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途方もない時価総額
2026年6月、米国のナスダック市場にイーロン・マスク氏が創業したスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(以下、スペースX)が上場を果たしました。
上場時の公開価格から算出された時価総額は、2兆1000億ドル(約336兆円)。この時価総額を超える企業は、エヌビディア、アップル、アマゾン・ドットコム、アルファベット、マイクロソフトといった主要なテックジャイアントのみということを踏まえると、この時価総額がいかに高いかをイメージできるかと思います。
おそらく世間一般におけるスペースXのイメージは、「民間発の宇宙開発企業」というものではないでしょうか。しかし、もしスペースXを「火星移住を目指してロケットを打ち上げる企業」としてだけ認知しているのなら、少なくとも現時点の同社のビジネスモデルの本質を捉え損ねかねません。
では、これほど高い時価総額を株式市場から期待されているスペースXのビジネスモデルとは、どのようなものなのでしょうか。本稿では、上場時に開示された目論見書(Form S-1)をもとに、主に財務の観点からスペースXのビジネスモデルと強みを考察していきます。
スペースXのP/L構造
まずはスペースXのP/L(損益計算書)の推移を見ていきましょう。図表1はスペースXの売上高と営業利益の推移を示したものです。
出所:スペースX FormS-1より筆者作成。
スペースXは宇宙開発ベンチャーなので、どうしても赤字が先行するビジネスモデルではあります。しかし図表1からおわかりのように、FY2024(2024年12月期)にすでに一度黒字化しているのは注目に値します。
とはいえ、FY2025(2025年12月期)になると再び赤字に転じています。一度は黒字化したにもかかわらず、なぜ再度赤字化しているのか。この点を掘り下げるために、FY2024とFY2025の同社のP/L構成を確認してみましょう。
まずはFY2024です。図表2をご覧ください。
出所:スペースX FormS-1より筆者作成。
費用構成で最も大きな割合を占めるのは原価(約80億ドル)であり、スペースXの売上高140億ドルの約57%に上ります。次に大きいのは研究開発費(34.6億ドル)で、売上高の25%を占めています。これらに加えて、販管費等や事業構造改革費用が計上され、営業利益は4.66億ドルとなっています。スペースXが宇宙開発ベンチャーであることを考えれば、この原価と研究開発費の割合の大きさも納得です。
では、直近で赤字化しているFY2025のP/L構造はどうなっているのでしょうか。図表3をご覧ください。
出所:スペースX FormS-1より筆者作成。
図表3から見て取れるように、FY2025で赤字になったのは、売上高の実に46%を占める研究開発費(86億ドル)が計上されているからです。つまり、「将来のための先行投資を進めた結果、赤字になった」ということです。
FY2024とFY2025のP/L構成の違いをわかりやすく示すために、P/Lをボックス図にして比較したものが図表4です。研究開発費の拡大が一目瞭然ですね。
出所:スペースX FormS-1より筆者作成。
では、なぜスペースXはFY2025にこれほど研究開発費を増やしたのでしょうか。実はこの疑問を解くことが、現在のスペースXのビジネスモデルを理解することへとつながっていきます。
スペースXの3つの事業
スペースXの中核事業といえばロケットの開発というイメージがありますが、実態は異なります。スペースXの事業は「Connectivity」(通信セグメント)、「Space」(宇宙セグメント)、「AI」(AIセグメント)という3つのセグメントから構成されており、内訳は図表5の通りです。以下ではそれぞれの具体的な事業内容を見ていきましょう。
出所:スペースX FormS-1より筆者作成。





