『コークの味は国ごとに違うべきか』の著者パンカジュ・ゲマワットは、グローバリゼーションに関する研究の第一人者。ハーバード・ビジネススクールの教授に最年少で就任したことで知られ、Thinkers50による「最も影響力のある経営思想家50人」のひとりでもある。本連載では、グローバル化の現状を報告し、グローバル化に関する誤解を解いていく。


 2011年は記憶に残る年であった。アラブ世界全体におけるパワー・ダイナミクスの変化や、グローバルなサプライチェーンを多数混乱に陥れた日本の津波などの出来事を踏まえると、世界はますます繋がり、相互に依存していると考えられがちである。

パンカジュ・ゲマワット(Pankaj Ghemawat)
スペイン・バルセロナにあるIESEビジネス・スクールのアンセルモ・ルビラルタ記念講座教授。

 そこで私は今年(ここ数年間の恒例としているが)、人々がグローバル化についてどう考えているかを知るため、講演の多くを次のような簡単な選択式アンケートから始めている。

「あなたがグローバル化について考えていることを、最もよく表すのは次のどの文ですか?」

1. 不動産の世界では、合言葉は「ロケーション、ロケーション、ロケーション」だが、世界的ブランドを擁する企業のマネジャーにとっては、「ローカライズ、ローカライズ、ローカライズ」である。

2. 「ローカル」と「グローバル」の両極端の中間に、バランスが取れた「スイートスポット」があり、皆がここを目指している。

3. 世界はフラット化した。ウェブでつながったグローバルな活動の場で、地理や距離に関係なく、研究や仕事のリアルタイムなコラボレーションが可能となっている。

3番目を選ばれたのなら、あなたは立派な会社にいる。この数年間に尋ねた数十人の聴衆の間で、最も票が多くいつも多数を占めるのが3番目である。これは、人々はひとつの統合された世界――私が言うところの「ワールド2.0」――にいる、という認識を示唆するものだ。世界のフラット化、距離の喪失、国家間の差異の消失――こうした認識を語ることが、グローバル思考の証であるかのようだ。

 しかし私はそれを、グローバロニー(グローバル化が完全に推し進められているという妄言)であると考える。