「パーパスに根差した方向転換」を実践するための5つの原則
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サマリー:予測不能な危機が常態化する現代、リーダーには従来のモデルに固執せず、価値観とパーパスを軸に日常的な方向転換を行う力が求められる。混乱の中でも自分自身を貫き、誠実さと明晰さを持って適応する「パーパスのあるピボット」が新たなリーダーシップの核となる。本稿では、現実の直視や戦略の柔軟な修正など、変化に翻弄されず組織をたしかな未来へと導くために必要な5つの実践原則について、具体的な事例とともに紹介する。

混乱の中で道を見失わないために必要な能力

 予測不能。それが今日の世界の決定的な特徴である。

 リーダーは、特にCEOは、これまで頼りにしてきたモデルや予測、戦略的前提が、もはや通用しないという厳しい現実を突きつけられている。いま最も差し迫ったリーダーシップの課題は、それ自体が急速に変化して、相互に絡み合い、その多くが人間の行動によって形づくられている。

 ここ数年を振り返ってみよう。世界的なパンデミックにより、一夜にしてビジネスモデルの再構築を余儀なくされた。関税とサプライチェーンの崩壊は産業全体に波及した。ロシアのウクライナ侵攻や米中間の緊張の激化など地政学的ショックが続いている。生成AIの飛躍的な進歩は働き方そのものを混乱させている。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)や企業価値をめぐる激しい議論、高まるサイバー攻撃のリスク、気候変動と結びついた異常気象。そして、2025年のエデルマン・トラスト・バロメーターが示すように、組織に対する従業員や社会の不信感が増大している。

 これらの危機は、リーダーの戦略を試しただけではない。価値観に根差したリアルタイムの方向転換を、従業員、顧客、投資家、社会の目の前で決断するように迫ったのだ。その結果として生じた緊張は、取締役会や役員研修会で次のような声として表れた。

「羅針盤なしで航海している気分だ」
「ノイズが大きすぎて、どのシグナルに従えばよいのかわからない」
「何が正しい行動なのか、わからなくなった。そもそも自分たちはどのような会社なのか」

 これらは単に戦術上の懸念ではない。その本質は方向性、価値観、そして突き詰めればアイデンティティに関わる問題だ。この新しい環境において、ピボット(方向転換)はもはや、混乱への例外的な対応として扱うことはできない。明確に言語化されて組織で共有されている価値観を基盤とする、日常的なリーダーシップの習慣にしなければならないのだ。

 その明確さがなければ、リーダーはパーパスも一貫性もなく方向転換をするというリスクに陥る。言い換えれば、明確さがあれば、パーパスを基盤にして迅速に調整できる。

 だからこそ、新しいリーダーシップのアプローチが必要なのだ。経営陣が複雑性を生き延びるだけでなく、誠実さと明晰さと適切なマインドセットを持って乗り切るためのアプローチである。筆者らはこれを「パーパスのあるピボット」と呼ぶ。すなわち、自分の価値観からぶれることなく、新しい現実に適応する能力だ。

 理論だけで語ろうとしているわけではない。現代を象徴する危機において、筆者らが経験してきたことに基づいている。筆者の一人であるダナ H. ボーンは米軍准将として、9.11同時多発テロ直後のワシントンで指揮を執り、のちにアフガニスタンで従軍した。マーク・コレアはコロナ禍、パンデミック後の回復期、さらにはロシアのウクライナ侵攻後の地政学的・経済的ショックの時期に、世界的なビジネススクールでエグゼクティブ教育を率いた。ビル・ジョージはフォーチュン50企業を率いて医療機器・医療設備業界の激変を乗り切り、現在はCEOや取締役会に、最も複雑で矛盾に満ちた意思決定の舵取りを助言している。

 筆者らは世界中の大学院生やシニアエグゼクティブにオーセンティックリーダーシップ(正真正銘のリーダーシップ)を教え、重大な局面で誠実に人々を導けるように多くのリーダーを手助けしてきた。その過程で、プレッシャーの下でパーパスと価値観の一貫性を保つために必要なものは何か、それを阻み、崩壊させるものは何かを観察してきた。

 優れたリーダーの資質は、適応する能力だけでなく、適応しながら自分自身を貫くことができる能力だ。あらゆるピボットをパーパスで支えることにより、リーダーは混乱の中でも道を見失わず、自分自身を見失わずに進むことができる。本稿では、その道筋を示したい。

