問題をリフレームし、問題解決のレベルを引き上げる

 人間中心イノベーションのプロセスの特徴をひとことで言えば、状況をより広い範囲で捉えることと、問題の抽象レベルを上げることで問題をリフレームすることだといえます。このプロセスを、「コンビニ弁当」の例を使って考えてみましょう。

 「コンビニ弁当」の顧客満足度を高めたいチームが、コンビニ弁当を食べている場面を観察し、「セロハンテープが切れにくい」という問題が抽出されたとします。改善や改良の場合、「セロハンテープが切れにくい」問題に対して「セロハンテープを切れやすくする」など、問題をそのまま受け取ってアイデアを検討していきます。しかし、直接観察される問題をそのまま解決しても、それが長期的な差別化をもたらすことは稀です。

 人間中心イノベーションでは「セロハンテープが切れにくい」という枠を超えて、問題をより広い範囲で捉えます。コンビニ弁当が極端に好きな人/極端に嫌いな人の考えや気持ち、弁当にまつわる最高の思い出/最低の思い出など、スコープを広げて顧客の欲求や願望を理解することで、「コンビニ弁当」について、これまでとは異なる状況が見えてきます。そこから問題を抽象化し、リフレームすることによって、誰もが持っている本質的な欲求に到達します。例えば「弁当を食べて幸せな気分になる」といった隠れたゴールが定義できるかもしれません。

 既成の枠を超えるゴールを設定することで、コンビニ弁当を使った革新的な価値提案が可能になります。また、コンビニ弁当単体だけでなく、サービスやプラットフォームレベルの価値提案の余地が生まれます。「セロハンテープが切れにくい」といった個々の問題をバラバラに解決するのではなく、問題をリフレームすることで、顧客経験全体を対象に問題解決できるようにする。人間中心イノベーションが目指すアプローチのポイントはここにあります。

 

1.馴れ親しんだプロセスをゼロベースで見直す
2.問題を分解するのではなく、より大きな問題に引き上げる
3.製品単体ではなく、システムとしてイノベーションを組み立てる

 

あなたの組織のイノベーションのプロセスをチェックしてみてください。

・自社では、誰が、どのようなプロセスを経て飛躍的イノベーションを生み出しているでしょうか?
・漸進的なイノベーションのプロセスを使って飛躍的イノベーションを管理していないでしょうか?
・人間中心イノベーションのプロセスを組み込むとしたら、どのように組み込むことが可能でしょうか?