自社の製品・サービスを見込み客に推薦する意思がある既存顧客は、どれだけいるか――これを表すスコア(NPS)は企業にとって重要な指標だ。しかし、NPSの高さがそのまま顧客からの支援を意味するわけではない、とリーは指摘する。顧客が持つ本当の力を引き出し、競争優位にまで高める取り組みが必要だ。
顧客ロイヤルティを測る昨今のツールとして、NPS(ネットプロモータースコア:推奨者の正味比率)は最もよく知られたものかもしれない。
このツールが根拠としているのは、「プロモーター」となる顧客――すなわち、「この製品・サービスを同僚や友人に紹介する可能性が非常に高い」とアンケートで回答する顧客――が多ければ多いほど、事業は成長し、競合より優位に立てるだろうという、しごく正当な理屈だ。とても理にかなっており、この考え方が有意義で価値があるということはNPSの普及と成果が証明している。
しかし、私は長年さまざまな業界や分野で仕事をするなかで、NPSを採用する企業が相当な利益獲得のチャンスを逃していることに気づくようになった。なぜなら、NPSはプロモーターを生み出し増やすことを主眼とするが、実際に彼らに事業を宣伝(プロモート)してもらうまでには至っていないからだ。具体的には、その事業を他者に紹介・推薦したり、ブログやツイッタ―に書きこんだり、業界のイベントで講演したりといった、熱心な顧客であれば提供してくれるであろう貢献を引き出せていないのだ。
ここから推測できるのは、NPSは単に顧客に購入させ、継続してより多く購入させるためのものにとどまっているということである。だが、企業を利する価値をプロモーター顧客に創造してもらい、事業の成長に力を貸してもらうために、はるかに実り多き方法がほかにもたくさんあるはずだ。
いまだ活用されていないそれらの成長源を、掘り起こす方法をいくつか紹介しよう。
●顧客にプロモーションをしてもらうよう、強く意識する
顧客がアンケートで「この製品を人に紹介する可能性が非常に高い」と答えたからという理由で、実際にそうしてくれると考える企業が多い。だが、実はそんなことにはならない。彼らは頼まれなければ、紹介してくれないのだ。
通信業界と金融業界の企業を対象とした2つの研究では、プロモーターであるとされた顧客のうち、わずか10%しか新たな顧客を連れてこなかった。もちろん、これは悪いことではない。だがほかの90%はどうなったのか。プロモーターがあなたの会社を推奨できるチャンスを、意識的に提供してはどうだろう?
ところで、プロモーターが連れてくる紹介客の価値は一様ではない。販促キャンペーンに対して購入によって応えるのはどの顧客か、そして同僚や友人への紹介というかたちで応えるのはどの顧客か。これを時間をかけて見極めた企業は、全員を一様に潜在的購入者として扱った企業に比べ、キャンペーンの見返りを倍増させることができた。