パーパスのあるピボットを実践する5つの原則

「ピボット」とは、基盤を失わずに進む方向を変えることだ。バスケットボールでは、片足を床に固定したまま、体を回転させて新しい選択肢を探る動作を指す。軍におけるピボットは、戦況に対応するための協調された鋭い転換を指し、軸足を保ったまま部隊が統制された形で素早く配置を変える。

 今日のリーダーシップにおいて、ピボットの軸足は、世界がどれほど動こうとも地に足をつけている安定した基盤になる。CEOにとっては、自分が何者で、何を信じ、なぜ導くのかを理解し、それを企業のパーパスおよび価値観と一致させることだ。組織にとっては、自分たちが何を支持して、どのように振る舞い、なぜ存在するのかについて明確であり、それが共有されていることを意味する。

 こうした明確さがなければ、リーダーはあてもなく、一貫性もなしに方向を転換するおそれがある。しかし明確さがあれば、パーパスを軸に素早く適応できる。この一貫性がオーセンティックリーダーシップの核心であり、組織のあらゆる階層に明確さをもたらす。

 今日のリーダーシップにおいて、そして将来においてはなおさら、ピボットは一度きりではない。成功するリーダーは、混乱に反応して方向を転換するのではなく、ピボットを規律のある習慣にしている。このように先を見据えた実践は、組織をパーパスと価値観に根ざして動かし続け、何があろうとも備えができていることにつながる。

「パーパスのあるピボット」のマインドセットを身につけるために、5つの原則から始めよう。

1. 現実に向き合う

 複雑さの中で組織を率いるリーダーシップは、不都合な真実を認めることから始まる。状況が変化したり戦略が行き詰まったりした時に、最初にやることは、過去を擁護することではなく、直視することだ。多くのリーダーはサンクコスト効果の罠に陥り、これまで投資してきたという理由だけで、意思決定やプロジェクト、信念に固執する。しかし、かつて機能したものにしがみつくと、変えなければならないものが見えなくなる。

 現実に向き合うとは、愛されてきた製品が時代遅れになったことや、長年信頼していた幹部がもはや適任ではないこと、地政学的な変化で市場全体が持続不可能になったことを受け入れるという意味だ。うまく機能していないものを検証し、これまでの成功の基盤となった前提を問い直し、前進するために自分が築いたものを解体する必要があるかもしれない。

 どれほど痛みを伴おうと、現在を明確に見つめなければ、よりよい未来に向かうピボットのプロセスを始めることはできない。ピボットの力を解き放つのは、快適さではなく明確さである。

 2025年5月にアップルCEOのティム・クックをはじめとした経営陣は、中国という単一の製造拠点に過度に依存することの長期的なリスクを公に認めた。地政学的緊張の高まりとサプライチェーンの脆弱化を踏まえて、クックは次のように説明した。

「すべてを1カ所に集約することはリスクが高すぎると、以前から認識しており、時間をかけて新たな供給源を開拓してきた」

 アップルは危機を待つのではなく、すでにインドやベトナムへと製造の分散を進めていた。一連の取り組みは多くの競合相手が公に行動を起こすよりずっと早くから始まっており、コストや効率に関する自社の前提を問い直すものだった。このピボットは、単なる業務上のものではない。早い段階で現実を直視し、これまでの過度の依存を認めたうえで、将来の戦略を企業のコアバリューである「レジリエンス」と整合させるという、より広範な真実を受け入れた判断を反映していた。

 現実を早期に直視して、特に自分の前提に疑問を投げかけ、現実に向き合うリーダーは、信用と信頼を築く。パーパスのあるピボットの最初の一歩は、何を変えるかを決めることではなく、なぜ変える必要があるのかを認めることだ。

ピボットの問い

 自分自身やビジネスについて、どのような厳しい真実と向き合えば、必要なピボットへの道が開けるか。

2. パーパスと価値観に忠実であり続ける

 混乱の時代にリーダーは、後退する、見せかけの姿勢を取る、何かが起きてから選択する、最も大きな声に流される、といった誘惑に駆られがちだ。自分や組織のパーパスと価値観を明確にしていないリーダーは、内なる信念ではなく外部の圧力に操られやすい。

 価値観を曲げろという圧力は、時に容赦がない。しかし、リーダーが自分の拠り所について妥協すれば、その代償は即座に表れて積み重なる。信頼が崩壊し、一貫性が薄れ、人々は意思決定だけでなく方向性そのものを疑い始める。

