ソニーグループはなぜ10年で利益率を3倍に高められたのか
撮影:編集部
サマリー:日本を代表するグローバル企業であるソニーグループは、かつての「モノづくり」中心の企業から、まったく異なる収益構造を持つ企業へと変貌を遂げた。同社の直近の財務データを10年前と比較すると、売上高の成長は1.5倍でありながら、営業利益は実に4.9倍にまで跳ね上がっている。なぜこれほどまでに劇的な収益性の改善を実現できたのか。本稿では、同社のセグメントの変遷やセグメント別の利益率の変化に注目しつつ、ソニーが行った事業ポートフォリオの大転換と、その財務的なインパクトについて考察する。

「エレキ」から多様な事業ポートフォリオへ

「ソニー」という社名を聞いて、皆さんはどのような商品やサービスを思い浮かべるでしょうか。おそらく、世代や関心のある分野によって答えはまったく異なるものになるはずです。

 1990年から2000年前後に青春時代を過ごした方であれば、「ウォークマン」やHDD搭載DVDレコーダー「スゴ録」といった、世界を席巻した革新的な家電製品のイメージが強いかもしれません。2000年代にPCを使っていた人にとっては、スタイリッシュな「VAIO」ブランドを、ガラケーならば「ソニー・エリクソン」、スマートフォンであれば「エクスペリア」を使っていた人も多いのではないでしょうか。また、カメラ好きの方にとっては、プロフェッショナルから絶大な支持を得ているイメージング機器の印象も強いはずです。

 このように、40歳以上の方にとっては、ソニーといえば「エレキ」(エレクトロニクス)の印象がいまだに強いかもしれませんが、これが2000年前後に生まれた若い世代になると、ソニーに抱く印象はがらりと変わるはずです。彼らにとってソニーといえば、まず間違いなく「プレイステーション」といったゲーム事業を真っ先に想起するに違いありません。

 一方、音楽好きにとっては、巨大なレコード会社としてのソニーのイメージも強いはずです。ソニーはビートルズなどの楽曲管理で有名な「EMIミュージック・パブリッシング」を買収して完全子会社化したことで、世界最大級の膨大な楽曲資産を抱えています。国内では米津玄師、YOASOBI、乃木坂46、King Gnuといったトップアーティストを擁し、海外でもマイケル・ジャクソンやビヨンセなど、世界の音楽シーンを牽引するスーパースターたちがソニー傘下のレーベルや事業を通じて作品を展開しています。

 さらに映画ファンにとっては、『スパイダーマン』シリーズや近年大ヒットを記録した『鬼滅の刃』などのアニメ作品(手がけているのはソニー・ミュージックグループ傘下のアニプレックス)を思い浮かべるかもしれません。

 このように多様な顔を持つソニーですが、では、いまのソニーの収益の主力はいったい何なのでしょうか。その答えは、同社の決算書を紐解くことで明確に浮かび上がってきます。

 そこで今回は、日本を代表するグローバル企業、ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)の強さを、財務とセグメント別の観点から考察していきます。かつては「モノづくり」中心だった同社は、いかにしてまったく異なる収益構造を持つ企業へと変貌を遂げたのでしょうか。

現在の主力事業は何か

 まずはソニーの10年前(2016年3月期)と直近(2026年3月期)の売上高、営業利益、営業利益率を比較してみましょう(図表1)。

図表1
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出所:ソニー 2016年3月期有価証券報告書および2026年3月期決算短信より筆者作成。

 ここには実に興味深い事実が示されています。売上高はこの10年で8.1兆円から12.5兆円へと1.5倍の成長であるのに対して、営業利益は2942億円から1.45兆円へと、実に4.9倍に増え、利益率も3倍以上に跳ね上がっているのです。

 売上高の伸びをはるかに凌駕する圧倒的な利益の成長。これは単に、既存の事業が好調だったというレベルの話ではありません。利益の稼ぎ方、すなわちビジネスモデルそのものが、この10年で根本から変わったことを示唆しています。

 では、何がそこまで劇的に変わったのでしょうか。

 その秘密を探るために、直近(2026年3月期)のソニーの事業構造について見てみましょう。図表2は、現在のソニーのセグメント別の売上高12.5兆円と営業利益1.45兆円の構成を示したものです。

図表2
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出所:ソニー 2026年3月期決算短信より筆者作成。なお、割合を計算するにあたって、連結相殺消去前の売上高と利益をそれぞれ分母にしている。構成比は小数点以下第1位を四捨五入しているため、内訳を合計しても必ずしも100%にはならない。
 

 これを見ると、現在のソニーの主力が何であるかが一目瞭然です。