ピア・トゥ・ピア(P2P)マーケティングは、既存顧客に新規顧客を引き寄せてもらうための一連の活動だ。 ソーシャルメディアの発展も相まって、いまやこうした「顧客という資産の活用」は差し迫った命題であることは疑いない。その指針をビル・リーが示してくれる。


 今日の買い手は購入を決める前に、他の買い手の意見を参考にすることが多い。この傾向はますます高まるばかりである。その際に利用するのはソーシャルメディア、消費者コミュニティ、昔ながらのイベントやカンファレンス、個人的なつながりや仕事上のネットワークなどだ。つまり、彼らが話したがっている相手は企業ではなく、顧客である。

 ソーシャルメディアもこのことを理解し、手を貸している。ソーシャルメディアにおいて非常に期待の持てる――同時に難しい――イノベーションは、フェイスブックやピンタレストなどのユーザーに、使っている製品やサービスを推薦・紹介してもらう方法を確立することだ。従来型のメディアもこの点に関心を持っている。ビジネス・テクノロジーの情報サイト「インフォメーションウィーク」のアナリストを務めるエリック・ルンドキストは、最近次のように述べた。「私を含め、テクノロジー専門ジャーナリストの多くが企業に最初に尋ねる質問はこうだ。『御社の新製品に関して、話を聞けるお客さんはいませんか』」(英文記事はこちら)。

 あなたの会社は、この新たなピア・トゥ・ピア・マーケティングの時代に備えているだろうか。仮にあなたが、重要な新製品やサービスの発売を準備しているとしよう。次の問いに答えられるだろうか。

問い1:主要な買い手が話を聞きたいと思うのは、どの顧客か。自社を推薦してくれる顧客、支援してくれる顧客は何人いるか。発売を成功させられるだけの人数がいるだろうか。

問い2:推薦者や支援者と長期的な関係を築いているか。それとも、必要な時だけ――推薦の言葉やブログへの投稿、品質やサービスに関する証言、メディア取材への協力などが欲しい場合――しか連絡を取っていないのか。

問い3:自社が批判や攻撃にさらされた時に、ソーシャルメディア/PR/マーケティングの各担当者は、反論してくれる顧客やメディアで話をしてくれる顧客を見つけるのにどれくらい時間がかかるだろうか。

問い4:営業担当者は、契約をまとめるために推薦者が必要となった場合、見つけるのにどのくらい時間がかかるか。適切な推薦者をまったく見つけられないケースは、どの程度あるか。

問い5:顧客からの支援を活用するために、新しい技術を導入しているか。たとえば顧客から提供される推薦や関連コンテンツを、自動的に統合するツールなど。

 もし上記の問いにしっかり答えられないのであれば、より活気に満ちた顧客紹介プログラム(既存顧客から知人に製品・サービスを紹介してもらうマーケティング活動) を取り入れるとよいだろう。実際、ピア・トゥ・ピア・マーケティングの爆発的な普及のもと、顧客紹介プログラムのあり方は変化を見せ始めている。Eメールマーケティングのベンチャー企業であるレスポンシスは、サウスウエスト航空やホールフーズ、レゴ、ハーレーダビッドソン、ESPN、NBA(プロバスケットボール協会)などの有名企業を顧客としているが、同社の最高マーケティング責任者スコット・オルリッチは2012年の顧客エンゲージメント・サミットで、次のように述べている。「顧客による支援こそがマーケティングとなり、マーケティングとは顧客による支援を引き出すことなのです」