「日本にはリーダーが不在」とよく言われます。時の総理大臣についてや、大きな事故が起こった際の対処の仕方、また企業では戦略の弱さとセットになって語られます。
一方で、日本はリーダーに対して厳しい見方をする国とも言えます。何事も成功するにしても失敗するにしてもリーダーの責任。成功した際には「メンバー全員の貢献」となり、失敗したら「リーダーの責任」となることが多いように感じられるのは私だけでしょうか。
現場は一流、トップは三流とも言われるのも理解できますが、突出した人、目立つ人に対する社会的評価が相対的に低い、あるいは警戒心が強いと感じています。リーダー不在の背景には、社会的にリーダーという役割に対する理解が正しく形成されていないと思えてなりません。
今号の特集はリーダーシップですが、特集タイトルを「リーダーは未来をつくる」としました。込めた思いは、どのような組織であろうとリーダーは、組織や社会をよりよいものにする使命があるというものです。
特集1では、スティーブ・ジョブズをリーダーの視点で捉えた論考です。ジョブズの功績はいまさら言うまでもありませんが、それはアップルの時価総額を世界一にした一企業のリーダーとしての貢献をはるかに凌駕しています。世界のあらゆる人に、新しいライフスタイルを提案したリーダーとしてその名を刻むのでしょう。アップルの未来像が、世界の未来像に見事につながっていたのです。
どんな小さな組織であろうと、その繁栄は社会の未来をよくする方向であること。これがないと、多くの人を引きつけることはできないでしょう。
特集3はユニリーバのCEOポール・ポールマンのインタビューです。彼は、企業の繁栄と社会貢献を同時に達成することを平然と語っています。社会貢献は利益を犠牲にするものという認識が多いなか、ポールマンの姿勢が一貫しているところに目を開かれます。こういうCEOがいる企業が多くの生活者の心を動かして当然でしょう。
最後に、今号から新しい連載がスタートします。ソニーの創業者のひとりである盛田昭夫氏の評伝です。盛田時代のソニーは、ウォークマンを発売して世界の人々に音楽の新しい楽しみかたを提案しました。それによってソニーはグローバル企業への繁栄を歩むことになったのです。また盛田氏は当時貿易摩擦が国際問題となるなか、日本の財界人として積極的に国際舞台で日本経済の繁栄が世界に貢献することを説いて回る役回りを進んで引き受けていました。まさに日本が生んだ世界的リーダーです。
盛田氏が活躍したのは、1970年代から90年代。これだけ世界が注目したリーダーが日本にいたことは驚きと同時に誇りでもあります。グローバルリーダーを育てたいという本誌の思いを込めて、この連載をスタートしました。(編集長・岩佐文夫)
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▽今号(2012年11月号:10月10日発売号)「リーダーは未来をつくる」の詳細とご購入はこちら