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パンデミックが始まって以来、自分の創造性が失われてしまったと感じることはないだろうか。不確実な状況が続き、不安や恐怖が増すと、人間の脳はそのストレスに対処するために、状況を無意識に解釈し、必要なシナリオを構築するようになる。そうした負荷のために、創造性に関わる神経回路が遮断されてしまうというのだ。しかし、現在のような状況にあっても、脳の働きを理解することでストレスを軽減し、創造性を高める方法があるという。本稿では、破壊的状況から生じるストレスを創造性の燃料に変えるための4つの戦略を紹介する。


 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会全体に大混乱を引き起こし、生命、健康、雇用、チャイルドケア、産業、安定、そして心の平穏の喪失をもたらしてきた。地球上の誰もが同時に、同一の予期せぬストレスフルな変化を経験したのは1世紀ぶりのことだ。

 これほど大掛かりな不確実性を経験しても、私たち全員が一つのことを頼りにできる。それは、人間の脳には、みずからを守る強力な対処メカニズムが備わっているということだ。

 だが、脳が生来持つこのパワーを活用するには、まず、ストレスがかかっている時、私たちの認知レベルに何が起きるかを理解する必要がある。

 破壊的な状況や予期せぬ状況に見舞われると、脳はさまざまな刺激を解釈して、それが悪い知らせであれば行動計画をつくろうとする。しかし、不確実な状況が長期化し、そこに不安と恐怖が加わると、脳は探求するのでなく隠れるという生物学的反応を示すようになる。

 進化論的に言えば、創造性よりも生き残ることが優先されるのだ。ストレスホルモンは戦闘の準備を促し、創造性に関わる神経回路は遮断される。

 この無意識の解釈とシナリオ構築が認知力に与える負荷が、私たちが最近、クリエイティブに感じられず、むしろ疲れてぼんやりとしている理由の一つだ。すなわち、私たちの多くは闘争・逃走反応のさまざまなステージの中で生きているといえる。

 なぜ、これが重要なのか。自分が脅威にさらされている時や、潜在的に恐怖を覚えるような困難に対処している時の脳の働きを理解すると、意識的にせよ無意識にせよ、破壊的状況で生じる恐怖を緩和する具体的な戦略を設計し、そうすることで創造性の発揮を支援しやすくなる。

 人間の脳の仕組みを理解し、創造的な直感を養うための戦略を4つ紹介しよう。