ドラッカーを「マネジメントの父」たらしめる名著『マネジメント──課題、責任、実践』
サマリー:ドラッカーの著作を読んでみたいけれど、数多ある中からどれを読めばよいのか、迷っている人というも少なくないだろう。そんな方にまずおすすめなのが、ドラッカー著作の大多数を翻訳した上田惇生先生がすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介した『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』だ。本連載では、本書の内容を抜粋し、再編集したものを掲載する。今回は、ドラッカーが「マネジメントの父」と呼ばれる理由にもなったといえる名著『マネジメント──課題、責任、実践』について紹介する。

『マネジメント──課題、責任、実践』
原題:Management:Tasks,Responsibilities,Practices(1973)

名著集『マネジメント——課題、責任、実践〈上〉』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2008)

【注】最新版は2008年刊行の名著集に収録。入手可。

『マネジメント——課題、責任、実践〈上・下〉』(野田一夫、村上恒夫監訳、風間禎三郎、久野桂、佐々木実智男、上田惇生訳、ダイヤモンド社、1974)

『マネジメント』(犬田充、村上和子訳、自由国民社、1975)

『マネジメント——務め、責任、実践〈Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ〉』(有賀裕子訳、日経BP社、2008)

 名著集『マネジメント——課題、責任、実践〈上〉』『マネジメント——課題、責任、実践〈中〉』『マネジメント——課題、責任、実践〈下〉』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2008)

主な内容 

 マネジメントとは、企業だけでなく、政府機関、大学、病院、PTA、自治会など、すべての組織に欠かせないものである。組織の社会的使命は何か、使命を果たすためにどう組織の体制をつくるかなど、マネジメントの本質的な課題と役割、その実践方法を網羅している。

 特筆すべきは、マネジメントに欠かすことのできない資質として「真摯さ」を掲げたことである。

 あらゆる組織に社会的責任が問われる昨今、本書『マネジメント——課題、責任、実践』の重要性はさらに輝きを増しており、大学やビジネススクール、経営セミナーの教科書として使われている。

目次

〈上巻〉
序論 マネジメント——ブームから成果へ
 第1章 マネジメントの登場
 第2章 マネジメント・ブームの教訓
 第3章 マネジメントへの挑戦

第1部 マネジメントの役割
 第4章 マネジメントの役割
 第5章 事業のマネジメント:シアーズ物語
 第6章 企業とは何か
 第7章 目的とミッション
 第8章 目標:マークス&スペンサー物語
 第9章 目標の設定とその実行
 第10章 企業家的スキルとしての戦略計画
 第11章 多元社会の到来
 第12章 公的サービス機関の不振の原因
 第13章 例外的存在とその教訓
 第14章 公的サービス機関の成功の条件
 第15章 新しい現実
 第16章 仕事と働くことと働く人たち
 第17章 仕事を生産的なものにする:仕事の分析とプロセスへの統合
 第18章 仕事を生産的なものにする:管理手段とツール
 第19章 働く人と働くことのマネジメント
 第20章 成功物語
 第21章 仕事への責任
 第22章 雇用と所得
 第23章 人こそ最大の資産
 第24章 マネジメントと社会
 第25章 社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献
 第26章 社会的責任の限界
 第27章 企業と政府の関係
 第28章 プロフェッショナルの倫理:知りながら害をなすな

〈中巻〉
第2部 マネジメントの方法
 第29章 マネジメントの必要性
 第30章 マネジメントとは何か
 第31章 マネジメントの仕事
 第32章 マネジメントの仕事の設計
 第33章 マネジメント教育
 第34章 自己目標管理
 第35章 ミドルマネジメント
 第36章 成果中心の精神
 第37章 意思決定
 第38章 コミュニケーション
 第39章 管理手段
 第40章 マネジメント・サイエンス
 第41章 組織についての新しいニーズ
 第42章 組織の基本単位
 第43章 組織の基本単位の位置づけ
 第44章 組織の設計原理と組織の仕様
 第45章 仕事中心の組織:職能別組織とチーム型組織
 第46章 成果中心の組織:連邦分権組織と擬似分権組織
 第47章 関係中心の組織:システム型組織
 第48章 組織構造についての結論

