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常に成果をもたらすCEOは、何が優れているのか
プライベートエクイティ(PE)の投資先企業は、猛烈な時間的プレッシャーにさらされる。CEOは、限られた時間で大きな価値を生み出し、野心的な成長目標を達成し、社内外の圧力という地雷原を切り抜けることを期待される。このため、CEOの半分以上が徹底的な審査をクリアし、多額の報酬を約束され、深遠なリーダーシップ経験があるにもかかわらず、期待に応えられず、投資期間中に交代を余儀なくされる。
そこで素朴な疑問が浮かぶ。一貫して素晴らしい成果をもたらすCEOと、期待に応えられないCEOとでは何が違うのか。筆者らは、この問いを起点として研究を行い、それが近著The 5x CEO(未訳)へとつながった。
単に事例だけでなく、優れた成績を持続的に上げるCEOのパターンを見つけるため、筆者らは2年間に及ぶ調査研究を実施した。具体的には、PE投資先企業のCEOや投資家を対象に、計75件以上の詳細な聞き取り調査を行った。PEの活動を延べ900年分以上カバーした格好だ。
特に注目したのは、「スーパーパフォーマー」グループだ。これに該当するCEOは53人おり、彼らが率いる企業の投下資本倍数(MOIC)は平均6.2倍と、典型的な業界目標の2倍以上だった。こうしたリーダーの際立った強みは、1つだけではない。5つのリーダーシップ分野において卓越した能力を発揮していることがわかった。彼らは方向性を決める時や社内の足並みを揃える時、そして実行を牽引する時に、一貫してそのアクションを取っていた。
こうした規律が重要であることは何ら驚きではない。筆者らの調査対象となった最高に優れたCEOの特徴は、規律を完全に自分のものにし、それを一貫して活用していることにあった。PEの世界では、成果は行動とテクニックを意識的に組み合わせることで得られる。なかでも、最高のCEOにおいて際立っていた行動は5つある。
1. 戦略的な明確性により組織の足並みを揃える
最高の成果を上げるCEOは、戦略を組織のトップ層に留めておかず、投資理念を3~5年の戦略計画に変換することに優れている。また、組織の最重要目標や重点課題、価値創造の原動力になるものを明確に定義して伝えたうえで、組織全体の足並みを揃え、それらに集中させる。そのような組織では、取締役会から現場まで誰もが、自分の仕事が価値創造にどのように結びついているかを理解している。
最高のCEOは、戦略を可視化して定着させるために、複雑な目標をわかりやすいメッセージに簡素化し、あらゆる場で繰り返し、オペレーションに組み込んでいた。また、戦略的な明確化とは、四半期の会議で話題にすることではなく、常に意識すべきものであることを理解している。さらに、明確性は部門や地理を超えた共通言語となり、混乱や不一致を最小限に抑えることも認識している。明確性は、組織の足並みを揃えるための手段であるだけでなく、集中とスピードを支えるガードレールにもなる。ただし、優秀なCEOは、明確性と確実性を混同しない。不変なことと、変わりうることについて透明性を確保することで、曖昧な状況でも信頼感を醸成している。
今回、調査の対象となった、あるPE投資先企業(データ分析企業)では、CEOが就任から3カ月以内に、投資理念を1ページの3年計画にした。そして、そのビジネスの存在意義と、勝利の具体的なイメージ、そして最も重要な戦略的優先課題を2つ、3つ示した。それぞれに対して、具体的な目標と評価基準、イニシアティブが結びつけられている。
そこで際立っていたのは、枠組みそのものではなく、その枠組みが組織に深く浸透していたことだ。CEOは次のように語っていた。「経営幹部から受付係まで全員が、その計画のどこに自分が位置し、どのような責任を担い、持続可能な会社の構築にどう貢献しているかを理解している」
あなたの組織の戦略的明確性を知るために、次のことを自問してみよう。
・向こう3年間の戦略的優先課題の上位3つが明確に定義されているか。
・チームのすべてのエグゼクティブが、その優先課題を同じように明言できるか。
・取締役会の議論やチームミーティング、イニシアティブ、そして個人の目標は、一つの戦略的な軸に沿っているか。
2. 成長目標に見合った人材を確保する
驚異的な成果をもたらすCEOは、優秀な人材を採用するだけでなく、最も重要なポジションに、ビジネスを拡大できる最高の人材を配置する。そのために早い段階で厳しい判断を下し、リーダーシップチームを強化し、目先の快適さよりも将来の複雑さに備えてチームを編成する。
