今月号の特集である「起業」をテーマで先日ラジオでお話した際、リスナーの方から「日本でベンチャーに挑戦する人を増やすには、どういう制度が必要か」と質問をいただいた。そこで気づいた、ベンチャーと国家施策の相性の悪さ。
今月号の特集である「起業」をテーマに、先日ラジオでお話しをさせてもらいました。その際、リスナーの方から「日本でベンチャーに挑戦する人を増やすには、どういう制度が必要かと思いますか」と質問をいただいたのですが、生放送では気の利いたことが言えませんでした。
以来このテーマを考えています。このリスナーの方の問題意識には共感するところ大です。私も「日本でもっとベンチャーに挑戦する人が増えればいい」と常日頃思っています。政府も当然同じ問題意識を共有しているようで、審議会や委員会の報告書にも「新事業の創出」という文言が散乱しています。ただし実効性のある施策が実施された記憶はありません。
ベンチャー創出をサポートする仕組みとして考えられるのは、参入障壁を低くすること、資金面の援助や税制面での優遇、失敗した際のリスクの軽減策などです。ベンチャー挑戦への障害が経済的なリスクであるならば、立ち上げ期の生活援助なども極端なアイデアとして出てくるでしょうか。しかし、そもそもベンチャーに挑戦しようというモチベーションは、「国がサポートしてくれるから」から生まれるものなのか。そもそも国のサポートを頼りにするようなベンチャー経営者は成功するのか。こんな根本的な疑問が湧いてきます。
国の制度はむしろベンチャーを始めようとした人が、あらゆる要素を使って成功確率を高めようとして集めるものの中にある、1つのツールに過ぎないのです。制度ができたタイミングを見計らって立ち上げる、制度を利用しやすい形に会社の形態を合わせるという思考は考えられます。しかしそうやって利用できるツールには、当然、自分のアイデア、築いてきたキャリア、人脈など無数にあり、ここで例に挙げたものと比べても「国のサポート」は決定的要因とは言えないでしょう。