではないことを示唆している。つまり、取締役会が交代問題に積極的に対処するために自発的に取った措置なのだ。

 こうした状況を総合して考えると、好業績企業と業績不振企業の両方で変化が起きているようだ。最も先進的な組織の場合、この変化は、リーダーシップの継続に関する取締役会のアプローチが根本的に変わりつつあることを示唆する可能性がある。多くの企業の取締役会は2025年、CEO交代を軌道修正の措置としてだけでなく、画期的な技術や地政学的な秩序の崩壊、そしてステークホルダーの圧力により急速に変化する、見通しのつかない未来に会社がよりうまく備えるための戦略的手段として活用してきたといえる。

最近のCEO交代に影響を与える要因

 企業が2025年に直面した急速な変化、混乱、そして予測不可能性は、CEO交代計画に微妙かつ相互に絡み合った影響を与えている。

先延ばしにされてきたCEO交代が完了しつつある

 最近CEOの退任が増えているのは、リーダーシップサイクルの満了と、先延ばしにされていた交代の実行の両方を反映している。2024年に退任したCEOの平均在任期間は7.4年と、過去最短だった。これは、長年その地位にあったリーダーが、コロナ禍後の混乱やマクロ経済の不透明性の中で会社を支えるために、退任を先送りした結果、その年の退任者が在職期間の短いリーダーたちに偏ったためだ。

 続く2025年に退任したCEOの平均在任期間は、9.3年(中央値は8年)へと上昇した。これらのリーダーは、長年計画されていた交代をようやく実施した。その多くは、好業績企業で成功した経験豊かな経営者だったため、その退任は、上位75%の好業績企業におけるCEO交代率を押し上げた。

不安定な市場は「ニューノーマル」と見なされている

 取締役会はここ数年、不透明な経営環境で安定を確保するために、交代計画の実施を遅らせてきた。だが、もはや環境が安定化するまでトップ交代に待ったをかけていられなくなった。多くの取締役会は、AI改革や市場の不透明感の高まり、そして規制の変化を特徴とする複雑な経営環境は、もはや一時的な混乱ではなくニューノーマルであることに気づいた。そこで、混乱に対処し、急速に変化する機会を「乗り切る」だけでなく活用できるよう会社の準備を整えるために、トップ交代が検討されるようになった。

社外からの新CEO起用が増えている

 この「ニューノーマル」の認識を踏まえて、取締役会はトップの仕事に求められる資質の変化に応じたリーダーシップ能力と、こうした能力が社内に存在するか否かの再評価に取り組んでいる。2025年のS&P500では、社外から新CEOを迎え入れる企業が、前年よりほぼ倍増して32.7%となり、内部昇進率は8年ぶりに70%を割り込んだ。