 ハーバード・ビジネス・スクールの研究によれば、コロナ禍において、従業員、顧客、地域社会に対する公約に沿って行動した企業は、市場価値の下落幅が小さく、回復も早かった。他の研究では、リーダーの言葉と行動が一致していると、従業員は誠実さを感じ、信頼、パフォーマンス、長期的なエンゲージメントが強化されることが示されている。

 反対に、一貫性の欠如は不信感を生む。企業の偽善に関する研究によれば、言行の不一致は感情的な反発を招き、評判を損ない、エンゲージメントの低下を助長する。なぜなら一貫性は信用を、信用は信頼を意味するからだ。価値観が風向きで変われば、パーパスもリーダーシップもその意味を失う。激動期の真の危険は、外部の混乱ではなく内部の漂流だ。

 2025年1月にターゲットは、これまで掲げてきたDEI目標を終了し、「REACH」(人種的公平に向けた行動改革)イニシアティブを縮小して、「サプライヤー・ダイバーシティ」を「サプライヤー・エンゲージメント」に改称すると発表した。社会はすぐに反応した。公民権活動家はボイコットを呼びかけ、フロリダ州当局は株主訴訟を起こし、ターゲットがDEIプログラムのリスクについて投資家を誤解させたと主張した。

 対照的に、コストコはコアバリューを堅持した。すなわち、法令を遵守すること、会員を大切にすること、従業員を大切にすること、サプライヤーを尊重することだ。2025年1月にコストコの株主は、DEIの取り組みのリスク再評価を求める提案を98%超の圧倒的多数で否決し、同社の価値観の整合性を支持した。CEOのロン・バクリスと取締役会も、インクルージョンへのコミットメントがこれらの価値観を体現する中核であると再確認した。コストコは2025年半ばにかけて経営面でも財務面でも堅調なパフォーマンスを維持し、従業員、顧客、投資家からの信頼をさらに強化した。

 あるフォーチュン50企業のCEOは、従業員から「自分たちはターゲットのようになるのか、それともコストコか」と聞かれてこう答えた。「どちらでもない。私たちは私たちであり続ける」。筆者(ビル・ジョージ)がCEOから聞いたこの言葉は、パーパス主導のリーダーシップの本質を捉えている。企業の価値観は、外圧を受けても揺るぎないものでなければならない。価値観が揺らげば、信頼と業績もすぐに揺らぐ。

ピボットの問い

 このピボットは自分たちの核心的なパーパスと価値観を再確認するものか、それとも損なうものか。

3. 変化する状況に戦略と戦術を適応させる

 俊敏性は不可欠である。ただし、パーパスと価値観に結びついていなければならない。リーダーはピボットの軸足を地面にしっかり置いたまま、ステークホルダーのニーズに応えて戦略や戦術を変えながら、外部環境の変化に迅速に対応する。迅速に動かなければ、より動きの速い競合相手に出し抜かれるかもしれない。ただし、錨を下ろさずに迅速に動けば漂流する。価値観を指針として迅速に動けば、方向性が生まれるのだ。

 デカトロンのデジタルおよび循環型モデルへの変革は、2022年に当時のCEOバーバラ・マーティン・コッポラの下で始まり、2025年にハビエル・ロペスが後任に指名された後も続いている。一連の変革は外部からの圧力、すなわち、持続可能な製品に対する消費者の需要の高まり、廃棄物や修理可能性に関する欧州の規制強化、デジタル小売りへの急速な移行によって推進されてきた。

 手頃な価格で高品質のスポーツ用品を設計、製造、販売することで知られ、70カ国以上で事業を展開するグローバルなスポーツ用品メーカーは、場当たり的なサステナビリティの取り組みを超えて、調達、物流、製品設計、顧客エンゲージメントを戦略的に見直し、成長のあり方を再定義した。

 2024年までにデカトロンは1730の工房で約300万点の製品を修理し、修理可能性を製品設計に組み込んで、循環型販売の収益を約10%増加させた。現在は全世界の売上げの3%強を占めている。

 並行してポートフォリオの合理化を進め、多数の自社ブランドを12の専門ブランドに統合し、焦点と一貫性を強化した。さらに、3億ユーロ規模のイノベーション基金「デカトロン・パルス」を立ち上げ、循環型で持続可能な製品開発を加速させた。インドの「セカンドライフ・バザール」など地域別のイニシアティブは、再生品の再販や製品寿命の延長を通じてこの取り組みを後押しした。

