「ブルーオーシャンを見つけた」と信じ、喜び勇んで新興国市場に参入する場合、注意が必要であるという。競合が存在しない真の理由に、気づいていないかもしれないからだ。
インドには大量の髪の毛がある――これはハッとするような洞察であり、我々がインドの男性向け理容市場で破壊的ビジネスを展開しようと企図したきっかけである。我々のアイデアは、優れた効率性と低価格でシンガポールをはじめアジア市場で人気のあるQBハウスを、インドに輸出しようというものであった(QBハウスについては、拙著The Little Black Book of Innovation[未訳]の「品質とは相対的な概念である」のセクションで詳しく説明している)。我々の計画は、キオスク型の店舗に椅子を1つだけ設置して、高品質の理髪、髭剃り、そして関連サービスを手頃な価格で提供し、チェーン展開していくというものだった。目の前には、時に「ホワイトスペース」「ブルーオーシャン」「グリーンフィールド」などと呼ばれる、広大な市場が開けているように思われた。
どの色を選んで何と呼ぼうとも、新たな市場を開拓するのはわくわくするものだ。誰も成し遂げていないことへの挑戦に、奮い立たない人などいるだろうか。グーグルやシルク・ドゥ・ソレイユといった組織と同じ道を歩むイノベーターが手にする、さまざまな見返りを想像してみるとよい。
しかしながら、競合企業がいない市場に進出する際には、細心の注意が必要である。そのホワイトスペースに打って出るために巨額の投資をする前に、「なぜ、その市場に参入する企業がいないのか」を自問すべきだ。技術的な問題、政府の規制、あるいはその市場に根差す習慣が妨げとなっているのかもしれない。これらはビジネスチャンスになりうるが、同時に、あまり望ましくない3つの可能性を示しているのかもしれない。