本誌2013年9月号(8月10日発売)の特集は「集合知を活かす技術」。これに合わせ、HBR.ORGから集合知に関する記事6編をお届けする。第1回は、企業がクラウドソーシングのキャンペーンを実施するうえで留意すべき要諦について。ビジネスアイデアやソリューションの一般公募における、最も基本的な心得を押さえておこう。


 女性たちは市場で1番大きな店に群がっていた。砂糖を売っていて、まとめて買えばかなり安くなる。こういった市場はアフリカではよく見かける。人々は品物を持ち込み、売れ残ったものを持ち帰る。もうすぐ日も暮れるという頃、店主は砂糖を運搬するトラックが1台故障しているのに気づいた。売れ残りを全部持って帰るのは無理だ。彼は即座に、まとめ買いの割引をさらに増やすことにして、売り込みを再開した。

 女性たちはクラウド(集団)をつくり、乏しい持ち合わせを出し合った。そして砂糖を大量に買うと、みんなで分けた。この光景は、まるで魔法のようだった――同じ目的を持つ人たちが集まって、即座にお得な買い物をしたのだ。

 クラウドのこういったエネルギーは、珍しいものではない。企業は、大衆の想像力を刺激して利益を得る方法を常に考えてきた。しかし、ソーシャル・ネットワークや通信技術の驚くべき発展によって、高レベルの双方向性と相互接続性が実現し、人々はこれまでよりも簡単につながることができるようになった。ブランドにとっても、クラウドにはイノベーションのための大きなチャンスがある。

 2009年、オンラインDVDレンタル・映像配信会社のネットフリックスは、アルゴリズム・コンテストを開催し、顧客への映画推薦システムの精度を向上させたチームに対して、100万ドルの賞金を提供した。ゼネラル・エレクトリック(GE)はベンチャー・キャピタル4社と提携し、クリーン・テクノロジーのアイデアを募集する「GEエコマジネーション・チャレンジ」を開催し、最も優秀なアイデアに2億ドルを出資している。

 ネットフリックスとGEのコンテストは、新しいビジネスアイデアを広く募るために企業が主催するプログラムの一例である。これらのプログラムは、従来はスタッフや請負業者が行っていた活動を、公募によって大勢の人々にアウトソーシングするものだ。コンテストによって斬新なアイデアがもたらされ、企業はそれをビジネスプロセスやツールの改善に活用できる。

 クラウドの英知を活用するというコンセプトは、今後さらに魅力的なものになるだろう。ロレアルは、ユーザー主導型コンテンツを主に放映するケーブルテレビ、カレントTVをうまく活用した。クラウドを利用することによって、30秒広告を1000ドルで制作・放映できたのだ。自社の代理店による制作ならば、15万ドルはかかるところである。