アイデアを形にする第一歩

 2003年当時、私はかなりの時間をかけてカリフォルニア州メンロパークにあるサンドヒル通りのベンチャー・キャピタリストを訪ね歩き、自分の新しいアイデアを売り込んだものだ。しかし返ってきた答えはすべて「ノー」だった。脈のありそうな投資家を相手に説明した回数は、おそらく50回を下らないだろう。

 私のアイデアとはこうだ。eコマースの注文に応じてピッキング(注文された商品を選び出す)とパッキング(梱包)を行う物流センターでは、作業員がいちいち棚まで商品を取りに行く。だが、ロボットの一団を利用して商品を棚ごと彼らのところまで持って来させるようにすれば、その労力を大幅に削減できるのではないか──。

 これは、その数年前までは実現の手立てがなく、移動ロボット工学の発展により突如として現実味を帯びてきたソリューションだった。そこにはマテリアル・ハンドリング(生産・物流拠点の搬送工程)業界をひっくり返すほどのポテンシャルが秘められていたが、ベンチャー・キャピタリストにはその点が伝わらなかった。