「就職人気企業ランキング」は忘れよう
新卒者を相手にした日本の若年労働市場は、世間一般の知名度に引きずられ過ぎだというのが僕の見解だ。ちょっと考えれば分かることだが、一般的な知名度はそこで働くことの価値とはほとんど関係がない。強いて価値があることといえば、親が一瞬喜ぶぐらいだ。
それにしても日本の若者には「周囲の人(その中心にいるのが親)が喜ぶ」ということを、暗黙裡にせよ、会社選びの基準としていまだにわりと重視しているように思う。自分自身に「よい会社」の基準がなければ、周囲の反応を自己の基準とすり替えてしまうというのは、日本に限らずどこの若者にも必ずみられる傾向だ。ただし、そこに親が出てくるというのは(これはこれである種の美点かもしれないが)、日本の活力にとって確実にマイナスに作用している。いつの時代も前世代の価値基準は世の中の実際とちょっとズレている。ズレた基準に引きずられると、新陳代謝が進まない。
素晴らしい会社なのに、規模が小さかったり、若かったり、上場してないという理由で知られていない会社が日本にもものすごくたくさんある。そうした会社が優秀な若者の選択肢に上らないとしすれば、とてももったいない話だ。やる気とポテンシャルが豊かな若者がこうした会社にどんどん入っていくようになれば、日本の将来にとって大きな意義がある。
読者の中にこれから就職をしようという若い人がいたら、GPTWのランキングにぜひ注目してほしい(ランキングの結果だけでなく、その評価基準も)。ご両親にとっては「聞いたことがないけど……」という会社かもしれないが、少なくとも「就職人気企業ランキング」よりも100倍価値がある。
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