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職場での学習の機会が失われている
最近、あるワークショップで、ある上級幹部が筆者にこう言った。「この新しい時代に、人々がどのように学ぶようになるのかは、誰にもわからない」
同じような声は、業界を超えて聞かれる。AIがタスクやワークフローを変えていることは理解しているが、人々が専門性を身につけ、共感を育み、仕事を通してアイデンティティを形成するという成長のプロセスを、AIがどのように変えているのかについては、まだあまりわかっていない。
人間の成長と学習において、技術革新の速度は、私たちがそれを十分に理解する能力をすでに上回っている。このような時、確信を持つことは難しい。しかし、リーダーシップチームが難しい問いを投げかけ、お互いの意見にオープンに耳を傾ける機会を持つことは可能だ。私はこれを「意味を見いだすための会話」(sense-making conversations)と呼んでいる。
筆者は最近のアドバイザーや教員としての活動で、こうした会話を促す4つの「挑発的な問い」を考案した。すべてのリーダーがこのような会話を行うべきだと考えている。それらは答えではなく、プロンプト──組織内の人材が学習したり、成長したりする環境を、AIがどのように変えているかを、リーダーが探るための手段──だ。
AIによって習熟への道のりが消えてしまったら、何が起こるのか
まず、上級幹部たちにみずからの習熟の道のりを語ってもらう。彼らは、時に残酷なほど率直に、膨大な実践、強烈な洞察を得た瞬間、失敗から得た知恵、フィードバックを与えてくれたメンターについて語る。彼らの専門性、レジリエンス(再起力)、判断力、そしてアイデンティティを形作ってきたのは、すべて経験的な学びによるものだ。
次に、こうしたキャリアの初期段階の仕事をAIが担った場合に何が失われるのかを考える。これに対する回答の傾向として、AIが可能にする「近道」により、自然な習熟の道のりや、専門性を生み出す望ましい困難を損なっているのではないかという懸念がある。
ある銀行のベテラン幹部は「うちの若手アナリストたちが苦労することがなかったら、そして、私のように長時間を費やさなかったら、彼らは本当に思考力を身につけるいことができるのだろうか」と、言った。多くの人々は、みずからのキャリアを形作った経験──実践、挫折、スキルアップの時間──が、技術によって失われることを心配している。AIが戦略メモを作成し、データを分析し、アイデアを20個出してくれるなら、かつて習熟への道のりを形づくっていた反復と学習という、時間のかかる厳しい過程はどうなるのか。
その能力開発上の影響がいま明らかになりつつある。AIは間違いなく学習を加速させるだろう。しかし、加速された学習は能力開発と同じではない。加速はアウトプットを増やすが、能力開発はアイデンティティを変容させる。この2つは決して置き換えられるものではない。
こうした会話の目的は、AIに習熟を育む経験をどこまで委ねるべきかを議論することではなく、組織の学習の中心に人間の能力開発をどう保ち続けるかを議論することである。私たちはこれらの経験を守るのか、それとも生産性という絶対権力の下に屈してしまうのか。






