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混乱の中で道を見失わないために必要な能力
予測不能。それが今日の世界の決定的な特徴である。
リーダーは、特にCEOは、これまで頼りにしてきたモデルや予測、戦略的前提が、もはや通用しないという厳しい現実を突きつけられている。いま最も差し迫ったリーダーシップの課題は、それ自体が急速に変化して、相互に絡み合い、その多くが人間の行動によって形づくられている。
ここ数年を振り返ってみよう。世界的なパンデミックにより、一夜にしてビジネスモデルの再構築を余儀なくされた。関税とサプライチェーンの崩壊は産業全体に波及した。ロシアのウクライナ侵攻や米中間の緊張の激化など地政学的ショックが続いている。生成AIの飛躍的な進歩は働き方そのものを混乱させている。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)や企業価値をめぐる激しい議論、高まるサイバー攻撃のリスク、気候変動と結びついた異常気象。そして、2025年のエデルマン・トラスト・バロメーターが示すように、組織に対する従業員や社会の不信感が増大している。
これらの危機は、リーダーの戦略を試しただけではない。価値観に根差したリアルタイムの方向転換を、従業員、顧客、投資家、社会の目の前で決断するように迫ったのだ。その結果として生じた緊張は、取締役会や役員研修会で次のような声として表れた。
「羅針盤なしで航海している気分だ」
「ノイズが大きすぎて、どのシグナルに従えばよいのかわからない」
「何が正しい行動なのか、わからなくなった。そもそも自分たちはどのような会社なのか」
これらは単に戦術上の懸念ではない。その本質は方向性、価値観、そして突き詰めればアイデンティティに関わる問題だ。この新しい環境において、ピボット(方向転換)はもはや、混乱への例外的な対応として扱うことはできない。明確に言語化されて組織で共有されている価値観を基盤とする、日常的なリーダーシップの習慣にしなければならないのだ。
その明確さがなければ、リーダーはパーパスも一貫性もなく方向転換をするというリスクに陥る。言い換えれば、明確さがあれば、パーパスを基盤にして迅速に調整できる。
だからこそ、新しいリーダーシップのアプローチが必要なのだ。経営陣が複雑性を生き延びるだけでなく、誠実さと明晰さと適切なマインドセットを持って乗り切るためのアプローチである。筆者らはこれを「パーパスのあるピボット」と呼ぶ。すなわち、自分の価値観からぶれることなく、新しい現実に適応する能力だ。
理論だけで語ろうとしているわけではない。現代を象徴する危機において、筆者らが経験してきたことに基づいている。筆者の一人であるダナ H. ボーンは米軍准将として、9.11同時多発テロ直後のワシントンで指揮を執り、のちにアフガニスタンで従軍した。マーク・コレアはコロナ禍、パンデミック後の回復期、さらにはロシアのウクライナ侵攻後の地政学的・経済的ショックの時期に、世界的なビジネススクールでエグゼクティブ教育を率いた。ビル・ジョージはフォーチュン50企業を率いて医療機器・医療設備業界の激変を乗り切り、現在はCEOや取締役会に、最も複雑で矛盾に満ちた意思決定の舵取りを助言している。
筆者らは世界中の大学院生やシニアエグゼクティブにオーセンティックリーダーシップ(正真正銘のリーダーシップ)を教え、重大な局面で誠実に人々を導けるように多くのリーダーを手助けしてきた。その過程で、プレッシャーの下でパーパスと価値観の一貫性を保つために必要なものは何か、それを阻み、崩壊させるものは何かを観察してきた。







