今号の特集テーマは「グローバル英語力」です。実は本誌36年の歴史で「英語」を特集にするのは、今回が初めての試みです。
いまさらですが、本誌はHarvard Business Review(HBR)の日本語版なので、読者の中には海外での事業と接点のある人が多く含まれます。これら読者に向けて、本誌で英語の特集をするのは当然だと思われます。しかし、記事の多くがHBRの翻訳であるため、日本人に関心の高い英語の問題について書かれた記事はほとんどありませんでした。
今回、この特集を組む契機となったのは、HBRの5月号に「Global Business Speaks English」という記事が掲載されたことでした。この記事は特集内で「英語公用語化は必要か」というタイトルで掲載していますが、日本の楽天をはじめ非英語圏の企業で英語公用語化の動きが広がっていることが紹介されています。ちょうど日本でもユニクロや楽天の動きから急速に「英語公用語化」の話題が活発になってきました。即効性のある英語学習法の紹介などは、本誌の得意とするところではありませんが、グローバル化が進むなかで本誌も英語の問題を正面から考えてみようというのが今回の特集です。
編集過程で、英語の問題は日本人のみならず、フランス人やドイツ人などの非ネイティブにとって共通の問題だということを痛感しました。
京都大学教授の河合江理子さんは、欧州各国の国際機関や金融機関で活躍された方ですが、彼女の記事から多文化の人が集まる組織での言語の問題がリアルに伝わってきます。非ネイティブが英語力を高めるよう求められるだけではなく、ネイティブの人にわかりやすい英語を話すように促す仕組みが多々見られます。
そして英語力を突き詰めて考えると、「何のために必要か」という根本的な問いにぶつかります。フランス企業やドイツ企業の日本法人社長を務めた藤井清孝さんは、リーダーとして「人を動かす」英語力の必要性を説いておられます。
いまや日本ではリーダーシップをとってグローバルで活躍する人材が求められています。そのための英語力は、まさに「人を動かす」ことが主眼となるでしょう。
今回の英語特集で浮き彫りになったのは、グローバル人材の要件です。世界の場で自分の言葉で語る日本人が一人でも増えれば、日本の世界での存在感は変わると実感しました。
なお、今号の特集では「英語力を高める厳選20ツール」を掲載しています。本誌らしからぬ切り口ですが、何度も熟考して選んだ20の書籍やサイトは、まさに本誌らしいものになったと自負しております。こちらもご覧になっていただければ幸いです。(編集長・岩佐文夫)
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