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コーチングの停滞に潜む2つの背景
数カ月前、あるクライアントが筆者にこう切り出した。「このコーチングから、自分が必要としているものが得られているのかわかりません」。彼は1年前、自社のパートナーに昇進することを目指してコーチングを受け始めた。予想よりも早くその目標を達成し、方向性を見失っていた。「目標を達成し、次は何をすればよいのでしょうか」と彼は言った。
リーダーの6割以上は、エグゼクティブコーチングによってパフォーマンスが向上したと答えている。研究によれば、リーダーシップレベルでの行動変容が定着するには通常半年を要するが、多くのコーチングプログラムは、その潜在能力を十分に発揮する前に失速してしまう。
コーチングにおける停滞には、二つの意味がある。一つは、その関係性から学ぶべきことを終えたという意味。もう一つは、これまで以上に深く、困難で、本質的な変容を伴う成長の入り口に立っているという意味だ。課題は、そのどちらであるかを見極めることにある。
成長の停滞とミスマッチの違いを理解する
コーチングを受ける中で、停滞が成長の兆しなのか、それともミスマッチによるものなのかを認識し、継続すべきか、やめるべきかを意図的に判断するための方法を紹介する。
停滞を認識する
コーチング関係は、目標を達成したりフィードバックを得たりするだけのものではない。新しい行動を学び、実践することのできる構造化された専門的な「実験室」だ。コーチは、あなたが内省し、実験するための、管理された批判のない場を提供する。
しかし、そうした実験が期待通りの結果を生まないことがある。単調に感じられたり、活気を失ったりする。停滞はもどかしいものだ。進歩は遅く、刺激が欠けるように感じられる。コーチングが本当に効果があるのかと疑問を抱くこともあるだろう。こうした時期は通常、最初の大きな成果(昇進、業績回復、人間関係の修復など)の後に訪れる。外的な変化はすでに起きた。残されたのは、内面の変化だ。
成人発達の研究によれば、目標達成という初期段階が終わると、より深い統合の作業が始まる。発達心理学者のロバート・キーガンが「主体から客体への移行」と呼ぶ段階だ。これは、かつて自分を突き動かしていた無意識のパターンを客観的に捉え、それに対して責任を持ち始めるプロセスだ。成長における厄介な中間段階であり、けっして心地よいものではない。
組織のリーダーであるクライアントのエネルギーが低下していると感じた時、筆者は「この不快感の中で、自分自身について何を学んでいるか」と問いかけることがある。この問いが好奇心を再燃させ、新たな成長の道を切り開くこともあれば、コーチングのアジェンダ自体が形骸化していることを露呈させることもある。
成長かミスマッチかを見極める
判断のカギは、生産的な不快感と、関係性のミスマッチを見分けることにある。成長の兆しとしての不快感は、脆弱性を伴う。それは、ためらいや疑問、時には抵抗として現れる。あまりにも個人的すぎる、あるいは直視するには大きすぎるテーマを避けているのかもしれない。この回避こそが重要な手掛かりで、次に着手すべき課題を指し示していることが多い。
対照的に、ミスマッチによる不快感は異なる性質を持つ。開放的というより、もろいものだ。コーチとの信頼関係の亀裂が修復されていない、あるいは、コミュニケーションスタイルや目標の根本的な不一致が原因かもしれない。あなたかコーチのどちらかがプロセスにおけるみずからの役割に対する責任を果たさなくなれば、成長は永遠に止まってしまう。
リーダーが陥りやすい誤りは、抵抗を失敗や相性の悪さと誤解することだ。リーダーシップ開発において、抵抗とは知恵だ。まだ手放す準備ができていないものを守ろうとする心の働きである。熟練したコーチは、性急に先へ進んだり、抵抗をやめるサインだと勘違いしたりするのではなく、抵抗が何を意味するのかをクライアントとともに探求する。
とはいえ、ミスマッチも確かに起こる。コーチではなく、具体的な答えを提示してくれるストラテジストやコンサルタント、あるいはあなたと同じ業界で経験を積んだアドバイザーやメンターが必要な場合もあるだろう。重要なのは、その緊張が「内面」(より深い内省)に向かわせているのか、それとも「外面」(より適した環境)に向かわせているのかを見極めることだ。
不快感について話をする
停滞を認識したら、コーチに率直に伝え、話し合うべきだ。フィードバックを与えることはリーダーの主要なスキルであり、その対話自体が勇気、透明性、主体性を体現するため、成長の機会となる。
