企業のファンクションから見ると、業種や業態と関係なく、「営業」は要と言っていいほど重要な役割を担っています。自社の製品やサービスを売ることだけでなく、企業間提携などはまさに営業という機能が求められる仕事でしょう。
 一方で、ビジネススクールの科目というと、戦略論、リーダーシップ、マーケティング、ファイナンスなどがまず想起されます。経営者として必要なスキルと知識をすべて教えるビジネススクールで、「営業」はなかなか表に出てきません。
 それは営業が属人的スキルと汎用的スキルに切り分けにくい仕事だからではないでしょうか。かりに営業が汎用的スキルでできる仕事であれば、営業での差別化は難しいということになってしまいます。
 今号の特集は営業です。非常に重要であるにも関わらず、属人的スキル以外についてあまり語られてこなかったこのテーマに対し、どこまで深堀できるかが編集部の課題でした。
 今回、お二人の方にインタビューさせていただきました。LIXILグループCEOの藤森義明さんは、GEで上級副社長になられた初のアジア人として、同社で数々のプロジェクトを成功させてこられた方です。藤森氏は「営業に必要な資質はリーダーに必要な資質と同じである」と仰います。どちらかというと、顧客を立ててインタラクティブに行動する営業の仕事には受動的な印象がありましたが、同氏の話しを伺い、プロアクティブに顧客のために動く営業は、なるほど互いの価値を高めるためのリーダーだと気づきました。
 もうおひとりの早稲田大学ビジネススクール教授の遠藤功さんは、「営業の質を問う前に、量そのものが絶対的に不足している」と仰います。スマート・セールスという言葉もあるように、ITを駆使してオフィスで営業活動をこなす効率性が注目される中、遠藤氏は、顧客に出向く行動の差が今後最大の競争格差につながると断言されます。現場を知り、日本企業が苦境にあえぐ姿をつぶさに知る方の主張だけに、説得力があります。
 デジタルとネットワークの発展の勢いはすさまじく、新たなビジネスモデルも生まれています。アナログ時代から存在する営業もデジタル化により大きく変貌しているのも確かですが、その機能の本質は変わりません。変化する社会環境で、営業戦略について迷われておられる読者に是非、お読みいただきたい今号です。(編集長・岩佐文夫)
———————————–*
▽今号(2012年12月号:11月9日発売号)「強い営業」の詳細とご購入はこちら