女性が経営トップに就くことを阻む「ガラスの天井」を打破するために、ヒューレットは「スポンサーシップ」の重要性を主張してやまない。改めて、その定義と具体的なメリットを知っておこう。


 この数十年、Cスイート(最高○○責任者)を目指す女性たちの努力は報われることがほとんどなかった。しかしいま、彼女たちに経営層への扉を開く魔法のパスワードが明らかとなった。

 先日、200人以上の男女が風雪をものともせず、センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)の研究プログラム「スポンサーの効果――最後のガラスの天井を破る」の立ち上げに参加した。場所は、ハドソン川を見下ろすアメリカン・エキスプレスのニューヨーク本社。CEOであるケネス・シュノールトの歓迎を受け、インテル、デロイト・トウシュ・トーマツ、モルガン・スタンレー、ゼネラル・エレクトリック(GE)などの大企業に加え、国連、CIAなどの主要機関の代表も集い議論を戦わせた。

「中間管理職や上級管理職に就く女性は着実に増えているのに、フォーチュン500社のCEOに占める女性の割合は、なぜわずか3%なのか? この現状をどうすれば変えることができるのか?」――これがテーマである。

 研究によれば、これは男性の陰謀のせいではない。幹部の地位に就いている男女からの支援が驚くほど不足しているためであった。経営幹部となるにふさわしい資質を持つ女性は、そこに至る過程で強力なバックアップを得る必要がある。しかし彼女たちは、さらなる能力を開発し、昇進を後押しし、自分を守ってくれる存在――つまり「スポンサー」からの支援(スポンサーシップ)を十分に得ていない。

 スポンサーとは厳密に、何を指すのか。メンターとどこが違うのか。

 議論に際しその定義を明確にしたところ、最近までこの問題を表現する語彙を持たなかった多くの人の目からうろこが落ちたようだ。ファイザーのチーフ・ダイバーシティ・オフィサーであるエド・ギャズデンはこう述べた。「当社ではこの問題を議論する言葉が統一されていなかったために、有効な行動計画やプログラムを策定するのに苦労していました」

 今回の研究では、「スポンサー」をこう定義している――庇護の対象とする部下のために労を惜しまず昇進を後押しし、少なくとも次のうち2つを行う上司である。

・対象者の潜在能力を本人に認識させ、解き放つ。
・上級幹部とのコネクションを持たせる。
・幹部のあいだで認知度を高める。
・昇進のチャンスを増やす。
・幹部らしく振る舞う方法を教える。
・社外とのコネクションを持たせる。
・さまざまな助言を与える。

 メンターは親密な関係を築き助言を与えるのが仕事だが、スポンサーは庇護の対象者を一段上のレベルに引き上げることを目的とする。