株主価値経営の考え方は、とりわけリーマンショックによる金融危機後に批判されることが多い。しかし、そこには誤解も多い。CEOの責務は、株主価値の考え方をきちんと理解することである。
大半のCEOは、株主価値創造の意味を間違ってとらえているようだ。CEOは、株主価値の原則となぜそれらが困難なトレードオフになるのかを理解し、企業の財務実績と株価の関係について学び、期待とのギャップが広がった場合には、明確な説明を行い、適切に行動することが必要である。
株主価値の創造はCEOが指針とすべき目標である、というような考えを持たないことが、現在では主流となっている。「社会的価値」「共通価値」「顧客資本主義」といった概念が、これまでよりも賢明かつ望ましい考え方とされている。しかし、そうした考えはあべこべである。株主価値の原則を理解し効果的に実行するCEOこそ、新しい考え方を求める人々の目標の、すべてとは言わないまでもその大半を実現するのである。問題は、株主価値創造の真の定義が見失われていることだ。
CEOが有効な役割を果たすためには、3つの課題を理解しなければならない。第一に、株主価値を創造するということの本当の意味を十分に理解することだ。つまり、これは戦略、財務、組織上の問題に対する指針となる原則をまとめたものになる。第二に、資本市場の仕組みを理解することが必要である。第三に、CEOは株主やその他のステークホルダーに対し、効果的なコミュニケーションを実践しなければならない。