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人や組織が目標を達成するには、相互依存関係にあるステークホルダーとの協力が不可欠だ。利害が対立することもあるステークホルダーと良好な関係を維持し動かすために、「人を動かす」メカニズムとしての「パワー」と「影響力」を適切に用いる必要がある。
パワーとは何か
「人を動かす」メカニズムとしての「パワー」は、さまざまな要素が絡み合っている。ハーバード・ビジネス・スクールのキャスリーン・L・マッギンとエリザベス・L・リンゴによれば、パワーは大きく、公式の力、個人の力、関係性の力の3つに分類できる。そしてこれらはさらにいくつかの要素に還元できる。
①公式の力
公式の力は、強制力、報酬力、正当権力、情報力の4つを源泉とする。強制力とは人の配置や降格を決める権限で、報酬力とは人を昇進、昇給させる権限である。そして、強制力と報酬力を含む組織上の権限を正当権力という。さらに情報力とは人事情報など限られた情報にアクセスし、コントロールする力のことをいう。
②個人の力
個人の力は、専門力、同一化力、カリスマ性の3つを源泉とする。専門力とは、専門的な知識や技術、特殊なスキルによる力をいう。同一化力とは、尊敬する人のように自分もなりたいと思わせる力である。そして、同一化力の極端な形として、カリスマ性がある。
③関係性の力
公式の力、個人の力は、あくまで個人に帰属するパワーだが、人・組織を動かす際にそれだけに頼るのでは不十分だ。ほかの人のパワーにも頼るのが「関係性の力」である。自分への支持を取り付けたり、ネットワークを構築することでみずからの基盤を強化したりするわけだ。政治や企業における派閥は、その一例である。
影響力とは何か
同じ程度のパワーを持つ人が同じ相手にパワーを行使すれば、常に同じように相手を動かせるかというと、必ずしもそうではない。すなわち、「力の使いよう」が重要になる。スタンフォード大学のジェフリー・フェファーはそれを影響力と呼び、「潜在的なパワーを活用し実現することからなるプロセスであり、行為であり、行動である」と定義した。
影響力を考察するには、人間の心理に関する知識が必要となる。心理学の研究では、人間は何か行動を起こす時、ある引き金となる特徴が見つかれば、無意識にその特徴に対して反応することが明らかになっている。社会心理学者であるロバート・チャルディーニは、著書『影響力の武器』の中で、人が無意識に行動を決定してしまう引き金として、以下の7つの原理を挙げた。この7つをもとにした影響力は、うまく使うことによって人・組織を動かすことができるため有用である。しかし、影響力を行使して相手をだましたり操作したりするような行為には倫理的な問題があり、慎重な判断が求められる。
①返報性:相手に対して何らかの価値のあるものを提供することで、相手が自分に対して報いなければならないと強く感じることを指す。
②好意:自分が好意を感じている人の要求は受け入れやすい、という傾向。好意を高める要因として、外見の魅力、自分との類似性、自分への称賛、接触や協同の頻度、好ましい事象との結び付けの5つがある。
③社会的証明:ある状況において、人は他者の判断・行動を基準にして、自身の判断・行動を決めるというもの。
④権威:知識や力がある本当の権威者に従うことは本人の利益につながるので、人は幼少時から、親や教師など権威に従うよう教育されている。そのことが影響し、権威の実態がない単なるシンボル(肩書き・服装)に対しても反応してしまう傾向がある。
⑤希少性:機会を失いかけると、その機会をより価値のあるものと見なす傾向。
⑥コミットメントと一貫性:人は、自分が一度コミットしたことや、自分の持つ価値観(言葉・信念・態度・行動)と一貫性のある行動をとろうとする。そのため、最初にコミットした内容と合致した要求に同意しやすくなる。
⑦一体性:自分とアイデンティティを共有している身内(「私たち」)だと思う相手にイエスと言いやすい性向。一体性を生み出す要因には、帰属しているという認識(例:血縁や場所の共通性)と、ともに活動する経験(例:音楽体験)がある。
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