対話を始めるために、以下の3つのステップを試してほしい。
・「~と感じています」(観察を伝える)
・「私が必要としているのは~です」(ニーズを明確にする)
・「~を試しませんか」(提案や対話を促す)
たとえば、「セッションに変化が起きていると感じています。いまはより具体的な答えや洞察が必要なのです。コーチングがいまの自分に適切かどうか、検討できますか」といった具合だ。
筆者はコーチとして、以下のような問いを投げかけ、内省を促すこともある。
・どのような探求が、あなたにとって最も意味があると思うか
・そのニーズは、あなた自身について何を物語っているか
・他に何が起きていると考えられるか
・他に必要としているものは何か
・これまでのプロセスで、最も価値を感じたことと、最も困難だったことは何か
・私に伝えにくいことは何か
リーダーであるクライアントが迷っている場合、筆者はイメージトレーニングを提案し、2つの未来を想像してもらう。コーチングを継続する未来と、やめる未来だ。次のように問いかけ、可能性を膨らませてイメージしてもらう。「継続し、真剣に取り組んだら何が起きるか」「やめたらどのような扉が開くか(あるいは閉じるか)」。想像される結果を誇張することで、クライアントは可能性の境界線に立ち、いまの自分にとっての真実を明確にすることができる。
目的は継続するよう説得することではなく、みずからの決断に主体的に責任を持ってもらうことだ。
意図を持って決断する
コーチングが自然に終わりを迎える時、それは通常、コーチと、クライアントである組織のリーダー双方にとって明白だ。筆者はコーチとして、以下のような場合は関係を終える時期だと判断する。
・クライアントの学習が十分定着していて、学んだことを独力で実践することを望んでいる。
・コーチング関係に依存が生じている。コーチはクライアントに対し、コーチング関係を「支え」ではなく「内省の場」として利用してほしいと考えている。健全な関係は自律性を高めるもので、コーチは「命綱」ではなく「信頼できるガイド」であるべきだ。コーチは、「何を考えるか」ではなく「どう考えるか」を支援する。
・コーチングが、もはや現状に適合していない。たとえば、会社が費用を負担するコーチングにおいて、会社の優先順位が変化することもある。会社側は当初、クライアント個人のリーダーシップ開発に投資していたが、より広範なチームのダイナミクスや企業文化の変革へと焦点が移っているかもしれない。こうした場合、一対一のコーチングを継続するよりも、チームコーチングやファシリテーションを導入するほうが適切なことがある。あるいは、クライアントのニーズがコーチングの領域を超え、セラピーやカウンセリングといった別の手法を用いるほうが適切かもしれない。
コーチングの終了は、失敗ではない。それは移行であり、適切な締めくくりが必要だ。最後の数回のセッションでは、これまでの軌跡を振り返るとよい。初期の目標を再確認し、重要な転換点を思い出し、成長を可能にした要素を言語化する。進歩を維持するための条件や、新たな支援が必要な時期をどう察知するかについても話し合うべきだ。
継続するか、終わらせるか
コーチングを終える前、筆者はクライアント(組織のリーダー)に以下の3つの問いをみずからに投げかけてもらっている。
1. 解決していないと思うものは何か
答えが、恐怖や回避、感情的な課題なら、その停滞は、踏み込むべき成長の境界線である可能性が高い。
2. 解決したと思うものは何か
純粋な満足感や感謝、そして一人で進む準備ができているという感覚があるなら、それは健全な終わりを意味する。
3. リーダーとしての次なる課題は何か
同じコーチと続けるか、新しいコーチを探すか、コーチングを一時休止するかにかかわらず、次のリーダーシップ上の課題を明確にすることが重要な成果となる。
コーチングは永遠に続くものではない。能力を拡大し、時間をかけてセルフコーチングができるようにするためのものだ。しかし、物足りなさを感じ始めているという理由だけで打ち切るべきではない。停滞期に継続することを決意した筆者のクライアントは、後にこう語った。「もうやることはやったと思っていたが、実際には始まったばかりだった」
最高のコーチング関係とは、目標が達成された時に終わるのではない。問いが深まった時により強固になる。大切なのは、継続すべき時と、やめるべき時を見極めることだ。
"When You've Stopped Growing with Your Executive Coach," HBR.org, December 03, 2025.







