もしこの本を読んでくれているあなたが、いま、起業に迷っているのであれば、ベンチャーを起こす意味があるかどうかは、その分野で1番をとれるかどうかにかかっていると僕は思う。

「日本で1番高い山は何か?」と聞かれれば、誰でも「富士山です」と答えられる。では「日本で2番目に高い山は何か?」と聞かれて、すぐに答えられる人はどれくらいいるだろうか?

 グーグルで検索してヒット件数を比べてみても明らかだ。富士山には、情報も人もお金もすべてが真っ先に集まる。しかし日本で2番目に高い南アルプスの北岳は、富士山に比べると、ほとんど誰にも知られていない。だから北岳の情報は富士山より圧倒的に少ないし、登山客も投資のお金も集まってこない。

 僕ももし「うちは世界で2番めにミドリムシを培養しました」という会社を経営していたら、全財産をはたいて続けようとは思わなかっただろう。とことん追い詰められたときでも、自分が1番であれば、その逆境を跳ね返す力が湧いてくる。1番と2番というのはそれぐらい違う。

 それでもきっと、多くの人は「この分野なら自分が1番だと自信を持てない」と考えるだろう。でも、それは違う。誰だって、特定の狭い分野で、偏執的に追求していけば、必ず1番になれる。

 それは僕が、夜行バスに乗って日本じゅうのミドリムシ研究の先生を回る中でつかんだ真実だ。分野を絞れば絶対に1番になれるのだ。「ミドリムシと世界を救う」という目標があったから、「世界で」1位を目指したが、ベンチャーすべてが世界で1番、日本で1番を目指す必要はない。

 ラーメン屋を経営するなら「飯田橋駅から徒歩10分圏内で1位の美味しさを目指す」というので十分勝負できる。「多摩ニュータウンで1番使いやすいコミュニティ・ビジネスを始める」だっていいのだ。

 自分が「この分野、この領域で勝負する」と決めたら、その中で必ず1番を目指すこと。これが僕が、ベンチャーの経営に関してアドバイスできる唯一のことだ。

 

【書籍のご案内】

『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました』
~東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

 いま日本に、世界から注目を集めるバイオベンチャーがある。名は、株式会社ユーグレナ。「ミドリムシ」の大量培養技術を核に、世界の食料問題、エネルギー問題、環境問題を一気に解決しようと目論む、東大発ベンチャーだ。そのユーグレナを創業した出雲充氏が、起業に至る7年と、起業してからの7年を初めて語る。


【目次】
はじめに―くだらないものなんて、ない。
第1章 問題と、自らの無知を知るということ
第2章 出会いと、最初の一歩を踏み出すということ
第3章 起業と、チャンスを逃さずに迷いを振り切るということ
第4章 テクノロジーと、それを継承するということ
第5章 試練と、伝える努力でそれを乗り越えるということ
第6章 未来と、ハイブリッドであるということ
おわりに―ミドリムシに教えてもらった、大切なこと

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