時代に流されず、
ブランドの特異性を追求し続ける

編集部(以下色文字):オニツカタイガーは1949年に誕生し、1977年にいったんは休止を迎えましたが、2002年に復刻を果たしました。その後、映画『キル・ビル』で主演のユマ・サーマンが着用した事実が大きな話題を呼んだこともあり、認知を急速に高めていきましたが、2009年頃からは成長速度に落ち着きが見られるようになりました。しかし、庄田さんが2011年に責任者に就任すると飛躍を遂げ、2025年1~12月期の売上高は1300億円を突破し、2011年と比較すると10倍以上です。近年の好調の要因はどこにあると思いますか。

庄田(以下略):これという決定的な要因はなく、だからこそ他社から真似されにくく、成長を続けられているという言い方もできるかもしれません。私たちは商品の品質に加えて、ブランドで勝負しています。商品の見た目だけなら真似できるかもしれませんが、我々のブランドを模倣することはできません。

 ブランドビジネスの成長は2つの軸で考えることができます。一つは「特異性」で、言い換えればブランドらしさです。オニツカタイガーでは「Discover the Difference」(違いを見つけろ)を掲げ、他のブランドと違いはあるか、その違いはオニツカタイガーらしいかどうかを常に判断の基準としてきました。ブランドが進化を続けるためには、この特異性を追求する姿勢が不可欠です。

 もう一つの軸は「時代の流れ」です。特にファッションには流行もあるため、春も来れば、冬も訪れます。その中で、ブランドの特異性と時代の流れが一致した時、売上げが拡大します。好調の要因をしいて挙げるとすれば、オニツカタイガーの特異性と時代の流れがマッチする機会が増えてきたからではないでしょうか。

 ただし、目の前の売上げを挙げるために、時代に迎合することはありません。それでは時代に流され、特異性が失われかねないからです。むしろブランドを長い目で見た時、あえていまの時代にマッチしない取り組みが必要だと判断することもあります。長期的な視点を持ちながら短期的な決断を下すのは簡単ではありませんが、それを積み重ねていけばブランドがぶれることはないはずです。

 時代の流れとずれるような商品を意識的につくり出すのですか。

 ずらすこと自体に意味があるわけではなく、それを目的にすることはありません。短期的には時代の流れと合致しないことがわかっていたとしても、長期的に見てオニツカタイガーらしさにつながるのなら続けるということです。ブランドの本質は変えず、変えるべきところは進化させる。それを積み重ねていくことで売上げが後からついてくるのですが、現実には、売れないものを残し続ける状態に耐えきれないブランドは多いと思います。

 もはや商品の魅力だけで売れるような時代ではありません。お客様の要求に応えようとすれば、商品はおのずと同化していきます。しかし、たとえ性能がほぼ同じだとしても、「あのブランドなら買いたいけれど、あそこでは買いたくない」ということはありませんか。商品とブランドはセットで、それが一つになっていると見せることが大事であり、「よい商品をつくりさえすれば売れる」という発想に陥るべきではありません。

 オニツカタイガーでも、時代に適合しないとわかりながら残し続けた商品はありますか。

 たとえば、「MEXICO 66」(メキシコロクロク)のような歴史的なモデルが該当します。売上げ自体は拡大していましたが、「薄底で歩きにくそう」などネガティブな印象を持たれた時期が続き、社内からは「やめるべき」という声がたくさん上がりました。