グローバル化の是非を考えるには、メリットとデメリットを公正に見ていく必要がある。今回の記事では、グローバル化のメリットに焦点を当てて大まかな数値化を試みる。その効果は、多くの人々が考えているよりも大きなものであるとゲマワットはいう。
以前の投稿で私は、人々が信じるほど世界はグローバル化されていないという証拠を提示した。このことは、多くの人が考えるよりもグローバル化を拡大する余地がはるかにあることも意味する。もちろん、よりグローバル化された世界を我々が支持すべきか否かはまったく別の問題であり、賛成意見と反対意見を誠実に秤にかけなければならない。しかもユーロ圏は依然として危機的状態にあり、米中貿易摩擦が問題となり、貿易戦争の脅威(最新のものはEUの炭素税に端を発する)が周期的に発生する現状(2012年2月現在)は、グローバル化の是非を考える絶好の機会である。
さて今回は、グローバル化賛成派の立場を取り上げ、統合が進むことの潜在的なメリットについて大まかな数値化を試みようと思う。皮肉なことに、グローバル化賛成派のほとんどは、世界はすでに完全に統合されている、もしくはじきに完全に統合されるというグローバロニー(グローバル化が完全に推し進められているという妄言)を支持しているので、わざわざ系統立てて説明しようとはしない。したがって、本稿は、グローバル化の支持者にとっても新鮮な情報となるはずである。
まずは商品貿易の拡大がもたらす利益について見てみよう。貿易協定を評価するための伝統的な経済モデルは、関税および特定の非関税障壁が抑制あるいは除去されると、全世界のアウトプットがどの程度拡大するかを推定している。これらのモデルが見積った利益は、貿易交渉の膠着状態にあるドーハ・ラウンドに対しては世界のGDPの約0.1%、商品貿易の完全自由化に対しては約0.5%であり、微々たる値である。しかし、これらのモデルは本来含めるべき事項の多くを除外している。
伝統的なモデルは、貿易拡大にかかる多くの政策手段を考慮していない。たとえば貿易円滑化だけでも、全世界のGDPを1%増大しうる。さらなる貿易によるメリットを算出する際、生産コストの削減によって生じる伸びにもっぱら焦点を当てている。実際には各国のアウトプットはより細分化され、潜在的利益のごく一部を成すにすぎなくなっている。