任せる技術:みずから考え、行動する人を育てる
サマリー:『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)2026年11月号の特集は「任せる技術:みずから考え、行動する人を育てる」です。権限委譲はリーダーに求められる最も重要な仕事の一つですが、環境やバイアスによって、なかなか思ったように進まないことも確かです。裁量や責任を担わせなければ、次なるリーダー人材は育ちません。また、任せ方を仕組み化せず、属人的なままにしておけば、組織にばらつきが生じることにもなりかねません。そこで本特集では、任せる技術についてさまざまな角度から光を当てます。

仕事を任せることが組織の成長につながる

 部下を育てるためには、任せることが重要――DHBRの読者の皆さんならば、そのことはすでによくご存じでしょう。とはいえ、「わかってはいるが、なかなか任せられない」というのが多くの職場の現実ではないでしょうか。

 そうなってしまう理由はいくつも考えられます。たとえば、期日が目前に迫っているため「自分でやったほうが早い」と考え、つい仕事を引き取ってしまう。部下に任せて失敗されたら自分が責任を負うことになるという不安がある。あるいは、付き合いの長い顧客との関係性を重んじるあまり、役職が変わってもなかなか部下に仕事を引き継げない、ということもあるでしょう。

 さらに、任せる力は、上司個人の資質や経験に依存しがちなものでもあります。「この上司の下では人がよく育つが、あの上司の下ではなかなか育たない」というばらつきは、組織にとってはリスクにもなりえます。

 そこで今号の特集「任せる技術――みずから考え、行動する人を育てる」では、こうした課題をいかに乗り越え、任せる力を組織として高めていけるのかを、さまざまな角度から考えます。

 特集1本目「自分事として仕事と向き合う人に、適切な場を与える」は、キヤノン会長CEOである御手洗冨士夫氏へのインタビューです。1995年の社長就任以来、30年以上にわたり同社のトップとして組織を率いてきた御手洗氏に、CEOに求められる条件や、次世代リーダーをどのように見出し、育てていくのか、その難しさも含めて伺いました。

 2本目「P&Gは仕事を任せる仕組みを通じて、一人ひとりをリーダーに育てる」では、数々のマーケターを輩出してきたP&Gジャパン社長の木葉慎介氏に、責任ある仕事を若手にも積極的に任せる仕組みとそれを支える文化を、同社がいかに組織に組み込んできたのかを詳しく聞きました。

 続く3本目「リーダーは権限委譲の難しさをどうすれば乗り越えられるのか」は、権限委譲を実践するうえで立ちふさがる課題を4つに整理したうえで、その課題をどう乗り越えるかを考えます。

 特集の最後にお届けするのは「意思決定のルールを定めても組織が動かない4つの要因」と題する論考です。組織運営を円滑に行ううえでは、意思決定権の所在を明確にすることが欠かせないものですが、とかくその現場は混乱しがちです。こうした失敗を回避し、効果的な組織運営に向けた提案を行います。

「任せる」ことは、口で言うほど簡単ではありません。任せる側にも相応の覚悟とスキルが求められます。しかしその難しさを乗り越えた時、人は大きく育ち、その成長はやがて組織を前進させる確かな力になります。あなたの組織の成長に向けて、今号をぜひお役立てください。

(編集長 常盤亜由子)