〈下巻〉
第3部 マネジメントの戦略
 第49章 ドイツ銀行物語
 第50章 トップマネジメントの仕事
 第51章 トップマネジメントの構造
 第52章 取締役会
 第53章 規模の適切さ
 第54章 小企業のマネジメント、中企業のマネジメント、大企業のマネジメント
 第55章 規模のマネジメント
 第56章 多角化への誘因
 第57章 多角化の核
 第58章 多角化のマネジメント
 第59章 グローバル化のマネジメント
 第60章 成長のマネジメント
 第61章 イノベーションのマネジメント

結論 マネジメントの正統性

登場する主な企業・組織

 シアーズ・ローバック、IBM、三菱グループ、GM

登場する人物

 フレデリック・テイラー、エルトン・メーヨー、J. K. ガルブレイス、トーマス・ワトソン・ジュニア、ヘンリー・フォード、アルフレッド・スローン

取り上げられているコンセプト、理論、手法

 X理論、Y理論、目標管理、チーム型組織

ドラッカーが「マネジメントの父」と呼ばれる理由

 『現代の経営』で初めてドラッカーと出会った私が彼と“再会”したのは、アメリカ大陸横断無銭旅行から帰って大学に復学し、経団連事務局に就職してからのことでした。

 経済団体に就職したのだから、経済についての英語の本を翻訳して勉強しなさいと先輩に言われ、翻訳チームに入って最初に訳したのが、ドラッカーがのちに『創造する経営者』で推奨する『危機に立つ大企業』(R. A. スミス著、1965年)です。

 この本が出版されて1カ月後、今度は一人で訳してみないかと編集者がもってきたのが『若き経営エリートたち』(W. ガザーディ著、1966年)でした。なんと推薦の言葉を書いていたのがドラッカーで、それが私が訳した最初の彼の文章となったのです。

 その後、ドラッカーが厚い本を書いたので、チームで訳すから入らないかと誘われ、野田一夫先生をヘッドとするチームへ入れていただくことになりました。それが、原書800ページ、訳書1300ページになる『マネジメント——課題、責任、実践』だったのです。

 この膨大なページ数からもわかるとおり、『マネジメント——課題、責任、実践』は、ドラッカーがコンサルティングで蓄積したマネジメントの集大成ともいえるもの。しかも『現代の経営』から20年、その間に中身は微妙に変化しつつも、シンプルでより高度な理論へと進化しています。

 まず、冒頭でマネジメントについて、「自らの組織をして社会に貢献させるうえで3つの役割がある」とし、「自らの組織に特有の使命を果たす」「仕事を通じて働く人たちを生かす」「自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する」と述べています。

 ただし、「事業」「人」「社会」という3つの役割を掲げるだけでは、成果をあげるマネジメントはできません。それどころか、社会や経済はどんな企業も一夜にして消滅させる力をもっています。社会や経済に必要な、生産的な仕事をし続けなければなりません。

 そこでドラッカーが有用だと考えたのが、具体的な目標でした。「マーケティング」「イノベーション」「生産性」「人材」「物的資源」「資金」「社会的責任」、そして「条件としての利益」です。マネジメントの役割を具体的に努力できる各論に落とし込む。それが、ドラッカーが「マネジメントの父」と称されるに至ったゆえんでしょう。

 また、本書『マネジメント——課題、責任、実践』には心を打つ名言がたくさん登場します。特に「知りながら害をなすな」は、聞いたことがある人も多いのではないかと思います。

 この「知りながら害をなすな」は、ギリシャの名医ヒポクラテスの誓いの言葉で、プロフェッショナルの責任を問うものです。

 「プロたる者は、医者、弁護士、マネジャーのいずれであろうと、顧客に対して、必ずよい結果をもたらすと約束することはできない。最善をつくすことしかできない。しかし、知りながら害をなすことはないとの約束はしなければならない。顧客となる者が、プロたる者は知りながら害をなすことはないと信じられなければならない。さもなければプロの行うことの何も信じられない」

 プロとしての責任、プロとしての矜持は、誰かに問うものではなく自らに問うもの。時代を超え、常に自らに返ってくる言葉です。

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[著]上田 惇生
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