テレビ、新聞、雑誌、ラジオと従来の「4マス媒体」が、かつての力を失い、広告は新たな施策を模索している。これからの広告は暗中模索の時代となるのか。あるいは、新しいメディアとともに可能性が広がるのか。


 少し早いですが、次号6月10日発売号の特集タイトルは、「広告は変われるか」です。言わずもがな、インターネットの登場以来、テレビ、新聞、雑誌など従来メディアから消費者離れが起こり、メディアの勢力図が変わりつつあります。視聴者や読者の減少は広告収入の減少につながり、これが今日のメディア産業の苦戦の大きな理由となっています。

 広告はメディアと密接な関係がありますが、従来のメディアに勢いがなくなった今、ネット広告など広告は多様化しており、いまだに従来メディアでの広告に変わるものが見えてきません。

 もはや、広告会社の人も、企業のマーケティング担当者も、従来のやり方を続けることの限界を感じています。この点に関しては意義がないでしょう。問題は、変わる方向性です。ソーシャル・マーケティングやコンテンツ・マーケティングなど多様なモデルが試みられていますが、まだ誰もが模索している段階で、「これが正解」だと確信を持てない時代です。

 時代の転換点は既存のモデルが崩れることから大きな痛みも伴いますが、逆に言うと、こんなに面白い時代はないかもしれません。「王道」のやり方が絶対的な存在であると、新しい試みは、「邪道」扱いされ、なかなか認められません。

 いまや「これが正解」が誰にも言えない。となると、新しいやり方を試し、これまで誰もやったことのないモデルを生み出したいと思う人にとって、こんなにやりがいのある時代はないでしょう。

 広告特集の発売は10日ですが、それに合わせ、今月は本誌サイトでも広告に関する独自のコンテンツを多数出します。まずHBRブログから特に有益な広告関係のコラムを随時公開していきます。そして、博報堂ケトルの代表、嶋浩一郎さんと木村健太郎さんも短期連載を執筆していただきます。いまの時代を「広告の危機」と呼ぶ人もいるなか、お二人は、「これからの広告は可能性に満ち溢れている」と断言されます。どんなお話しが聞けるのか、私も楽しみです。1か月間、皆さんと一緒に広告について考えていきたいと思います。よろしくお願いします。(編集長・岩佐文夫)