スペインはおよそ2世紀にわたって、絶大な人気を誇るクリスマス宝くじを主催してきた。賞金額で見ると世界最大の宝くじであり、ほとんどのスペイン人が購入している。1970年代の中頃、ある1人の男が末尾48番のチケットを探し求めていた。この男はついにチケットを見つけて購入し、宝くじに当たったのである。なぜそんなに熱心に末尾48番のチケットを探し求めていたのかと尋ねられた男は、「7が出てくる夢を7晩続けて見たのさ。7×7は48だろ」と答えた。
人生における多くの活動、たとえばスポーツ、ビジネス、投資などの結果は、実力と運の組み合わせで決まる。大半の人はこの説を理解して受け入れるが、それぞれが相対的にどれくらいの影響を及ぼしているかを理解している人はほとんどいない。それには2つの正当な理由が存在する。
第一の理由は、心理的なものである。運を味方につけて良い結果が出た場合、人は本来、その成功を自分の実力のおかげであると考えがちだ。同様に、実力が足りないせいで悪い結果が出た場合、人は運が悪かったと考える。かつて私の知人は、ある土曜日の晩にスロットマシンで大勝ちしたことがあった。次の週、その知人は友人たちに出資するよう勧誘し、自分は必勝法を編み出したのだと納得させた。言うまでもなく、勝利の女神はそっぽを向いてしまい、知人は信じやすい友人たちの出資金とともに、勝ち金をすべて失ってしまった。私たち人間は、実力と運がそれぞれ果たす役割に対して曖昧な見方をしてしまう、心理的な防御メカニズムを備えているのだ。
第二の理由は、業績評価をどのように行うかに関係している。人はそれまでのプロセスが果たす役割を考慮せずに、結果ばかりをあれこれ考える傾向が強い。野球のヒットに関する統計データを例にとってみよう。三振率などの測定基準は、打者の実力について多くの情報を提供してくれるが、より一般的な測定基準である打率となると、ランダムな要素が多く含まれてしまう。そこで、実力を反映する業績評価基準を見つけること、そして結果に含まれる要素からコントロール可能なものを見つけ出すことが必要となる。
実力と運の役割を意思決定に取り入れたいと考える経営者は、具体的な方法を取らなければならない。第一に、実力と運の言葉の意味を明確にすることである。ここでは、実力を「各自の知識を効果的かつ迅速に活用し、実行または行動する能力」と定義し、運を「ある個人にとって有利または不利に働く出来事や状況」と定義する。実力はひとつのプロセスとしてとらえる。
第二に、測定の対象となる活動が、一方の端を「実力のみ/運なし」、他方の端を「実力なし/運のみ」とした連続体の中のどこに当てはまるのかを理解する必要がある。たとえば、徒競走はほとんど実力のみの勝負である。一番速い選手が勝利を収めるのだ。一方、ルーレットはすべて運任せである。その他あらゆる活動は、この両極端の間のどこかに当てはまる。自分の活動がどこに当てはまるのかを数値で表すことは、過去の結果を評価し、将来についての意思決定を行ううえで非常に役立つ。
以下に、実力と運の役割を理解することがビジネスリーダーにどう役立つのか、具体的な例を挙げよう。