【ビジネスの基本を3分でおさらい】行動を喚起するモチベーションの「内容説」とは何か
サマリー:人々の行動を動機づける「モチベーション」によって、その貢献度合いは大きく左右されます。そのモチベーションの研究は数多ありますが「内容説」とはどのようなものでしょうか。MBAのエッセンスを手軽に学べる本として人気を博し、累計発行部数47万部を超えるロングセラー書籍『グロービスMBA マネジメント・ブック』の大幅修正・増補した改訂4版が発売されたのを記念して、内容の一部を本連載でご紹介していきます。今回は、モチベーションの「内容説」についてです。

人が働く理由

 モチベーション(動機づけ)とは目標に向けて行動を喚起する力であり、その行動を持続させるプロセスや心理的エネルギーを表す概念である。日常的な言葉でいえば「やる気」と表現できる。人が働くのは、仕事に対して何らかの欲求を持つからだ。他の経営資源とは異なり、人の貢献度合いはモチベーションによって大きく左右される。

 動機は個人の置かれた環境や内発的な欲求によって形成される。さまざまな動機のうち何を重視するかについては個人差があるが、企業は個人のモチベーションに対して間接的に影響を与えることができる。したがって、従業員がどのような動機で働くのかを理解しておくとよい。

モチベーション理論と内容説

 モチベーションに関しては、過去より数多くの研究が行われてきた。モチベーションについての理論と呼べるものは多数存在するが、大きく「内容説」と「過程説」に分類することができる。今回はまず、内容説の代表的な説を概観する。内容説は、人が何に動機づけられるのか、どのような欲求に基づいて行動するのかに焦点を当てた考え方で、欲求説と呼ばれることもある。

■マズローの欲求5段階説
 アブラハム・H・マズローは人間の欲求を「生理的」「安全」「社会的」「尊厳」「自己実現」という、低次から高次への5段階に分けて考えた。人の欲求は低次の欲求が満たされると、より高次の欲求へと移行する。それと同時に、低次の欲求によるモチベーション形成へのインパクトは弱まる。マズローの主張は、今日においても実務家に大きな影響を与え、広く活用されている。一方で、学術的には多くの批判も提起されている。

■ハーズバーグの動機づけ・衛生要因理論
 フレデリック・ハーズバーグは仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者を動機づけ要因、後者を衛生要因と呼んだ。動機づけ要因は、達成や承認、仕事そのもの、責任、昇進などが該当する。衛生要因は、会社の政策と方針、監督方法、給与、対人関係、作業条件などが該当する。動機づけ要因を与えることにより、満足度を高め、モチベーションを向上させることができる。一方、衛生要因に対して手を打つことにより、不満を解消することはできるが、そのことが満足感やモチベーションを高めるとは限らない。

■デシ&ライアンの自己決定理論
 仕事が面白くて没頭するなど、やっていることそのものに動機づけられることを内発的モチベーション(内発的動機づけ)と呼ぶ。活動を通して、自己の有能さや自己決定が感じられた時に、個人の内に発生するモチベーションである。それに対して、行動の原因が報酬や罰など外的な要因によって生じるものを外発的モチベーション(外発的動機づけ)と呼ぶ。この2つのうち、内発的モチベーションが努力の量を増やし、パフォーマンスを高めることが明らかになっている。

 エドワード・デシとリチャード・ライアンは、内発的/外発的モチベーションの考え方を発展させ、自己決定理論として体系化した。自己決定理論では、人の動機づけを内発的か外発的かという二分法ではなく、個人の自己決定が許容されている度合いによって連続体として捉える。たとえ報酬や他者からの評価といった外発的モチベーションによって行動を始めた場合でも、その活動の価値を理解し、自分事として引き受けることで、より自律的な動機づけへと内在化していくと考えるのだ。このように、外発的モチベーションが段階的に内面化され、自己決定性が高まっていく過程を示したのが自己決定理論である。

 自己決定の源となるのは、外部への好ましい影響を通じて、自身の能力を証明したい欲求である「有能さ」、周囲と良好な関係を築きたいという欲求である「関係性」、自己の行動を自分自身で決めたいという欲求である「自律性」である。これらが満たされると、内発的モチベーションが高まる。

 

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