ご存じの方は少ないかと思いますが、ハーバード・ビジネス・レビュー編集部は、雑誌とともに書籍も定期的に刊行しております。マイケル・ポーターの『競争戦略論』やアルフレッド・スローンの『GMとともに』、ジェイ・バーニーの『企業戦略論』なども編集部から刊行した書籍です。
今月は、元マッキンゼーの採用マネジャー、伊賀泰代さんが書かれた『採用基準』を刊行しましたが、お陰さまで売行き好調。昨日4刷が決定しました。本書は、頭脳明晰な人が採用されると思われがちなマッキンゼーで、実はリーダーシップを重視していることが書かれています。併せて、本当の意味でのリーダーシップとは何か、そしてリーダーシップをもった人がいまこそ日本の社会に必要であることが熱く語られています。
本書を出版した頃にちょうど送られてきた本が、『ハーバード流宴会術』です。仕事柄、「ハーバード」と名のつく書籍はできるだけ目を通すようにしていますが、本書は著者さんが知り合いだったので早々に読みました。著者の児玉教仁さんは、2006年にハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を卒業、元三菱商事という華麗な経歴です。一方で、このようなタイトルの著書を出版したことが示す通り、自ら「HBS宴会部長」を名乗るほど、パーティなどで圧倒的な存在感を示す方でもあります。
この本では、その宴会術として「カラオケでは最初にみんなが歌える歌を入れる」「おしゃべりな人はあえて端に座ってもらう」など実践的なノウハウが満載です。その一方で、この本で感じるのは、「宴会でリーダーシップを取る」という覚悟です。たかが宴会といえばそうですが、リーダーシップを取るということは、宴会に出た参加者が楽しい思いをするか否かのリスクを取ることです。そのリスクを取り、参加者にできるだけ楽しんでもらおうという意気込み、または宴会を楽しむのを人任せにしないというメッセージは、大変共感できます。
奇しくも元マッキンゼーの採用マネジャーが書かれた内容とHBSの宴会部長(?)の論旨に、驚くほどの共通点がありました。HBSは世界のエリートが集まる学校であるとともに、リーダーシップを鍛える場であることを改めて実感した次第です。
タイトル通りの「宴会術」の本としてもおすすめですし、タイトル以上の「リーダーシップ本」としてもおすすめです。私もこの本を読んで、年末に呼ばれるばかりの忘年会を、自ら企画してみました。(編集長・岩佐文夫)