 この基盤をもとに、ロペスは循環型ビジネスモデルへの戦略的ピボットを加速させ、サステナビリティを単なるコンプライアンスではなく、再創造の触媒として位置づけた。たとえば、英国で自転車向けに試験導入した買い取りプログラムを、フィットネス、ウォータースポーツ、キャンプ用品へと拡大し、20カ国以上でレンタルや修理サービスを拡充した。こうしたパーパスを伴うピボットは、外部からの規制圧力をイノベーションに転換し、デカトロンの長期的な競争力、信頼性、サステナビリティ分野でのリーダーシップを強化した。

 市場や社会の変化が数カ月単位で起きる時代に、2~3年という期間は迅速だが持続可能な変革のペースといえる。成功する組織はコアバリューに軸足を置きながら、その価値観を制約としてではなく、創造性と一貫性のある適応のための空間として活用しながら、戦略を迅速に適応させる。

 重要なのは、変わるものと、けっして変わらないものを見極めることだ。研究が示すように、真のピボットとは、単に素早い方向転換ではない。価値観に沿った慎重な意思決定であり、企業の中核的なアイデンティティを失うことなく、より有望な道へと資源を再配分するためのものだ。これがジム・コリンズとジェリー・ポラスの言う、「中核を守りながら進歩を促す」ことだ。

ピボットの問い

 いま、どの戦略的ピボットあるいは戦術的ピボットが必要なのか。その動きを価値観で支え、整合性を失わずに迅速に適応するにはどうすればよいか。

4. 革新的なアイデアや創造的な解決策を生み出すためにチームメートに頼る

 複雑な問題に直面したCEOは、チームの知恵を動員して創造的なアイデアを引き出し、新たに生じた課題の新たな対処法を考える代わりに、自分一人で解決しようとしがちだ。しかし、今日の課題は、意思決定を実行に移すためだけでなく、イノベーションや独創的な考え方を育むために、チームメンバーと協力することが必要になる。

 筆者(ビル・ジョージ)は、ベストバイの経営陣からその実践を学んだ。2020年3月に新型コロナウイルスの影響が明らかになると、同社のCEOコリー・バリーはただちに経営陣を招集し、店舗を休業して社会不安が広がる中で顧客にサービスを提供する方法を再定義した。そして、数日のうちに1000店以上を休業し、約5万1000人の時給制従業員を一時帰休させた。

 それでもバリーは、事業の縮小や危機が通り過ぎるのを待つといった後退ではなく、単純だが触媒となる問いをエグゼクティブチームに投げかけた──どうすれば安全に顧客サービスを提供し続けることができるか。

 答えは大胆だった。すべての店舗をフルフィルメントの拠点に転換し、オンライン販売にシフトして、オンラインで注文した家電製品を車から降りずに受け取れるカーブサイドピックアップを全国規模で導入したのだ。

 バリーは店舗責任者に権限を委ね、地域の市場に合わせて実装を調整し、迅速な実行のために全面的な意思決定権を各チームに与えた。顧客の最も近くで働く人々を信頼して、リアルタイムでモデルを適応させたのだ。この分散型の意思決定は、パンデミック下で彼女の象徴的なリーダーシップ手法となり、数百のコミュニティで迅速な実験と学習を可能にした。

 ベストバイはカーブサイドピックアップとフルフィルメントの変革をわずか48時間で展開し、販売モデルをほぼ一夜で転換した。その結果、在宅勤務やデジタル学習、ホームエンタテインメントの需要急増に応えることができ、ウォルマートやターゲットといった主要な競合相手をしのぐ勢いで売上げを回復させた。

 困難な問題解決や創造的解決策を考えるうえで最適なのは、チームで取り組むことだ。すべてを自分でやろうとするのではなく、チームに主導権を与えて機敏に動けるようにする。

ピボットの問い

 このピボットに必要となる革新的なアイデアと創造的な解決策をチームが生み出せるように、どのように導くことができるか。

5. 攻め続け、新しいビジネスモデルで勝つことに集中する

 パーパスのあるピボットは防御策ではない。戦略的変革、イノベーション、新しい発想の出発点になるのだ。

 複雑な外部圧力に直面すると、多くのリーダーはコスト削減や、大規模な投資を伴うプロジェクトの延期、状況が明確になるのを待つといった縮小を選択しがちだ。最近の調査では、CEOの54%が政策や貿易の不確実性を理由に計画していた投資を先送りにしたと回答し、98%が関税を主要な経営上の懸念として挙げている。米国の不透明な関税政策を受けて、約30のドイツ企業を含む数千社がすでに投資計画を延期している。

