ドラッカー『非営利組織の経営』は、すべての組織の教科書である
サマリー:ドラッカーの著作を読んでみたいけれど、数多ある中からどれを読めばよいのか、迷っている人というも少なくないだろう。そんな方にまずおすすめなのが、ドラッカー著作の大多数を翻訳した上田惇生先生がすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介した『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』だ。本連載では、本書の内容を抜粋し、再編集したものを掲載する。今回は、長く読み継がれるべき非営利組織のバイブル『非営利組織の経営』について紹介する。

『非営利組織の経営』
原題:Managing the Nonprofit Organization(1990)

名著集『非営利組織の経営』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007)

【注】最新版は2007年刊行の名著集に収録。入手可。

『非営利組織の経営——原理と実践』(上田惇生、田代正美訳、ダイヤモンド社、1991)

名著集『非営利組織の経営』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007)

主な内容 

 医療団体、学校、病院、コミュニティ団体……非営利組織(NPO)の社会における役割は増す一方である。これら非営利組織の発展こそが、1950年代以降のアメリカにとって真に誇るべき偉業だったと、ドラッカーは本書『非営利組織の経営』で振り返っている。

 非営利組織のマネジメントは、企業よりも難しい。利益など結果を示す成績表がない中で、何をもって使命を果たしているといえるのかを把握しなければならない。ボランティアにしても報酬を得ていないからこそ、自らを満足させ、成長させるためのセルフ・マネジメントが不可欠となる。

 言い換えれば、非営利組織にこそ、ミッション、リーダーシップ、マネジメントの本質がある。その意味で本書『非営利組織の経営』は、すべての組織の教科書ともいえる。

目次

第1部 ミッションとリーダーシップ
 第1章 ミッション
 第2章 イノベーションとリーダーシップ
 第3章 目標の設定:ヘッセルバインとの対話
 第4章 リーダーの責任:マックス・ドプリーとの対話
 第5章 リーダーであるということ

第2部 マーケティング、イノベーション、資金源開拓
 第1章 マーケティングと資金源開拓
 第2章 成功する戦略
 第3章 非営利組織のマーケティング戦略:フィリップ・コトラーとの対話
 第4章 資金源の開拓:ダトレイ・ハフナーとの対話
 第5章 非営利組織の戦略

第3部 非営利組織の成果
 第1章 非営利組織にとっての成果
 第2章 「してはならないこと」と「しなければならないこと」
 第3章 成果をあげるための意思決定
 第4章 学校の改革:アルバート・シャンカーとの対話
 第5章 成果が評価基準

第4部 ボランティアと理事会
 第1章 人事と組織
 第2章 理事会とコミュニティ
 第3章 ボランティアから無給のスタッフへの変身:レオ・バーテルとの対話
 第4章 理事会の役割:デヴィッド・ハバードとの対話
 第5章 人のマネジメント

第5部 自己開発
 第1章 自らの成長
 第2章 何によって憶えられたいか
 第3章 第二の人生としての非営利組織:ロバート・バフォードとの対話
 第4章 非営利組織における女性の活躍:ロクサンヌ・スピッツァーレーマンとの対話
 第5章 自らを成長させるということ

登場する主な企業・組織

 シアーズ・ローバック、GM、IBM

登場する人物

 ウィンストン・チャーチル、シェイクスピア、フランクリン D. ルーズベルト、トーマス・ワトソン・ジュニア、テッド・ハウザー、フィリップ・コトラー、ダトレイ・ハフナー、メアリー・パーカー・フォレット、アルバート・シャンカー、ブルーノ・ワルター、ロバート・バフォード、ロクサンヌ・スピッツァー=レーマン

取り上げられているコンセプト、理論、手法

 ミッション・マネジメント、チーム・マネジメント、セルフ・マネジメント

営利と非営利を区別しない、しかし同じものとして片づけない

 企業、乱気流、企業家精神、イノベーションと、ドラッカーはマネジメントの分野を次々と広げていきました。

 もともと、マネジメントは事業を行い経済的な成果をあげること、スタートラインは営利を目的にしたところにありました。しかしドラッカーは、経済を超えた「非営利」の世界にもマネジメントはあるはずだと考えます。

 そして、世界がグローバル化すればするほど人はコミュニティを必要とするとし、非営利組織の役割の増大を予告したのです。「これからは非営利組織がもっと大きくなっていかなければいけない。その数が横ばいなのは、アメリカ社会の恥だ」とまで言い切りました。

 ドラッカーは会社に勤める人も、非営利団体に所属する人も区別をしませんでした。たとえば、本書『非営利組織の経営』に挙げられた以下のような姿勢は、どの世界でも必要とされます。

 「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である」

 「仕事を変え、キャリアを決めるのは自らである。自らの得るべきところを知るのは自らである。組織への貢献において、自らに高い要求を課すのも自らである。飽きることを自らに許さないよう予防策を講じるのも自らである。挑戦し続けるのも自らである」

 ただし、営利と非営利をまったく同じものとして片づけることもしませんでした。そして、非営利組織は利益という結果を求めないからこそマネジメントすることが難しく、それゆえマネジメントが必要だと考えたのです。実際、非営利組織には、営利組織にはない苦労があります。それはいかにして継続的に寄付を集めるかということだったり、ボランティア精神だけでは成り立たないということだったり。

 本書『非営利組織の経営』には、こんな話も出てきます。会社員に「会社で働きすぎだから、ボーイスカウトでボランティアをしなさい」というと納得するのに、牧師さんに「病院の理事をしなさい」というと、忙しいから無理だというのです。

 こうした実情は、実際に非営利組織にかかわらなければわかりません。ドラッカー自身、教会やガールスカウトをはじめ、多くの非営利団体(NPO)のコンサルティングを無料で行っていました。

 本書『非営利組織の経営』は、非営利組織のマネジメントに必要なことはすべてが書いてあるという、長く読み継がれるべき非営利組織のバイブルです。『経営者の条件』とも重なる部分の多い、万人に役立つ方法論なのです。

 ここで、ドラッカーファンの間で有名なフレーズ「何によって憶えられたいか」のくだりを紹介しましょう。

 「私が13歳のとき、宗教の先生が『何によって憶えられたいかね』と聞いた。誰も答えられなかった。すると、『答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ』といった」

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