ビッグデータをめぐる期待と懐疑

 ビッグデータとアナリティックス(解析ツール)が、一躍、企業の経営課題のトップの座を占めるようになった。グーグルやアマゾン・ドットコムといった企業が、データを活用する能力を活かした新しくて強力なビジネスモデルを武器に競合他社を凌駕した様子に、経営者たちは称賛のまなざしを向けている。また、IBMやヒューレット・パッカードといった最先端の技術を誇る企業も、ビッグデータに多額の投資を行っている。同時に、プライベート・エクイティ・ファームやベンチャー・キャピタルがビッグデータに投資する流れも拡大を続けている。

 こうしたトレンドに乗じた大風呂敷が多いのも事実だが、経営幹部がこの流れに注目するのは当然だろう。何しろビッグデータには、企業のビジネスのやり方を大きく変える可能性が秘められているのである。そうなれば業績を大きく改善できる。最近で言えば、1990年代にコア・プロセスを再編した企業がそうしたメリットを享受している。

 データ主導型の戦略が定着するにつれて、競争上、ビッグデータがますます重要な差別化要因になっていくはずである。マサチューセッツ工科大学(MIT)のアンドリュー・マカフィーとエリック・ブリニョルフソンが行った調査によると、ビッグデータと解析ツールをオペレーションに取り入れた企業は、生産性や収益性が同業他社より5~6%高いのである(「ビッグデータで経営はどう変わるか」を参照)。