アマビールとクレイマーは、知識労働者の生産性を左右する要因のひとつに、自主性(自己決定権)を挙げている。特に、プロフェッショナルと呼ばれるに値する熟練の社員を抑圧することは、計り知れない損失であるという。
1776年7月4日、フィラデルフィア。56人の男たちが、「13のアメリカ連合諸邦による全会一致の宣言」に署名すべく、熱気に包まれた会場に参集した。そして今年も7月が来た――いま我々は、もうひとつの独立宣言を行うべき時ではないかと考えている。効果的なマネジメントとは何かを勘違いしているマネジャーが、あまりにも多くの知識労働者――素晴らしい才能と経験、そして有意義な仕事への意欲にあふれるプロフェッショナルたち――を抑圧している。的外れなやり方で生産性を向上させイノベーションを導こうとするなかで、マネジャーは彼らの自主性を奪い、創造性も、情熱(仕事に深く関与するために求められる内発的動機)も殺しているのだ。
ある消費財企業のプロダクト・マネジャーだったソフィー(仮名)に読者は共感するかもしれない。彼女はマーケティングのプロフェッショナルで、MBA保持者だ。彼女のチームは、次世代型のスマートな調理機器をつくる、という起業家精神が問われる責任が与えられるはずだった。そしてチームは、実際に人間工学に基づいた画期的な取っ手のついた小型ミキサーの開発へ向け、大きな一歩を踏み出したところだった。ところが上層部は、あらゆる重要な決定権をソフィーのチームに渡さなかったのである。さらに悪いことに、上層部はそうした重要事項をめぐる意思決定で迷走し、状況説明もほとんどせず、チームに相談することは一度もなかった。ソフィーはその時の状況を、次のように説明している。
「新製品を開発することで評価されるべきなのに、どうして研究開発部は私のほとんどのプロジェクトを潰してしまうのか、まったくわけがわからない。研究開発担当 副社長は、2週間前に承認された手持ちサイズのミキサーを、過去に3度も却下している。彼らの方針は支離滅裂で、私たちは開発を始めたのに、途中でやめ、また再開するようなことを余儀なくされている」
社員が真に内発的な動機を持ち、進捗があった時には達成感を得るためには、みずからの仕事にある程度の発言権が与えられている必要がある。さらに重要なことに、社員は仕事のやり方に自由を与えられると、より創造性を発揮する。自主性のカギとなる2つのポイントは、仕事上で有意義な意思決定を下す自由と、その決定の有効性に対する(重大なミスや突然の方針転換がなければ)自信である。マネジメントが常に決定を覆していると、人々は自分で意思決定を行うモチベーションをすぐになくしてしまう。したがって、進捗は大幅に抑制されることになる。社員が何かに着手したり、修正したりするのに、わざわざ「届け出」を提出して承認を待たなければならないと感じているようだと、取り組みは停滞する。