-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
キャリアプランニングの前提が崩れつつある
「キャリアを成功させる第一歩は計画を立てることだと、ずっと聞かされてきました」と、金融機関のシニアリーダーであるビルは、筆者が主催するエグゼクティブ教育プログラムで語った。「まず、5年先にどうなりたいかを決める。そして、そこへ至るためのロードマップをつくり、必要なスキルを身につける。後は、目的地に向けてこつこつと努力するべし、というわけです」
ここまで述べると、ビルはいったん言葉を切り、その後でこう続けた。「未来がそこそこ予測可能だった時代には、このアドバイスは理にかなっていました。でも、その前提が崩れたらどうなるのでしょう」
ビルのような不安を抱く人が増えている。職業人生が長くなり、多くの人は50年、あるいは60年働き続けるようになっている。その一方で、AIの進化により、仕事そのものが変化するペースも加速している。
いま、初めて多くのプロフェッショナルは、2つの大きな変化に同時に対処することが求められるようになっている。一つの変化は、職業人生が長くなっていること。もう一つの変化は、キャリアがどのように変わっていくかをいっそう予測しづらくなったことだ。長期のキャリアプランニングを可能にしていた前提が崩れ去りつつあるのだ。
キャリアの時刻表が消滅する時
20世紀のほとんどの期間、多くの働き手の行動は、言わばキャリアの時間割によって決まっていた。一言で言えば、それは人々が足並みを揃えるためのメカニズムだった。
まず、教育。その後、キャリアの構築。そして、最後に引退生活。ほぼ同じくらいの年齢の人たちがこの3つのステージをいっせいに進んでいった。膨大な数の人たちが同じリズムで行動していた結果、人生の多くの重要な決定がほぼ自明のものに見えていた。いま学び直しをしたり、脇道にそれたり、スピードを落としたりすべきかと問う必要は、ほとんどなかった。人生の時刻表がこれらの問いの多くに答えてくれていたのだ。
しかし、その時刻表が消滅しつつある。ビルが同僚や友人の話を聞くと、その面々の人生のストーリーは目を見張るほど多様性に富んでいる。企業勤めの生活に終止符を打ち、ポートフォリオ型のキャリアに転換した人もいた。仕事をやめて高齢の両親のケアに携わり、その後仕事に復帰した人もいた。大企業で数十年勤めた後、自分のビジネスを立ち上げた人もいた。同じ年齢の人が2人いれば、職業人生でまったく異なるステージを生きていても不思議でない。
職業人生が長くなることの最も重要な結果は、単に時間が増えることではない。人々の足並みを揃えさせるメカニズムが失われたことだ。以前はそのメカニズムに従うことにより、キャリアでとりわけ重要な決定の多くが下されていた。
いまや、定番の物事の順序通りに生きることが成功の前提ではなくなった。キャリアプランをつくることは、かつては理にかなっていた。人生の時刻表により、物事の順序がそこそこ予測可能だったからだ。しかし、物事の決まった順序が存在しなくなり、キャリアプランだけでは、人生の手引きとしてあまり頼りにならなくなった。
キャリアの時刻表が消滅したと気づいた時、経験豊富なプロフェッショナルたちがどのように対応するかを明らかにするために、筆者は最近、10週間にわたる学びの旅を計画し、グローバル企業3社のシニアリーダーたちと時間を過ごすことにした。







