リーダーが感情に賢く向き合うための5つのステップ
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サマリー:共感は現代のリーダーにとって欠かせない資質だが、判断を欠いた実践は、リーダーの消耗や部下の誤解を招きかねない。効果的なリーダーシップには、状況に応じて最適な反応を選ぶ「賢い共感」が求められる。本稿では、リーダーが賢い共感を実践するための5つのステップを紹介する。

リーダーは部下の感情にどう反応すべきか

 この数十年ほど、以前よりもソフトで、部下の感情に敏感に反応するリーダーシップ・スタイルへ移行する傾向が顕著である。このようなリーダーシップ・スタイルが望ましい証拠として、経験的なエビデンスと定量的なエビデンスとがいずれも豊富にある。リーダーが部下に対して真の感情面のサポートを提供できると、部下たちの仕事ぶりが改善し、会社の業績も上向くことがわかっているのだ。

 働く人たちも、そうした感情面のサポートを期待するようになっている。この点で支援を受けられていないと感じている従業員は、支援を受けていると感じている従業員に比べて離職率が高い。あるレポートによると、働き手の立場に立ってものを考えられない企業は、従業員の退職に伴うコストで年間1800億ドルを失うリスクがあるとのことだ。

 しかし、このようにリーダーシップ・スタイルの変化が進むとともに、困惑して途方に暮れているリーダーも少なからずいる。部下に対して共感を示すことの必要性は理解しているけれど、それぞれの瞬間にどのような反応を示すのが最善なのかがわからずに苦労しているのだ。

「部下の感情面の状態を確認するのは、私の役割なのだろうか」「もし部下からネガティブな感情を打ち明けられたとして、私が取れる最善の振る舞いは、ただ話を聞くことなのか、それともなんらかの助言をすることなのか」──こうした問いに頭を悩ませているリーダーも多いかもしれない。

 このような面でリーダーが混乱に陥ると、リーダーたちがまさに恐れている事態が起こりかねない。部下たちが職場でサポートされていない、関心を払われていないと感じるようになるおそれがあるのだ。

 こうしたことが起きるのは、他人の感情への反応の仕方に唯一絶対の正解が存在しないことが理由だ。感情とは単純なものではなく、なにが適切な反応かは状況によって変わる。そこで、筆者らは最近、リーダーたちが部下の感情にどのように対処しているのか、そして、どのような反応が最も有効なのかを明らかにするための研究に着手した。

 具体的には、筆者らがこれまで10年ほどにわたって取り組んできた感情の心理学に関する研究の成果と、何百件もの職場でのコミュニケーションを観察してきた経験を基に、有効性が検証されている「状況判断タスク」(SJT)を考案した。これは、リーダーが部下たちの感情にどのように向き合っているかを評価することを目的としたテストだ。

 このテストを行ったところ、驚くべき結論が得られた。共感は常に好ましい結果を生むとは限らず、時には不適切な使い方をされる場合もあるとわかったのだ。リーダーが共感の正しい用い方を選択できているかどうかが何よりも重要なのだ。

 適切に共感を用いることは、リーダーが直面する難題の中でもとりわけ手ごわい課題の一つだ。これをうまく実践するためには、善良な意図を持って行動するだけでは十分でない。スキルと洞察力が必要とされるし、自分の足場を揺るがすことなしに、他の人たちの感情と関わる能力も求められる。この難しい課題に挑むリーダーたちを支援するために、筆者らは最新の研究を土台に実践的なフレームワークを開発した。

 まず、はっきり述べておきたいことがある。筆者らが目指しているのは、あなたが「より共感を発揮できる」ようにする手助けをすることではない。狙いは、あなたがより洞察的に共感を発揮できるようになる後押しをすることだ。その能力を筆者らは「賢い共感」(wise empathy)という言葉で表現している。

 本稿では、最新の研究を基に「賢い共感」の概念を紹介し、リーダーシップを成功させるうえでそれがなぜ重要なのかを説明し、どのようにそれを実践すれば、リーダー自身とフォロワーたち、そして組織全体に好ましい影響をもたらせるのかを示す。

好ましい反応の仕方は状況によって変わる

 リーダーたちはたいてい、共感を示す時、二つの方法のいずれかを実践している。一つは、「シェア」のアプローチだ。相手が抱いている感情を自分も引き受けるのである。もう一つは、「ケア」のアプローチだ。相手の感情への共感を表現し、そのうえで問題解決に向けて行動志向の立場を取る。