こうしたリーダーは人材について、規律とデータに基づくアプローチを取る。既存のリーダーを厳格に評価し、難しい人事判断を迅速に下して組織が停滞しないようにする。また、単純に人材の空席を埋めるだけでなく、「あるべき姿とはどのようなものか」を熟知し、即戦力となる業績拡大を牽引するリーダーを迎え入れることにより、組織の基準を引き上げる。人材戦略は価値創造計画に組み込まれており、後づけにしない。
こうしたリーダーは、二歩先回りして組織を設計する。成長に従って対応するのではなく、成長を予見するようなポジションを設けるとともに、後継者選びやリーダーシップ能力開発、文化的適合性を採用や成績管理のプロセスに織り込む。そして「このチームは、我々が目指す会社のために構築されているか」を常に自問する。
あるヘルスケア企業のCEOは、四半期ごとに取締役会と人材レビューを行い、重要ポジションにいるリーダーについては、パフォーマンスと潜在能力、離職リスク、そして後継候補としての準備具合などの観点で評価していた。実行を遅らせたり、利益に影響を与える可能性のある人材関連リスクを、資金面のリスクと同じレベルの厳格さを持って協議し、人材に関する決定を単発の協議ではなく、恒常的なガバナンスメカニズムとして位置づけた。
あなたの展望に見合った人材がいるかどうか調べるために、次のことを自問してみよう。
・次の成長段階で最も重要になるポジションに、トップクラスの人材を配置できているか。
・リーダーを会社のニーズと照らし合わせて客観的に評価し、不足する領域で迅速な改善を図っているか。
・価値を加速させるために、向こう90日間に行うべき人事異動はどれか。
3. インパクトの大きな優先課題に徹底的に集中する
成長と変化の混乱の中で、優れた成果を上げるCEOは、焦点がぶれない。さまざまな取り組みに手を出そうとする誘惑を退け、チームが真に変化を起こすいくつかの「大きな課題」に取り組むよう徹底させる。本当に重要なことのために、時間とエネルギーと資本を温存する。
筆者らは調査で、勇気を持って「ノー」と言えるCEOをたびたび見かけた。彼らは、戦略で重要なのは、優先事項を選択するだけでなく、どの取り組みを実行しないと決めることだと理解していた。また、戦略的明確性を重視して、取り組むべき重点課題を3~5つに限定し、そのことを組織全体に周知した。また、ダッシュボードや「中止・開始・継続」リストといった視覚的なツールを使って焦点を絞り込み、トレードオフを明確に伝えた。
こうした規律は、CEOがどのような時間配分をするかを通じて補強された。優秀なCEOは、戦略的な優先課題を中心にミーティングの進行を変えた。リーダーシップチームのミーティングは、最新情報をアップデートする場ではなく、価値創造計画の進捗状況と直接結びついた決定を下す場になった。売上高やEBITDA(利払・税引・償却前利益)といった遅行指標だけでなく、パイプラインの成長や新規案件の獲得、計画通りの稼働率など重点領域と結びついた先行指標も測定した。最高の成果を上げるCEOは、単に集中力があるだけでなく、脱線や漠然性や約束違反を容赦しない。
「私が知る限り、うまくいっていない企業は皆、焦点を絞れていないことに原因があった」。調査対象者の中で最も成功したCEOの一人であり、PEの投資する小売企業を複数経営する女性はこう語った。彼女に言わせれば、集中とは意図して行うものではなく、規律によってなされるものだ。彼女はこれを、リーダーシップチームとのシンプルな優先順位づけのメカニズムによって強化していた。具体的には、イニシアティブを「いま最も重要なこと」「次に取り組むべきこと」「リストから外すか、次の保留期間まで待つべきこと」の3カテゴリーのいずれかに分類した。これにより明示的なトレードオフが不可欠となり、新たな機会のために実行が希薄になるのを防ぐことができ、優先順位が変わる中でも取締役会との足並みを維持する明確な方法が与えられた。
あなたの戦略的規律を理解するために、次のことを自問してみよう。
・私たちは重要なこと、あるいは緊急事項に時間を割いているか。
・最小限のダメージで明日にもやめられるプロジェクトや会議はどれか。
・会社全体で定期的に集中する点を見直したり再調整したりしているか。
4. アジャイルな運営リズムによって規律ある実行を確保する
今回の研究において、最も優秀なCEOたちは、説明責任を果たすための仕組みやダッシュボード、意思決定の場を設けることで、戦略を実行へと移している。こうしたシステムによって、業績やリアルタイムのフィードバックに基づく軌道修正をするアジリティを維持しながら、勢いを生み出すことができる。
これらのリーダーは毎週、毎月、そして四半期ごとのルーチンを意図を持って実行する。自分が引き継いだオペレーションモデルを所与のものにしない。会社のペースや目標と合致する新しいルーチンを設計し、長期戦略と短期的なアクションを結びつける。また、価値創造計画の進捗を、財務計画並みの厳格さで定期的に追跡・協議されるようにする。実行がうまくいっていない場合は、数カ月後に取締役会で問題が発覚するのではなく、早期に発見し、迅速に是正されるようにする。
