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予測不可能な環境で組織が生き残るには、レジリエンスが重要であると誰もが承知していることだろう。しかし、レジリエンスの基盤として心理的安全性を確保しなけれならないにもかかわらず、その重要性が十分に理解されているとはいえない。本稿では、レジリエンス強化のカギとなるインテグリティ、イノベーション、インクルージョンを最大限に引き出すために心理的安全性が必要な理由を論じたうえで、心理的安全性を構築するにあたって何が障害になるのか、そして心理的安全性はどのようにして高めることができるのかを解説する。

レジリエンス強化のカギを握る3つの文化的側面

 パンデミックと地政学的な不安定さ、予測不可能な市場の状況が相まって、組織のレジリエンスは「砂漠における食糧のようなもの」、つまり生き残るには不可欠だが、自力で育てるのは難しい存在となっている。

 だが、レジリエンスを戦略的な優先事項と位置づけることで、リーダーは組織を拡張させつつ、状況に適応させることができる。

 心理的安全性には、職場のウェルネスを高める役割があり、さらに「大退職時代」(グレート・レジグネーション)の流れに歯止めをかけるということは、すでに多くが語られてきた。不確実な時代を乗り切るため、組織は心理的安全性を戦略的な優先事項と位置づけ、従業員が安心して問題点を指摘し、アイデアを出し、独自の視点を共有できるような文化を醸成する必要がある。

 レジリエンス強化のカギを握るのは、 以下の3つの文化的側面だ。

インテグリティ(誠実性):倫理的リーダーシップと勇気ある率直さ。
イノベーション(革新性):大胆なコラボレーションによる創造性。
インクルージョン(包摂):真の敬意と帰属意識。

 これらによって、ビジネスの継続性と競争力、成長が維持される。すなわち、3つの側面が重なることで、心理的安全性の高い企業文化の核が形成されるのだ。

 レジリエンスの強化に向けて、リーダーは企業文化におけるこれら3つの側面を結びつける方法を理解し、率直な言動を引き出すリーダーシップ特性を身につけなくてはならない。

 本稿では、インテグリティ、イノベーション、インクルージョンを最大限に引き出すために心理的安全性が必要な理由を説明する。また、心理的安全性に投資する際に障害となる要素を明らかにし、シニアリーダーがそれらの障害を克服してレジリエンスを高めるための留意点も解説する。