NFLの名キッカーに学ぶ、プレッシャーに動じない3つの戦略
HBR Staff/Justin Casterline/Getty Images
サマリー:NFLキッカーのブレット・マハーは、輝かしい記録と屈辱的な失敗の両極を経験し、12回もの解雇を乗り越えてきた選手である。筆者は彼へのインタビューを通じ、極度のプレッシャー下で冷静さとレジリエンスを保つ手法が、現代のビジネスリーダーにも応用可能であることを発見した。本稿では、周囲の雑音を遮断し、結果ではなくプロセスに集中することで、困難な状況下でも安定したパフォーマンスを発揮するための戦略を紹介する。

アスリートの手法はリーダーにも応用できる

 2024年に引退したNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のキッカー、ブレット・マハーは、そのキャリアにおいて2つの記録を保持していた。一つは、1シーズンにおける60ヤード以上のフィールドゴール成功数(最近まで最多記録だった)、もう一つは、1試合におけるエクストラポイントの最多失敗数だ。10年間にわたるプロ生活で、彼はフィールドゴール成功率79.9%、エクストラポイント成功率95.5%という数字を残した。だがその一方で、計12チームから解雇を言い渡されている。

 極限のプレッシャーの下で戦い、浮沈を繰り返し、激しく非難された時もあれば称賛された時もあり、「最高」と「最低」の両方の評価を受けた人物から、私たちは何を学ぶことができるだろうか。

 研究者であり教育者でもある筆者は、リーダーがいかにストレスを管理し、成功と失敗の両方にどう向き合うかを研究しており、その関心からマハーに注目した。何万人もの観衆、チームメートやオーナー、ファンが見守る中でNFLのフィールドに立ち、自身の役割を完璧に遂行することを求められるという状況は、冷静さ、集中力、そしてレジリエンスを維持するための格好のケーススタディである。マハーへのインタビューを通じて明らかになったのは、コーチやスポーツ心理学者から学んだものも含め、彼の戦略の多くがプレッシャーにさらされているビジネスパーソンにも応用できるということだ。

雑音を遮断する

 キャリアの初期、マハーは観衆や批評家の反応を気にしすぎていた。フィールドゴールやエクストラポイントを決めた際の歓声、パフォーマンスに対する肯定的なフィードバックは自信を与えてくれたが、失望の溜息や試合後の批判は、彼を打ちのめした。そのどちらもが、日々の練習や努力、上達するポテンシャルではなく、結果に執着する要因となった。

 コーチらの助けを借りて彼が学んだのは、雑音を無視し、ボールを蹴る瞬間もその後も(結果がどうあれ)、次に改善できることに集中することだ。著述家のサラ・ルイスは、このように意図的に批判を封じ込める行為を「ブランクネス」(空白状態)と呼んでいる。これは、劇作家や画家などの高度なスキルを持つ表現者が、周囲から切り離された「離脱の時間と内省の時間」をつくり、自身の技巧を磨くために実践する方法だ。

 リーダーも同様に、自分だけの空間の中にいるイメージを持つことで、有益でない批判や疑念、さらには自分自身の内なる声を遮断し、目の前の業務や意思決定に必要な事柄だけに意識を集中させることができる。

結果ではなくプロセスを優先する

 マハーが実践していたもう一つの習慣は、「キックに区切りをつける」ことだ。ボールがゴールポストの間を通るか外れるかを確認した後ではなく、ボールが足から離れた瞬間に、比喩的なピリオドを打つのだ。パフォーマンスの良し悪しにかかわらず、ボールを放した瞬間にそれは完結し、次のキックに備えるために強制的にリセットされる。彼の意識は、練習通りの技術がいかに正確に実行されたかのみに向けられ(満足度もそこに由来する)、このプロセスを繰り返すことで、顔を上げずともボールの行方がわかるようになった。

 アスリートではない人も、プレッシャーのかかる業務や重大な意思決定を行う際、証拠の検討、フィードバックの収集、利害の分析といった正しいステップを踏むことで、プロセスを優先することができる。リーダーシップの専門家であるJ. P. パウリウ=フライは、これを、予測不可能なアウトプットではなく、みずからコントロールできる「インプットの誠実さ」に集中することだと述べている。