 こうした様子見の姿勢は、競合相手に行動する余地を与える。大規模な資本投資や買収は実現までに数年かかるため、早めに投資して次の機会に備えるほうが賢明な場合が多い。

 マイクロソフトCEOのサティア・ナデラは2019年に生成AIに賭けると決めて、複数の資金調達ラウンドを通じて最終的に130億ドル以上をオープンAIに投じた。投資家や規制当局が新興AIモデルの収益性や安全性、制御可能性に疑問を呈しており、さらに、急速にAI統合を進めるグーグルとの激しい競争と、独占的な市場地位に対する反トラスト法の厳しい審査という二重の圧力に直面している時期の決断だった。

 2023年11月にオープンAIの取締役会がCEOのサム・アルトマンを解任すると、ナデラは即座に動き、アルトマンと主要メンバーをマイクロソフトに迎えると発表。一連の混乱は落ち着き(アルトマンは数日でCEOに復帰)、マイクロソフトのAI戦略の勢いは守られた。同時にマイクロソフトはコパイロットを自社のエコシステム全体に展開し、「Microsoft 365」をはじめとするアプリに生成AIが導入された。

 2024年から2025年にかけて、ナデラはソフトウェア投資とインフラへの投資を組み合わせて展開した。AIとクラウド容量にドイツで32億ユーロ、スペインで21億ドル、マレーシアで22億ドルを投資すると発表。さらに、ブラックロック、グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ、MGX(のちにエヌビディアとxAIも参加)と「グローバルAIインフラ投資パートナーシップ」を立ち上げ、データセンターの建設とエネルギーシステムの構築に向けて初期出資300億ドル、プロジェクト債務を含めて最大1000億ドル規模を目指している。

 これらの動きは、地政学、規制、エネルギー供給をめぐる不確実性が高まる中で行われ、マイクロソフトの「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というミッションを前進させた。

 将来の成長に投資する最適な時期は、状況が良好な時だけではない。不確実性や景気後退の時期こそ重要なのだ。最も効果的なCEOはこれを実践するために、技術、顧客行動、規制の変化に注目して新たな価値創造の道を見出す。

 みずからの価値観を基盤とし、それをピボットの軸足としてだけでなく、戦略的選択肢を広げる創造のエンジンとして機能させる。それにより、他社が後退する時も、イノベーションと人材と長期的な能力に資源を再配分して攻勢に出ることができる。新たな機会を探求し、戦略的賭けを支持し、長期的な能力を開発することを通じて、市場が回復したときに急成長する態勢をつくるのだ。短期目標の管理ではなく、時間をかけて優位性へと成熟する意思決定に集中する。そうすれば回復局面が訪れたときは、すでに新しい製品、新しいサービス、勢いの準備が整っている。

ピボットの問い

 不確実性を次の優位性に転換するために、いま、主導できる大胆なピボットは何か。

リーダーシップの新たな基準

 混乱の時代には多くのリーダーが後退する。イノベーションを止めて、大胆な動きを先延ばしにし、明確な方向性が見えるのを待って、最も大きな声に従おうとする。しかし、そのような時こそ躊躇してはならない。パーパスと価値観に基づくピボットで前進し、勇気と知恵を示す時なのだ。

 今日のリーダーシップに必要なのは決断力だけではない。深みが求められる。最も効果的なリーダーや組織は、静止しているのではなく、確かな基盤の上に立っている。自分たちが何者で、何を体現し、なぜリーダーシップが必要なのかを知っている。その明確さがあるから、足場を失わず迅速に行動できる。

 ピーター・ドラッカーは警告した。「激動の時代に最も危険なのは、激動そのものではなく、昨日の論理で行動することだ」。つまり、激動は脅威ではない。試練である。困難は機会であり、混沌は力量を示す舞台だ。

 パーパスのあるピボットは、単なる戦術ではない。一貫性と、人格と、信念を持って導くためのリーダーシップのあり方だ。リーダーがパーパスと価値観を基盤として、希望を持って前進し続けるためのマインドセットなのだ。変化が止まることのない世界において、それは最も明確で強靭な前進の道であり続ける。


"5 Ways Organizations Can Pivot with Purpose," HBR.org, December 03, 2025.