人は、時に「ネガティブ志向 」になることを避けられない。悲観的な思考にとらわれ、後ろ向きな態度で不平不満を言いつのる、ネガティブな人にどう向き合うか。3つのステップを紹介する。
「もう我慢の限界です」――金融サービス企業の営業部を率いるダンは嘆いた。「我が社はチャンスに恵まれています。業績は上向きだし、仕事はやりがいがある。今年のボーナスは期待できるはずです。でも聞こえてくるのは、不平不満ばかりです」
ロビーですれ違う従業員に「調子はどうか」と尋ねると、返ってくるのは顧客に関する批判的な発言や、仕事量の多さに対する文句だという。「チームに蔓延している、ネガティブ志向をどうしたら改めることができるでしょうか?」と彼は私に尋ねた。
彼自身はそれにどう対処しているのかを、私は尋ねた。「まず、我々の前にはどれほど大きなチャンスが広がっているかを強調し、ミッション・ステートメントを繰り返し言って聞かせました。会社が目指すものを改めて認識させ、鼓舞したかったのですが・・・・・・もうお手上げです」両手を宙に投げだし、ダンは言う。「もううんざりです。彼らのだらしない姿勢をたたき直してやりたいですよ」
ダンの対応はまったく自然であり、直感に従った行動である。でも残念ながら、まったく有効ではない。
彼は最初、ネガティブな人々に対してポジティブな姿勢を見せて応えようとした。それがうまくいかないと、今度は彼自身がネガティブになった。どちらの反応も、ネガティブ志向を増幅させるだけに終わる。
ネガティブ志向に対してポジティブな姿勢をもって応えるのは有効ではない。対立を生むだけだからだ。人は自分の感じていることを否定されたくないものだ。「そんなふうに感じるべきではない」などと誰かに諭されれば、より頑固になるだけだろう。常に自分がポジティブであることを信条とするリーダーの場合は、さらに悪い結果を生む。その現状をわかってくれない、はるか遠いところにいる人のように映ってしまうからだ。
もう1つの直感的アプローチ――ネガティブな人に対して、こちらもネガティブな態度で応えること――も有効ではない。負の相乗効果を生むだけだからだ。ネガティブな態度からは、ネガティブなものしか生まれない。
ならばどうやって、ネガティブな人々に対処すればよいのか。
私がその答えを発見したのは、妻のエリナーに対して自分がダンと同じ過ちを犯した時だった。その日、彼女は子どもたちのケンカ について不満をこぼした。最初に私は、兄弟姉妹がケンカをするのは当たり前のことで、うちの子たちが特別ひどいわけではない、と言ってなだめようとした。それでも彼女の愚痴はおさまらない。やがて私もいら立ち、彼女の態度に不満を言い立てた。
当然、彼女は怒った。しかしその後、とてもありがたいことをしてくれた。私に何をしてほしいかを教えてくれたのだ。
「独りで悩みたくないの」と彼女は言った。「あなたもわかってくれている、と思いたい。これは2人の問題だ、という言葉をあなたの口から聞きたいの。そして私の不満を理解してくれた時は、そう教えてほしい」