「プロらしい身だしなみ」の定義に対する考え方は、たえず変化している。その解釈と、プロらしく見せることの重要性は別物であることも、研究から明らかになった。自分をリーダーらしく見せるために、女性が男性以上に苦労しているのは明白だ。それは中間管理職やその上の段階で行き詰まる要因にもなっている。

 女性は、同調することを求められる一方で、目立つように、とも助言される。女性らしさを出しすぎるな、と言われる一方で、男性のように振る舞うな、威圧的になるな、とも警告される。そして自分たちが不当なまでに外見で判断されてしまうことを知っている。

 しかし、女性は身だしなみについてのガイダンスを大いに必要としながらも、それを得ることができない。なぜなら、上司がそれを提示するのをためらうからだ。男性は、男の同僚にはブレスミントを噛めと気楽に言うが、女性に対しては口を閉ざす。セクハラだと訴えられるのが怖いためでもあるが、たいていは女性の気分を害したくないからだ。

「女性はただでさえ、容姿については過敏ですからね」とCWLPのフォーカス・グループのある男性幹部は語った。「スカートが少し短めだね、と女性の部長に言ったことがあります――たった一言です。そしたら、彼女は二度とスカートを履いて来なくなった」

 だからこそ、銀行員としての身だしなみを事細かに定めた、UBSの知恵の出番なのだ。権力に至る道のりのすべての段階で、外見の魅力は常に歓迎される。スタンフォード大学教授のデボラ・ロードが「ビューティー・バイアス」(美の偏見)と呼ぶものだ。これを克服しようとするなら、新人であれベテランのマネジャーであれ、誰もが何らかの適切な助言を必要とする。「インナーは肌色にしたほうがいい」と部下に助言するのを、上司はどうせためらうのだ。だとしたら、身だしなみや礼儀作法についての43ページのマニュアルこそ、プロフェッショナルを目指す人たちが気まぐれなファッションの流行と折り合いをつけるため必要なものであろう。

 UBSは現在、よりシンプルなガイドラインに基づく新しいマニュアルを配布しようと考えている。しかし願わくはマニュアルだけでなく、支援プログラムも併せて提供されたい。たとえば、モルガン・スタンレーやADPは女性マネジャー向けに、エグゼクティブ・プレゼンスに関するワークショップを実施している。アメリカン・エキスプレス、シティグループ、デロイト、アーンスト・アンド・ヤングは、スポンサーシップのプログラムを熱心に推進している。幹部を目指す従業員――主に女性――が、成功するために建設的なフィードバックを得られるようになるまでは、重役室は職場の常識とはかけ離れた偏見の持ち主たちの領域であり続けるだろう。

服装が男性を立派に見せるわけではない。しかし女性の場合、それははるかに重要なのだ。


HBR.ORG原文:Dress for the Job You Want? February 9, 2011

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・ワークライフ・ポリシーの創設者、所長兼エコノミスト。