リーダーは優秀な社員を追い詰める「見えない負荷」にどう対応すべきか
Basil Pind/Stocksy
サマリー:優秀な社員ほど、仕事と私生活の調整に追われる「メンタルロード」(認知的・感情的労働)によってひそかに疲弊している。従来の指標では見えにくいこの負荷は、集中力を低下させ、イノベーションの停滞やバーンアウトなどの隠れた要因となっている。組織の持続可能な成果を守るにはどうすべきか。本稿では、見えない負荷を可視化し、表面的な柔軟性を脱してチームの認知リソースを守るリーダーのための4つの処方箋を提示する。

メンタルロードの弊害

 多くのリーダーは、勤務時間、締め切り、業績指標を管理することで、従業員の仕事量を把握できていると考えがちだ。しかし、そうした指標は、職場におけるバーンアウト(燃え尽き症候群)、エンゲージメントの低下、離職を引き起こす、ある大きな要因を見落としてしまう。それは、「メンタルロード」だ。

 メンタルロードとは、仕事や生活を円滑にこなすための計画、調整、管理に伴う継続的な認知的・感情的労働を指す。職場で仕事を進めるうえでの思考プロセスは、タスクを期限通りに終わらせるための認知的労働に留まらない。課題解決に向けた協働でのブレインストーミングや、職場の人間関係の管理、従業員同士の衝突への対応、アウトプットの品質の保証といった感情的な側面も含まれる。

 一方、家庭におけるメンタルロードとは、子どもや親、家族のケアの調整、家事の段取り、感情的なサポート、将来の計画などが当てはまる。多くの従業員はこの両方の負担を同時に背負っており、それに押し潰されそうになっている。

 これは単なる仕事の問題でも、プライベートの問題でもない。両者が衝突することで生じる問題なのだ。リーダーは、どちらの負荷も完全になくすことはできないが、両者がどのように影響し合い、どこに介入すべきかを理解することは、優秀な人材を引き留められるか、それともバーンアウトや離職によって失うかの分かれ目となる。

 また、メンタルロードは集中時間を削り、意思決定のサイクルを遅らせ、失敗の頻度を増やし、創造性を阻害するため、日々のパフォーマンスを左右する。その結果、収益の伸び、顧客満足度、イノベーションのスピードにも影響を与える。

 本稿では、筆者のルパナーの近著Drained(未訳)の研究成果と、ジョンズホプキンス大学ケアリー・ビジネススクールのジェンダー・アンド・ワーク・イニシアティブがワシントンDCで開催したワークショップ「メンタルロード・コラボラティブ」で得た知見に基づき、課題と研究に裏打ちされた解決策を提示する。

衝突の影響:仕事と私生活のメンタルロードが重なる時

 新製品の立ち上げを担当するマーケティングディレクターであり、子育て中で、父親が3つ離れた州でがん治療を受けているマリアの例を考えてみよう。彼女は部門横断チームを率い、ベンダー管理を行い、ローンチの成果物を仕上げると同時に、父親の腫瘍専門医との連絡、治療スケジュールの調整、介護施設のリサーチをしている。

 このように仕事と私生活の負担が衝突すると、単なる「忙しさ」に留まらない、3つの相乗的な影響が生じる。