こうしたオペレーションの仕組みが重要なのは、経営幹部だけではない。CEOは説明責任を組織内に根づかせて、現場チームに当事者意識を持たせ、問題点を早期に指摘させる。また、チームのために共通のKPI(重要業績評価指標)や、迅速なフィードバックのループ、明確なエスカレーションパスを用意する。これにより組織は、燃え尽き症候群(バーンアウト)を引き起こさずに、より速いペースで運営できる。
ヘルスケア業界のあるCEOは、規律ある実行は、従業員が「一見ばらばらに見える仕組みの裏にある一貫したロジック、すなわち価値観や戦略、人材、オペレーションがすべてどのようにつながっているか」を理解するのを助けることから始まると考えている。それを強化するために、彼は自社の重要ミーティングやレビューや計画立案プロセスが年間を通じてどのようにつながっているかを示すビジュアルを作成した。
1年は、優先順位をつけ、年間オペレーション計画を立案することから始まる。その計画が人材レビューや従業員アンケート調査に反映されて、刷新された戦略で春に突入する。更新された戦略は、取締役会とともに見直され、翌年の運営計画立案に活用される。年間を通じて、毎日、毎週、そして毎月のレビューにより、日々の実行が全社的な優先課題と結びつけられる。
CEOはシステムを可視化することで、実行がどのように機能しているかを組織に見せ、指示によってではなく、構造的に足並みを揃える。
自社のオペレーションの仕組みを評価するために、次のことを自問してみよう。
・最重要な取り組みについて、誰が何をいつまでに完遂する責任を担っているか、明確になっているか。
・パフォーマンスを評価し、軌道修正を図るための信頼できる仕組みはあるか。
・問題が生じている時、どのくらい迅速に発見し、意思決定のエスカレーションを図り、資源を再配分できるか。
5. 信頼と説明責任のバランスが取れた文化を築く
最も優れたCEOは、文化こそが自分たちが許容するものだと理解している。福利厚生の充実やスローガンに頼らず、自分が設定するトーンや、報酬の対象にする価値観や行動、そして根づかせたい規範を意図的に決める。また、緊急性や透明性や、高い基準の模範となる。
優秀なCEOの多くは、「オーナーシップ文化」を築く。これは従業員が結果に責任を持ち、アクションを起こす権限を与えられていると感じられる文化だ。そのためには、高い期待と心理的安全性、信頼を組み合わせて、従業員が安心して問題を指摘し、試行錯誤し、ミスを認められる必要がある。
たとえば、筆者らの研究に参加したある総合メーカーのCEOは、自社の価値観である説明責任、コラボレーション、エンパワーメント(ACE)を職務記述書に直接盛り込ませた。こうしたACE文書は、それぞれのポジションの責任と、コラボレーションが期待されること、意思決定権の所在、そして成功の測定方法を明記している。ACE文書は曖昧さを取り除き、その会社の価値観を組織全体の日常業務の中で具体化する。
あなたの組織の文化を評価するために、次のことを自問してみよう。
・私たちはこの組織に参加したいと思わせる文化を築いているか、それとも問題があってもただ耐えるだけの文化になっていないか。
・誰かがミスをしたり、厳しい事実を指摘した時、我々はどう対処しているか。
・リーダーは期待される行動の模範となっているか。
* * *
最も優秀なCEOに共通する究極の特徴は、自分が直接関与できる範囲を超えたところにまで及ぶリーダーシップの規律を設計できることにある。彼らは組織全体で足並みを揃え、集中し、勢いを生み出す運営体制を構築する。筆者らの研究対象となった最も業績の高い企業では、こうした規律は説明責任のメカニズムとして機能し、期待を下回るパフォーマンスを無視したり正当化したりできないようにする。筆者らが集めたデータは、これがリーダーシップのスタイルというより、規律を徹底させるためのシステムの問題であることを示している。
それが意味することは明白だ。持続的な成長は、小さな強化システムを意図的に設計することによってもたらされる。具体的には、戦略的明確さを確立し、社内の足並みを揃えて人材を強化し、重点課題への集中を徹底して貫き、規律の取れた実行を進め、説明責任と信頼の文化を築くことだ。PEの投資先企業で最高の成績を上げるCEOは、その仕事に設計者として取り組み、規律を実際のオペレーションに組み込むことにより、好成績を持続させ、すべてのステークホルダーに利益をもたらすのである。
"What the Best Private Equity-Backed CEOs Do Differently," HBR.org, April 09, 2026.






