部下を成長させる上司がやっている、上手な仕事の任せ方
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サマリー:部下の成長を促すため、あえて挑戦的な仕事を任せる上司は少なくない。しかし、上司の一方的な見立てで任せる内容や範囲を決めてしまうと、かえって成長の機会を損なうおそれがある。重要なのは、部下との対話を通じて少し背伸びできる領域を見極め、ともに仕事を設計するなど挑戦と支援のバランスを整えることだ。本稿では、部下に任せる仕事の内容を適切に設計し、成長につなげる具体的な方法を解説する。

連載『成人発達理論で考える部下の育て方とリーダーの成長』はこちら。

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難しい仕事を任せれば、部下は成長するのか

「少し背伸びをしなければ、人は成長しない」。そう考え、将来を期待する部下に、あえて難しい仕事を任せる上司は少なくありません。これまで補佐役だった部下に、初めて大規模なプロジェクトの責任者を任せる。小規模な顧客しか担当したことのない若手に、重要顧客との交渉を託す。そこには、実践を通じて一段上の能力を身につけてほしいという願いがあります。

 ところが、仕事を任された部下は、何から手をつければよいのかわからず、細かな確認を繰り返すようになります。上司は「もっと自分で考えてほしい」と伝えますが、その一言によって、部下はいっそう相談しにくくなり、問題を抱え込んでしまいます。数カ月後には心身ともに疲弊し、上司は「まだ任せるのが早かった」と判断するでしょう。

 ここで問うべきなのは、部下に能力がなかったかどうかだけではありません。その仕事の難易度は、本人の現在地に合っていたのでしょうか。さらに、挑戦を成長へ変えるための支援は、十分に用意されていたでしょうか。

 簡単すぎる仕事を繰り返していても、既存の能力を使うだけで終わります。とはいえ、仕事は難しければ難しいほど成長するわけでもありません。本人の現在地を大きく超えた課題は、学習よりも混乱や防衛、上司への依存を招く可能性があります。部下育成で本当に問われるのは、難しい仕事を与えることではなく、成長につながる難しさをどのように設計するかという点です。

仕事の難易度は「仕事×本人×支援」で決まる

 同じ仕事であっても、誰が、どのような状況で取り組むかによって、難しさは変わります。複数の関係者の利害を調整する仕事を任されたとしましょう。似た案件を何度も経験してきた部下であれば、関係者の主張を整理し、優先順位を考えながら進められるかもしれません。一方、業務知識は豊富でも、対立が起きると強い不安を感じる部下にとっては、非常に負荷の高い仕事になります。

 同じ人物であっても、利用できる支援によって、感じる難易度は異なるでしょう。関係者の特徴や過去の経緯を事前に共有され、交渉の進め方を上司と検討できれば対応できる仕事でも、何の準備もなく一人で任されれば、手に負えなくなることがあります。つまり、仕事の難易度は、仕事そのものに固定された属性ではありません。「仕事の複雑さ」「本人の現在のスキルと器」、そして「利用できる支援や環境」。この3つの組み合わせによって、相対的に決まるものです。

 上司は、かつて自分が経験した感覚を基準に、「この程度ならできるだろう」と判断しがちです。しかし、上司にとっては一つの仕事に見えても、部下にとっては複数の課題が重なっている場合があります。業務内容を理解する、関係者を調整する、上司の期待を推測する、失敗への不安を扱う。これらを同時に求められているとすれば、見かけ以上に難しい仕事だといえるでしょう。

 仕事を任せる前に必要なのは、その仕事が一般的に難しいかどうかを判断することではありません。その部下にとって、何がどのように難しいのかを見極めることなのです。

一人でできることと、支援があればできることを分ける

 この点を理解するうえで参考になるのが、発達心理学者カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論です。フィッシャーは、人が一人で安定して発揮できる能力の水準と、適切な支援が与えられた時に発揮できる、より高い水準とを区別しました。

【参考記事】パフォーマンスが安定しない部下をどう育てるべきか:カート・フィッシャーの「ダイナミックスキル理論」で捉える②

 たとえば、部下が一人で顧客向けの提案を組み立てると、論点をうまく整理できず、説明も散漫になるとします。しかし、上司から提案の枠組みを示され、事前にリハーサルを行えば、相手からの質問にも落ち着いて対応できるかもしれません。