ロンドン・オリンピックで寝不足の人も多いかと思います。そんな最中に発売の弊誌『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』ですが、今月10 日発売の最新号では「最強チームをつくる」が特集テーマです。編集会議でもオリンピックの話題が出ることが多かったです。
スポーツもそうですが、チーム成功の要因としてよく聞かれる言葉は、結束力です。この結束力という言葉は、チームの調和、さらには「仲良しクラブ」を連想させてしまいます。つまり、チーム・マネジメントにおいて、人間関係と成果志向のバランスをどのように取るか。今号の特集ではこのことを考えさせられました。
特集3の論文「マッキンゼー流最強チームのつくり方」は、マッキンゼーの元採用マネジャーである伊賀泰代氏による論考です。チーム単位でのプロジェクトが常態のマッキンゼーでは、どのような人材を採用しているのか。とても興味深い内容でした。なかでも、「チームのメンバー全員にリーダーシップを求める」というくだりが印象的です。メンバーにはリーダーからの指示を忠実に実行することを求められていない。むしろ、誰もがリーダーであるかのようなチームこそ、最強チームであると断言しています。そこにはチームの調和や結束力については一言も触れられていません。むしろ、成果を徹底的に追及するメンバーが集まれば、自然とチームの結束は生まれるかの如くです。
つまり結束とは、何がベースになるかが問われているようです。メンバー間の親睦や人間関係を重視した結束を目指すと、ゴールは「仲良しクラブ」でしょう。達成すべき成果をもとにした結束は、ゴツゴツしたやり取りがあったとしても、最大の成果を上げる最高のチームが出来上がるのでしょう。
特集2は、元「はやぶさ」プロジェクト・マネジャーの川口淳一郎氏へのインタビューです。十余年にわたる国家的大プロジェクトを成功させた要因を聞きました。印象的なのは「ぶれない方向性があれば、チームは自然とまとまる」という言葉です。チームがまとまることに重きを置かない。調和を優先すると現実の困難な状況を打破する力は出にくくなると仰います。
一見、冷徹に見えるリーダーシップ像ですが、成果を重視するのがチームのミッションであり、そのためのリーダーの責務としては、当然の態度と言えます。
この2つの論考ではチーム内の人間関係に関するナイーブな議論は皆無です。チームの結束とは、人間関係を重視する姿勢から生まれるものではない。逆説的ですが、メンバーがどれだけ成果にこだわる意識を強くもてるかで決まると思えてなりません。チームの調和と成果は決してトレードオフではなさそうです。(編集長・岩佐文夫)
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